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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
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猫の恋、の6

 帰りの途、セブンイレブンに立ち寄り、いくばくかのつまみとビールを買った。

 家に帰るなり僕は部屋のエアコンを全開にし、ビール缶のフタを開け、一本を猫に渡す。

 医者がよく言う「ビールやコーヒーを飲んでも水分にあたらない」というのは、飲んだそばから体の別な場所に急速に吸収されてしまうからではないかと思う。暑さにさらされた直後、エアコン下で流し込むビールは最早魔性の美味さだ。ロング缶が一飲みでずいぶん軽くなる。

 「かぁ――っ!」

 「かぁ――っ!」

 もはや猫共々、いいおっさんの様相だ。

 道すがら猫と今後について話をした。

 僕が動物愛護センターの職員につかまっている間、猫は公園に居合わせたハードストレイキャッツのメンバーと情報共有をおこなっていた。話をかいつまむと、ミイコは飼われているはずの家にはどうやらいないとのことだった。

 キーマン(黒白ハチワレ(去))からのネタで、キーマンはほぼ毎日ミイコの家に出入りして、エサをもらっているため、情報の信憑性はかなり高いとのことだ。

 動物愛護センターの職員の二人についても情報があった。ここ最近あの公園付近で、リーダーのタイガー(茶トラ♂)がよく目撃しているらしく、幾度となく猫じゃらし片手にちょっかいをかけてくるらしい。二人はクールガイの言うところの「怪しい奴」ではないとの話もあったようだ。

 「しつこくされるのは嫌いだが、まあ、俺に惚れる気持ちもわからんではない」とタイガーは喉を鳴らしたという。

 以後怪しい奴の目撃はしていないクールガイは、自衛のために天気のいい日は鉄の居城に籠る生活を送っている。

 「鉄の城で籠城か。猫なのに凄いな」

 「鉄の城とは言うが、ジャングルジムだぞ?晴れた折りしか使えんうえに日陰もない。たまに子供の襲撃もある。私ならとても耐えられん」

 黒猫の水晶は今日は公園にはいなかったらしい。現状、何ら有益な情報はなく、これといった対策もない。

 「八方ふさがりじゃないか」

 「妙案が常に傍らにあると思うのは愚者の安直からだ。休む時は休む。英気を養うときは、すすんでそうすべきなのだ。妙案は大抵その先にある」

 猫の目が泳いでいるのが傍目にもわかった。目を細めているふりをしながら、鼻先はあぐらをかいて座る僕の側に向いている。

 「その、なんだ。せっかくの鶏が、冷めてしまうのは、悲しいことじゃないか?」

 出来立てで買い求めたセブンイレブンの揚げ鶏に気がいって猫はそぞろになっているようだった。

 「猫舌じゃないのか?」

 「ビールで中和すればイケる」

 時折、この猫がどこまで本気なのかわからなくなる時がある。猫が前足で空になった缶を転がして見せた。どうやら「もう一本ビールを頼む」の合図らしい。

 「居候の身の上だからな」

 ならもっと遠慮がちにそっと出すくらいの配慮があってもいいはずだ。

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