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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
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嵐、の3~猫~

 久方ぶりの好天に、公園はおおいににぎわっていた。気温はそこそこに高いはずだが、そよいでいる風が暑さを中和してくれていた。

 公園のはずれ。木陰の多いフェンス際でハードストレイキャッツの面々が猫集会を催している。当然のことながら、話題は『アニマル・キラー』と『ブラックサンズ壊滅』に集中した。

 「今回はゲストに風彦くんを招いたわけですが、風彦くんは率直に今回の事件をどう見ています?」

 「そうですね。猫や犬、自分たちより弱いものを狙った悪質な犯行ですから、早く犯人を捕まえてほしいですね」

 「で、去勢してほしい」

 話題を振ったタイガーもそうだが、素直にそれを受ける風彦もどうかしている。

 「笑い事じゃないんだからそういうのやめなよ」ミイコの言うことは実に正論だ。

 「そうだ、俺たちはこれからのことを考えなければならない。俺が見た不審な奴らが犯人なら、この公園だって狩場としての下見をしていったのかもしれない」クールガイも真剣だ。ブラックサンズが襲撃を受けたことを彼(?)は重く受け止めていた。クールガイはこの公園を拠点に生活をしている野良だ。他人事ではない。

 「公園に人が多いのはあの事件のせいもあるみたいよ」クイっと水晶がアゴを向けた先には、子供を遊ばせておいて噂話に興じる主婦の姿。言われてみれば、これまでに見たことのない子供も多い。


 「よし。これよりしばらくの間、夜間の外出を制限する。公園のあの『ちゃ~ら~』という音楽が流れたら各自帰宅、以後公園は朝まで立ち入らぬように」

 「タイガー、俺、公園以外行くとこがないんだが」クールガイだ。うむ、と思案した後タイガーは、しばらく誰か居候させてくれそうな家はないか?と周囲に振る。いや、ウチはダメだ。最近赤ん坊が産まれてアレルギーを警戒されている。正直俺の居場所自体危ういのだ。

 「じゃあ、うちくれば」と言ったのは意外にもミイコだった。

 キーマンも同意する。「気兼ねしなくていい」と甘い顔を見せるが、自分だって歴とした野良だ。よくエサをたかりにいくだけで、実際のところミイコの身内がどう考えているかは知れない。

 「確認だけど、僕は君んちで良かったかな」と風彦。

 「くがねを両親が歓待しているのだ、問題あるまい」

 決まりだな、とタイガーは満足気に、ひと鳴きした。


 今日は普段より人出があるせいか、ゼン爺たちホームレスはどこかへ出かけているようだ。

 「世知辛い世の中だな」と風彦。心なしか表情に元気がない。

 「お前はホームレス許容派なのか?」

 許容というのとは違うかもしれないが、あの人たちだって別に好きこのんでホームレスになってるわけじゃないんだろと言って笑う。


 「僕だって、好きこのんでこんな色()なわけじゃない。だから彼らがああなったことに彼らなりの理由があったって、全然不思議じゃない」

 話し終えた後、風彦は。らしくなく、ひどくバツが悪そうな顔をしてフイっとその場を去った。



 この間湊のアパートに行ったときも、風彦は同じ理由で去ったのかもしれない、なぜかそう思えた。

 公園にドヴォルザークの「遠き山に日は落ちて」が流れはじめた。

 タイガーが『ちゃ~ら~』と言っていたそれだ。

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