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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
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嵐、の2~僕~

 自室のテレビには、ふしぎの海のナディアというアニメが流れていた。再放送されたものを録画したものがあって、くがねがそれを見つけて再生したのだ。

 たまたま録画されていたのか、はたまた消し忘れが残っていたのか、どちらにせよその録画は一話きりのもので、物語の前後の話は録画されていなかった。なぜ彼女がそんな単発のものを選んだのかと、僕は首を傾げた。

 画面には、島に流れ着いた主人公の女の子ナディアが「凄いわジャン!あなたは発明の天才ね!」という言葉を何度も狂ったように繰り返していた。

 「あたしもよく覚えてないんだけど、この子ベジタリアンなのに、なぜか卵は食べるのよね」

 今後の対応策について、これといった妙策も思いつかなかったくがねがポロっとこぼした。

 「卵は卵で生き物じゃないらしいですから」

 屁理屈じゃない?くがねが笑う。

 「くがねさんもアニメなんて見るんですね」

 「意外?でもこう見えて結構見てた方だと思う。人生にはいろんな生き方があるよって教えてくれてるみたいで、好きだったかな」

 過去形で結ぶ台詞に現在進行形の影はない。


 くがねは昨日ここで過ごしたのと同じラフな格好で僕の部屋にいた。ついさっき知ったことだったが、彼女の身につけている服のスカート部分には大量の武器が仕込まれている。当然そんな服のまま畳などに正座できるわけもなく、椅子に座ることにも細心の注意が必要だった。彼女が家に来た際、すぐに手洗いに行ったのも、我が家の居間が畳敷きだったためだ。正座するために、身につけた武器を全部バッグに移し替える必要があった。

 道理で階段で受け取った彼女のバッグがやたら重かったはずだ。ようやく合点がいく。


 気を利かせたつもりで、くがねが脱いだ黒服をハンガーにかけて吊るそうとした結果。

 持ち上げた服から次々と落ちてくる剣、短剣、槌、投剣、メイスに錫杖、電気警棒。鋼線、鎖鎌、見たことも形容のしようもない道具類まで。床を大太鼓に見立てて盛大に演じたかのような轟音が鳴り響いた。階下の両親は最近頻発している縦揺れの地震と勘違いして慌ててテレビをつけたが、地震情報の速報など来るはずもない。


 「レディの私物に勝手に手を触れないでほしいものだ」呆れた顔をくがねはしたが、僕に言わせれば、レディ(淑女)は心に刃は隠しても、服に大量の武器は隠さないと思っていた。

 「化物語かよ」

 「無限の住人だ」

 どちらも物騒であることに大きな違いはない。


 服から飛び出したくがねのどの得物も、かなり年季が入っていて、中には黒光りしているものもあった。片付けながらひとつひとつ手に取っていく。

 「場合によっては、これで、仕留めるんですか?」

 そうだ、と、くがねは頷いた。手伝う彼女の顔に、冗談の気配は微塵もない。

 「殺したりはしないんだから、優しいものだろ?」

 「でも刺したり殴ったりはするんでしょう?」

 「いや、大抵は殴ったり、吊るしたり、切ったり、痺れさせたり、縛ったりだ」

 僕にはくがねの言うカテゴリー別分類が、正直よくわからなかった。

 

 しかしそれがとても凄惨なものであろうことだけは、なんとなく理解した。

 生き物は大切にしなければならない。


 教訓だ。


 

 

以前、「今そこにある危機~猫~の9(39話分)」で無限の住人の登場人物の万次さんを卍にしておりました。彼の着ている服に「卍」が書いてあったので、ついうっかり間違えてしまいました(訂正済みでございます)。

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