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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
50/100

予期せぬ来訪者、の10

 「これだ」

 そう言って剣くがねが僕に示したのは、彼女が今朝見ていたハンターサイトなるものだ。

 理不尽な動物虐待をおこなうものの情報から、飼主探し、迷子情報まで、動物愛護精神を有するすべてのユーザーがおよそ考えつくであろう情報が軒並み閲覧できる。

 「やはり更新されてるな」

 『あっちのでかい公園』と僕が勝手に呼んでいる公園の正式名称と、事件概要がまとめられたページを見る。野田町第二新緑公園というのか。初めて知る。

 そこには今回の事件の概要と被害にあった動物たちの写真が詳しく掲載されていた。ページの最後にこの事件を解決した際の賞金額が掲示されていて、少量の額ではあるものの『賞金額(リワード)』の数字が間断なく上がって(レイズ)いくのが見える。見ている目の前で、現在の賞金額は二十万を超えた。

 「有志がこうやって事件に賞金を懸けているのさ。まあ実際手元に入るまでは金額は流動的で、実際の提示額より少なくなることの方が多い」

 そこじゃない、と僕は言った。

 「この情報、あまりに詳しくないですか?事件があった場所の特定だけじゃなく、被害にあった動物たちの写真まである。僕らが現場に行ったとき、警察が大仰に検証までしていたのに、この依頼者はどうやってここまで詳しい情報を手に入れたんだろう」

 「さあ?動物愛護の精神が人並み以上に溢れている人間の行動力に、限界がないからじゃないか」そう言ったくがねの言葉には、どこかいつものキレが欠けている。何か伏せているのは僕にもわかった。


 今回の事件があの「アニマル・キラー」の再来で、テレビのニュースで報道されたこともあって、こうしている間にも賞金額(リワード)は上昇していく。くがねは「賞金額が必ずしも提示された額がもらえるとは限らない」と言っていたが、問題はそこじゃない。

 「これ、あきらかに違法なんじゃないのか?」

 倫理性が欠如している。この国は曲がりなりにも法治国家を建て前にしているはずだ。

 だろうね、と、くがねは嗤った。

 「でもね、あんたがどう思おうが、あたしがこの仕事を辞めるつもりはないよ」

 語気に帯びる強い意志。

 剣桃子が犯罪抑止に奔走したり、警察がいくら取り締まろうと、やまないものはやまない。以前同居人()が言っていた「人一人が死んだり行方不明になれば警察が動くが、動物がそうなってもこの国ではそうしない」という言葉が胸に刺さる。


 「じゃあ今すぐあんたが動物たちに事態を解決できる叡智を授けてみせろ!」と、くがねが今にも言い出しかねない。

 少なくとも今の僕に「エゴだよそれは」と突っぱねるだけの気力も気概も持ち合わせてはいないのは事実だ。

 

 


早いもので五十話です。これからの展開にご期待いただけるよう頑張ります

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