流れ星
書くのはやはり難しいですね。それでも頑張ります。
「魔物使いの目的はなんなんでしょう?
もし、まだ目的を達成していないなら襲撃は続くのか?
そうだとしたら、次はどんな襲撃が来るのか?」
「あんまり考え過ぎない方がいいですよ。私達のできる事はほんの少しです」
「それは痛いほど分かっています……それでも考えてしまうんです」
奏慈の話を聞いて応えているアウィンだったが、実際は集中できていなかった。
上気した顔は赤くなり続け、心臓の鼓動はどんどん高まっていく。
心の中で頬を叩いて気合いを入れ直すも、全く役に立たない。
「アウィンさん、大丈夫ですか? 顔が赤いですが」
「あ、ああこれはお風呂のお湯が熱かったからですね」
「それにしても、どんどん赤くなってるような?」
(ええいままよ、こうなったら聞いてやる!!)
奏慈はアウィンの顔を覗き込んで心配する。
そんな事をされ、さらに顔を赤くするアウィンは勇気を出して聞く事にした。
「あ、あの聞いてもいいですか?」
「はい、なんですか?」
「カンナギさんって、彼女とか居たりしますか?」
「……彼女ですか?」
「は、はい、奥さんも含めて」
アウィンの質問によって、場の空気は一気に重くなった。
穏やかだった奏慈の顔は一転して険しくなり、息も荒くなる。
「居ませんよ、そんなの」
「そ、そうなんですね」
しかし、アウィンはそれに気づかず心の中でガッツポーズをした。
自身の加速する鼓動と、初めての感情が認識を遅らせる。
「なら、もしもですよ…私みたいな可愛い娘に告白されたら、受けますか?」
「……いきなり、どうしました」
「い、いえ、なんか気になってしまって」
「……そうですか」
アウィンは人差し指を突き合わせながら、勇気を出して告白した。
だが、それが奏慈の癇に障り、アウィンを睨み付ける。
(えっ、なにこの感じ……それにどうしてそんな顔を)
同時に奏慈から放たれる気に、アウィンは気圧された。
アウィンはようやく触れてはならない物に触れたのだと気づいた。
「す、すみません!! ご気分を害したのなら……」
「いいですよ、別に……答えはそうですね、断ります」
「えっ」
奏慈は無表情で、何の感慨もなくそう言い放った。
それを聞いたアウィンの顔は、見る見るうちに青ざめていく。
「ど、どうしてですか!? 告白なら勘違いも何もないですよ!!」
「……答えを求めたのに、理由まで求めるんですか?」
「それは……でも、教えて下さい!!」
「言う必要はありません」
「……告白されたのがそんなに嫌だったんですか」
「言う必要はありません……それじゃあ」
「ま、待って!!」
奏慈はそう言うと立ち上がり、ドアに向かって歩き出す。
アウィンはすぐに追いかけ、奏慈の手を握って止める。
そして、心の底から声を出した。
「どうして、どうしてなんだよ!!」
「……僕じゃあ、貴方を守る事はできない」
「えっ」
「世の中には良い男は一杯居ます、その人と幸せになって下さい……」
「……ふざけんな!!」
アウィンの手を振り切り、奏慈は逃げるように部屋を出ていった。
一人残されたアウィンは眉間に皺を寄せ、拳を強く握り締める。
だが不意に握り締めた拳を広げ、赤くなった手を見つめる。
「なに怒ってんだよ、オレが悪いんじゃねえか。
気を遣わせて、傷つけて……幸せまで祈られて」
顔を手で覆い、アウィンは再び俯いた。眼から涙が溢れ、頬を伝う。
しかし、すぐに涙を拭って立ち上がった。
「カンナギに謝らないと」
「……ふむ」
アウィンは奏慈を追いかけるべく走り出す。
その様子を影から見ているフランに気付かずに……
「異世界まで来て、なにやってんだ」
――その頃、奏慈はテラスで黄昏ていた。
そこから見える夜景を見つめ、穏やかに過ごそうとしている。
だが心が休まる事は無く、拳を何度も叩きつけて自傷していた。
「その辺にしておけ」
それを見かねた何者かが奏慈の自傷は制止する。
奏慈が振り向くと、そこには車椅子に乗った女性が居た。
紫色の髪を風に靡かせ、フランによく似た顔立ちをしている。
「フランさんの、お姉さん?」
「……ああそうか、異世界人は年の取り方が違うんだったな。
失礼、私はカリバー=フォン=ファルシオン……フランの祖母だ」
「フランさんのおばあちゃん!?」
奏慈は目を見開いて驚いた。そして、改めてカリバーを見つめる。
肌艶は良く、髪も白髪一つ無い。二十代と言われても疑わない容姿だ。
「何度見ても事実は変わらんぞ」
「あっ、すみません」
「さて、今度は私が見せて貰おうか」
カリバーはそう言うと、強引に奏慈を引っ張り、自傷していた手を見つめる。
そして、ひとしきり見ると、掌から淡い光を放ち始めた。
