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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
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予期せぬ来訪者、の8

 テレビで放映されたせいだろう、「あっちのでかい公園」にはあきらかに野次馬とわかる人影が多く見えた。それとは知らず訪れた来園者が噂話で立ちどまりだすと連鎖的に人が増え、ついには人だかりが人だかりを呼ぶ結果となった。

 暇人どもが、と、くがねは舌打ちする。さすがに公園のすべてを封鎖するわけにはいかなかったのだろう、検証が片づいたところから順に警察の黄色の立ち入り禁止テープが外されていく。

 ぐるりと一周してみるが、余裕を持ってテーピングしているのかはたまた事件範囲が広域であるからなのか、どの位置からも詳しい様子を見ることはできなかった。

 警察官が数人と、顔を両手で覆ったトレーニングウェア姿の婦人、それと作業帽、作業服を着こんだ二人連れが「立入禁止」のテープの内側から出てくるのが見えた。自然と足が向く。

 作業服を着こんだ二人連れの内の一人がこっちに気づいて近寄ってきた。作業帽をとる。

 帽子から、中にしまいこんでいた髪がはらりと現れる。剣桃子だ。

 「検証は終わったわ。猫二匹、犬一匹。特にひどかったのは犬に対してね。全部の足を縛られたうえで切り落とされてた。猫はガスガンかしらね、的にするだけして……」

 「それ以上言うな。聞きたくない。検証が終わったのなら中に入る」

 「テープが外されるまではダメよ。それに被害にあった動物たちはもう運び出した」

 猫とほぼ同時に目が合った。姉妹の再会だ。しかし互いになれ合う気配はない。

 「この始末、どうつけるつもり、桃子」

 「(くがね)こそ、止められなかったじゃない」

 沈黙があった。にゃあ、と風彦がひと鳴きした。猫がぴくっと耳を動かす。

 そうね、小さくくがねが呟いたのが聞こえた。うつむいて漏らした言葉は桃子にまでは届かなかっただろう。顔を上げて、前へ、くがねは踏み出した。

 「あとはあたししかできない仕事。まかせなさい?」

 桃子の肩をポンと叩いて、くがねは「立ち入り禁止」のテープをくぐった。

 剣桃子は泣きそうな顔をして立ち尽くし、何も言わなかった。

 

 「いいのか?」くがねに問う。剣桃子にかけていい言葉が浮かばなかった。彼女の横を過ぎながら、僕もまた黄色いテープをくぐっていた。

 「気になるならなぐさめてくればいい」

 「久しぶりに会ったんじゃないのか?」

 「おせっかいのつもりなら的外れだ。あたしはあたしの仕事でここにいる。あの子(桃子)はこれ以上立ち入れない。そもそもあんたこそ関係ないんだから、桃子の方ををどうにかしてやってくれ。顔見知りなんだろう?」

 え、と口ごもる。そんなことを言った覚えはない。

 「『双子設定の』ってあたしの顔見るなり口走ったの、忘れたのか」

 聞こえてたのか。あの後そんな話にもならなかったからてっきり聞こえていないものと思っていた。そういうところこの女(くがね)は人が悪い。

 にゃあ、と風彦がまた鳴いた。

 「『これ以上かかわるというなら覚悟しておいた方がいい』……見たくないものが見れるとさ」

 猫が通訳した。

 

 それは興味深い。しかし火曜の今日はハローワークが普段より()く。いい求人が新しく出ませんように、と、少し前なら思ったところだ。

 

 


 

おかげさまでユニークも500を超えました。読んでくださっている方々に感謝を。

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