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復活

「――そういえば、中光は? ここに居ると思ったんだけど……」


ひとしきり勝利を祝った後、望結は思い出したかのようにそう言う。

自分達の前から突然姿を消した中光……ここに居ないなら、どこに居るのか?

術者であるソフィアを倒した今、もう心配は要らないと思うが、油断はできない。

望結は周囲を警戒しながら、見回し始める……その必要がもう無いとは知らずに。


「……中光ならそこに居る」

「えっ?」


そんな望結に奏慈はある一点を指差して言う。

そこには黒い何かが転がっていた……それは一見すると、ただのゴミに見えるが。


「ま、まさか……」

「そのまさかだ。あの黒いのが中光だよ」


望結は唖然とする。自分達を虐め続け、この世界でも悪事を働き続けた中光。

その最期がこれか? 因縁の相手とはいえ、こんなのあんまり過ぎる。

中光との決着はちゃんと付けたかった。


「何があったんですか? カンナギがやった訳ではないですよね?」

「勿論だ。ソフィアが呼び出し、身代わりにした。

 黒焦げになっているのはソフィアの火球に当たったからだ」

「……ソフィアは自分が攻撃される時、肉人形を呼び出せるようにしてたんだよ」

「そうだったのね……だから、中光は」


真実はいつも残酷だ。中光の悲惨な最期に望結達は何も言えない。

同情はできないが、もっとマシな最期もあった筈……本当にこれで良かったのか?


「はっ!? じゃあ、まさか!」


だが、残酷な真実はまだ終わらない。望結は二人の言葉を聞き、ある事に気付く。

姿を消したのは中光だけではなかった……藍も姿を消している。

幸いな事にすぐに再会できた為、先に行ったとばかり思っていたが……つまり。


「そうだ。藍も肉人形という事になる」

「う、嘘だろ?」

「そんな事って……」


続けて明かされる真実に今度は望結だけでなく、フラン達も唖然とする。

藍が肉人形? そんなの信じられない……でも、本当にそうだとしたら?

色々な考えが頭を巡る……しかし、今一番気にすべき事は藍の気持ちだ。

藍は今、何を思っているのだろう? 雰囲気は暗く重い物になっていく。


「……皆、聞いてくれ! オレは平気だ!!」

「藍?」


しかし、藍はそれに待ったをかけた。藍は続けて言う。


「確かにショックだったさ……自分が肉人形だったと分かって。

 でも、今ここに居るオレは皆と旅をしてきたオレだ! 作り物じゃない!!

 だから、平気だ……オレはそんなに弱い奴じゃないぞ!」

「藍……」


平気な訳が無い。今も藍は複雑な思いを胸に秘めている筈だ。

それでも皆を心配させまいと藍は声を張り上げる……一番辛いにも拘わらず。

なら、その思いに応えるべきだろう。望結は笑顔を作り、明るい口調で言った。


「なら、見せて貰うわよ! 藍の強さを!!」

「ああ、見せてやるよ!!」


藍と望結はそう言うと、お互いに拳をぶつけ合う。それは変わらない友情の証。

藍は感謝を、望結は信頼を込めてぶつける。


「そうと決まったら、祝勝会ですわ! 朝まで食べて飲んで騒ぎますわよ!!」

「ああ、こんなに頑張ったんだ。ご褒美くらい貰えないとな?」

「ほう、褒美か……なら、ワガハイは強者との戦闘を望もう」


それを見て、フラン達の顔にも笑顔が戻ってきた。

勿論、その笑顔も作り物だ……心の底から出た物ではない。

それでも今は祝うべきだろう。ソフィアは倒れ、世界は救われたのだから。


「……マキはこの時を待っていました」

「うっ!? この声は!」


だが、そこに水を差す者が現れた……それは冷たく機械的な声を出す女。

聞き覚えのあるその声に藍はすぐに振り返る。


「マキは久しぶりに藍に会います。そして、初めましての人に挨拶をします。

 初めまして、黒柳真妃です。これからよろしくお願いします」

「ま、マキって……」

「ああ、あのマキだ」


振り返った先に居たのは予想通り、真妃だった。

夢で見た時と同じ容姿で妙な喋り方……間違いない、本人だ。

だが、何故今になって現れた? 勝利を祝いに来た……という雰囲気でもない。


「……どうやら封印が解けたようだな。そのまま捕まっていれば良かったものを」

「そうはいきません。マキは常に奏慈の傍に居ます。

 その機会を逃す訳にはいきません」

「……ふん、諦めが悪いわね」

「ええ、全くです」


真妃は今の今までソフィアに封印されていた。

封印理由は至ってシンプル、嫌いだからだ。

ソフィアは奏慈を繋ぎ止める為だけの存在として作られた。

その為か愛情は無く、その扱いは道具その物。

結果、ソフィアに恨まれ、隙を見せた時に封印された。

つまり、自業自得……殺されなかっただけマシだと言える。


「で、何しに来たんじゃ? お主は呼んでおらんぞ」

「さっきも言った通りです。マキは常に奏慈の傍に居ます。

 でも、その為には裁く者としての力を取り戻していない今しかありません」

「ちっ、そういう事かよ……せこい野郎だ」

「くっ、カンナギを守りますわよ!!」


そんな真妃が封印されていた位で反省する訳も無い。

今度こそ二人っきりで居る為に奏慈を拉致しに現れた。

正直呆れるが、そんなこと言ってられない。

フラン達は一斉に武器を出現させ、構えた。命を懸けても奏慈を守る。


「マキに戦いを挑む気ですか? その浅はかさ……」

「それはこっちは台詞だ」

「えっ? ぐっ!?」


だが、次の瞬間、真妃は地面に叩きつけられ、奏慈に踏みつけられた。

戦いは奏慈の手によって始まる前に終わりを告げる。


「ソフィアより弱く、今まで封印されていた奴が僕に敵うとでも思ったのか?

