表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
75/100

決戦、の7

 「なんの冗談だ、さっきからよう。猫が靴履いて立つわしゃべるわ。わかった、てめえ猫の皮をかぶった宇宙人だな!」黒づくめのリーダー格がほぼ半ギレた状態で叫ぶ。

 言葉を聞いた猫が、意外そうにふふん、と嗤った。

 「なんだ。うちのやつ(同居人)よりよっぽど察しがいいな。貴様の推論は、正直当たらずとも遠からずだ。犯した罪と卑劣な悪行は褒められんが、モブの定番をしっかり解説できていることだけは褒めてやってもいい」

 「ふざけんな!」叫んで銃を構えそうになる男を見て、猫が小山を背にする位置まで素早く足をスライドさせる。銃口が猫に向き、ミイコから離れる。

 暗がりに赤い線が走る。レーザーサイトは向けた相手の恐怖を助長させたり、下手くそが的を的確に狙うのには向いている。裏を返せば冷静な相手を前にした場合は「これからそこに撃ち込みますよ」と丁寧に予告する間の抜けた行為だ。

 「素人が」

 猫の言葉に激昂した男が引き金を絞る。軽快な音が闇を抜けるが、猫はすでに身軽に任せてその場を離れている。

 ウォーズマンのベアークロウ(熊の爪)ならぬキャットクロウ(猫の爪)を連続でお見舞いする。技名と見た目ほどのダメージは通らない。そもそも大きさ的に、猫の体で与えられるダメージには限界がある。

 もういい、男がボソッとそう言ったかと思うと、男はおもむろに銃を捨て、体当たりを仕掛けてきた。視界が男の姿で覆われる。猫の目が夜用であっても、真っ直ぐ向かってくる黒い塊を完全に避ける暇はなかった。

 弾が尽きるまではアウトレンジアタックが基本だろうが!そんな言葉は勿論相手には通じない。かろうじて前足でガードするも、軽々と体は後方の小山に叩きつけられる。

 芝生がいかに柔軟性を持っていようとも、叩きつけられれば多少なりダメージはある。意識が軽く飛ぶ。

 「逃げるぞ!これ以上はヤバいって!」

 黒づくめの仲間二人の影が、走りながらこちらに向かって叫んだ。

 「くっそ、これからだってのに。まあいい」ぼんやりとした頭に男の声が届く。

 眩暈がしてまだ体がじゅうぶんに動かない。男がゆっくりと立ち上がり、まだ気を失っているミイコの首の後ろを猫掴みして持ち上げる。銃を拾い上げ、唾を吐くのが見えた。


 猫の分際で、てこずらせやがって!


 踵の厚いハードブーツで、思い切り体を踏みつけられる。骨が何本も折れた鈍い音がした。

 鼻腔の奥が熱くなり、知らず、喀血する。思考が再び、飛ぶ。


「化け猫にも興味があるが、今回はメス猫のオブジェを作ると決めてるからな。それに猫がしゃべるっつっても、死体までそうとは限らねえ。死人に口なしってな!」さすがに脅威を感じたのだろう、男はもう一度、今度は体の裏側を見るように爪先で転がすと、今度は電動のカラシニコフを至近距離で斉射した。

 すでに痛みはないが、体は弾着のたびに、びくびくと痙攣した。


 「彼女(ミイコ)を、おいていけ」


 まだ生きてやがる。もう死ね。タタタタタ、とカラシニコフがまた火を噴いた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