「血が出る程に叩きつけるとは、一体どうしたのだ異世界人」
「……それは」
「これでも人生経験はある方だ、聞かせてくれ」
「……分かりました」
奏慈は先程の出来事をカリバーに話し始めた。
その間、カリバーはずっと頷きながら光を放ち続ける。
「好意を持たれた事がそんなに嫌だったのか?」
「いえ、寧ろ嬉しかったです」
「では何故、断った?」
「私は元の世界に帰るつもりなんです、思いに応えられない。
嘘を吐いてまで関係を続けるのは、大人として一番やっちゃいけません」
「では、そう言えば良かったのではないか?」
「……そうですね」
「まだ若いんだ、もっと突っ走れ…さあ、治ったぞ」
「ありがとうございます……」
光を放ち終えると、血が出ていた奏慈の手はすっかり治っていた。
奏慈はカリバーに頭を下げ、感謝の言葉を告げる。
「あとは本人に話すといい」
「えっ」
その言葉を聞くと、カリバーは笑いながらそう言った。
カリバーの行動に首を傾げ、奏慈が頭を上げると……
「さ、さっきぶりです、カンナギさん」
「アウィンさん!?」
ばつが悪そうにアウィンが立っていた。
顔は上気しており、息を切らしている。
「カンナギさん、私謝ろうと思って」
「謝る? 何をですか?」
「……突然すぎましたよね、告白。カンナギさんの気持ちも考えずに」
「それは……」
「初めてなんです、こんな気持ち……だから早く、この気持ちを整理したかった。
でも、そのせいでカンナギさんを傷つけてしまった……本当にごめんなさい」
「……私も謝らないといけません」
「えっ」
アウィンの言葉を聞き、奏慈も話し始めた。
唇を噛みながら、ゆっくりと。
「強く言い過ぎました、アウィンさんは勇気を出して言った筈なのに」
「カンナギさん……」
「でも、受ける事ができないのは本当なんです。
私は元の世界に帰るんです。
だから、貴方の思いに応える事はできません」
「…………」
「それに、私達は会ったばかりです……きっと、貴方にはもっと良い人が」
「カンナギさん」
アウィンは奏慈の言葉を聞き終える前に口を挟んだ。
その表情は真剣そのもので、一呼吸を置いてから話し出す。
「私、創造神様に会おうと思ってるんです。
今この世界は平和です。でも、理不尽に苦しむ人も大勢存在します。
そんなこの世界を変えれるのは創造神様だけ。だから、絶対に会いたい。
カンナギさん、貴方にはその手伝いをして欲しいんです」
「私に?」
「はい、異世界人である貴方は創造神様と繋がりがある筈です。
だから、手伝いとはいっても特別な事は頼みません。
傍に居させて欲しいんです」
「傍に……」
「お願いします、傍に居させて下さい!!」
「……僕は」
アウィンは奏慈に深く頭を下げた。青い髪が揺れ、まるで海を思わせる。
奏慈はそれに一瞬見惚れながら、言葉を続けた。
「受けます、傍に居て下さい」
「……いいんですか?」
「ええ、いいですよ」
「……ありがとうございます」
アウィンは声を震わせながら言った。
喜びを噛み締め、眼から涙も流し始める。
「素晴らしいですわ!!」
「うわっ!? えっ、フランさん?」
「な、なに?」
そこにどこからともなくフランが現れた。
奏慈は思わず尻餅を搗き、驚き倒れる。
「異世界からやって来た旅人と、聖女様の禁断の恋!!
最初は断るも、最後に告白を受けて結ばれる!! ああ良いですわ」
「あ、あの……」
「すまない、フランはこういうのが大好きなんだ」
カリバーは両手を上げ、やれやれといった感じで呆れて言う。
流れ始めた涙はフランの登場と共に引っ込んだ。
奏慈とフランは顔を見合わせ、お互いに笑みを浮かべる。
「こ、これからよろしくお願いします……アウィンさん」
「こ、こちらこそ……」
「ああ最高ですわ」
フランの調子に苦笑いしながら、二人は進んだ関係を喜ぶ。
その時、二人の頭上を何かが掠め通る。
「あれは」
「流れ星?」
それは流れ星だった。ゆっくりと地面に向かって落ちていく。
神秘的な光景を見つめる四人だったが、奏慈はハッとして言う。
「そうだ、願い事をしましょう!」
「願い事?」
「はい、創造神に会えるようにって」
「……それ、いいですね」
「そうですよね! それじゃあ」
奏慈とアウィンは流れ星に向かって、祈りだす。
眼を瞑り、真剣に。
(アウィンさんが創造神に会えますように……)
(……あれだけ無理言ったのに、まだオレの事を考えてくれるのか。
なら、オレも……奏慈が無事に元の世界に帰れますように。
……ふふ、初恋からの失恋か)
二人は流れ星が落ち切るまで、祈り続けるのだった……
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