 馬鹿にするのもいい加減にしろ」


奏慈はそう言うと、さらに強く真妃を踏みつけた。いつになく機嫌が悪い。


「……マキの負けです。どうとでもして下さい」

「分かった……ルフ」

「はっ!」

「……結局、なんだったんのですの」

「さあ?」


意外な事に真妃はあっさりと負けを認め、ルフに拘束された。

戦わずに済んだものの、なんだか拍子抜けだ。

でも、終わりは終わり……藍達は気持ちを切り替える。


「創造神様、そろそろ始めましょう。また邪魔が入っても面倒です」

「そうだな。始めるとしよう」


これでやるべき事は全て終わった。

奏慈は一歩踏み出すと、藍達に向かって言う。


「今から僕は創造神の……いや、裁く者としての力を取り戻す!

 少し揺れると思うから座るか何かに捕まってくれ!!」

「わ、分かりましたわ!」


遂にその時が来た。奏慈は剣を出現させると、勢いよく地面に突き刺す。

対して藍達は言われた通り、各々座ったり、近くの柱に捕まった。

今でも十分強い奏慈がさらに強くなる……一体、どうなってしまうのだろう?


「ふううう……はあああああ!!」

「ゆ、揺れてますわ!?」

「うっ、こ、これは強い! 立っていられないぞ!?」

「く、くくく、いいぞいいぞ! もっと揺れろ揺れろ!!」


間もなく、奏慈は全身に力を入れ始め、地面が激しく揺れ始めた。

その揺れはどんどん強くなっていき、大神殿は悲鳴を上げ始める。


「る、ルフ! 本当に大丈夫なんでしょうね!?」

「勿論! たぶん、恐らく……」

「頼りになる発言、ありがとうございます!」

「そ、奏慈……」


それでも今までの事を思えば、こんなの屁でもない。藍達は静かに奏慈を見守る。


「はあああああ! ふん!!」

「うっ、うわあああ!?」


こうして、世界中に散っていた力が集まり、奏慈は覚醒した。

奏慈は地面に突き刺していた剣を力一杯引き抜く。

その瞬間、凄まじい衝撃が藍達は襲い、吹き飛ばす。

こんなの初めてだ……藍達はゴロゴロと転がり、壁に激突する。


「あっ、ごめん! 思った以上に揺れが強かったみたいだ!!」


奏慈はそれを見て、急いで藍達の元に駆けつけた。

力を取り戻すのは奏慈にとっても初めてのこと……色々と予想外だったらしい。


「ほ、ほんとですわ……あっ」

「全くだ……えっ」

「……ほう、これは立派な物だ」

「おっ、おお! やっと、この日が!!」


そこに居たのは紛れもなく奏慈だった……見間違う訳が無い。

だが、雰囲気はまるで違う。見た目は変わらないのに、別人のように見えた。

フラン達は思わず息を飲み、その姿に見惚れる。

これが力を取り戻した奏慈……いや、裁く者としての奏慈の姿か。


「……イカリ」

「大丈夫……大丈夫です」

「奏慈……」


それに対し、藍達は対照的に固く口を噤む。奏慈はもう人間に戻れない。

その事が今の奏慈の姿から伝わってくる……結局、運命は変わらないのか?


「っと、来たか」

「えっ?」


そうして各々が反応する中、五つの影が奏慈の前に降り立った。


「ご復活、おめでとうございます!!」

「うむ」


その影はそのまま奏慈の前に整列すると、膝を突き、頭も下げる。

敵では無さそうだが、一体何者だ? 藍達はすぐに奏慈の前に回る。

だが、そこに居たのは意外な人物だった。


「って、フィー!?」

「うん、さっきぶりね藍!」


一人は藍の親友にして聖女のフィー。満面の笑みを浮かべ、ウキウキだ。


「マガミ、オクリ……わらわ達はやったぞ!」

「うん……」

「本当に長かったですね……」


さらにマガミ、オクリの二人も居た。

今ここに居る五人は奏慈に忠誠を誓っている者達のようだ。


「これは面白い……まさか、ここで会えるとは!」

「……なんで、コイツが」


だが、その五人の中にはエーデルリッターであるマティも居た。これは一体?


「創造神様、先日は申し訳ありません……こちらで解決すべき事を」

「気にするな……寧ろ、謝るのはこっちの方だ。すまなかったな」

「い、いえ、そんな!!」


最後の一人はカムイ島で会ったワンナイトの店長ウトだった。

ウトは何度も頭を下げ、申し訳なさそうに縮こまる……前会った時とは別人だ。

だが、ここに居るという事はウトも奏慈に忠誠を誓っている者の一人なのだろう。


「奏慈、この五人って?」


それを確かめる為にも、藍は奏慈に聞く。五人は一体、何者なのか?


「ああ、紹介するよ。この五人は……」

「そう! 私達は創造神様に忠誠を誓う最強の戦士!!

 オールドゼロ! 創造神様に仇名す者は私達が相手よ!!」


しかし、それはフィーの口から語られた……妙な口上も合わせて。


「……だ、か、ら! それダサイのよ、フィー!!」

「えええ!?」

「はああ、また始まったよ……」

「今回は長くならないといいがのう」


そして、始まるオクリとフィーの鬼ごっこ。

藍達は唖然としながらも、その鬼ごっこを見守るのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正致します!

感想・評価・リアクションも募集します! よろしくお願い致します!

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