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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
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猫の恋、の3

 最近頻繁にニュースの話題に上がっているのが『この夏の猛暑日の最長日数更新』と『アニマル・キラー』の話題だった。連日のうだるような暑さと、反対に冷酷で非人道的な話題が交互に放映されると、「こういったニュースで人の感情を熱くさせたり冷やしたりすることは極めて不適切だ」、「せめて間に緩衝になるようなニュースを挟むべきだ」との意見がSNSを通じて寄せられるなど、妙な反響を呼んだ。結局、『すべては続く猛暑のせいで、いろいろとおかしくなっているんでしょう』という某有名コメンテーターの一言で騒々しさは落ちついたものの、それ以降も変わらずこの二つの話題がニュースの時間を大きく占める現状に変化はない。

 ハローワークまでの行き帰りの天気予報を見ていた際、自分でもこの話題を見た記憶があった。

 猫が言うには、自分の仲間がこの事件に巻き込まれた可能性があるという。

 殺した動物の血で『成敗』のメッセージを残すという、残虐でいかれた犯人が捕まったという情報はまだない。

 「でも、こんな田舎町で?」

 「クールガイ(サバトラ(去))が怪しい奴をアジトで見かけたと」

 ハードストレイキャッツ、クールガイ、アジト!

 猫の言葉が真剣で、熱を帯びるほどに、自分の中にこみあげてくるものに耐えられなくなりそうになる。笑うのを堪えようとして、咳き込む。シリアスな内容にどこか背景がついていけてない感じがする。

 猫の眼光が鋭くなる。前足が、今にも爪を出すぞ、と脅迫して、ギュッという音を出した。

 にわかには信じがたかったが、こいつが言う以上、事の真偽はともかく猫同士のコミュニティに関しては本当のことなのだろう。

 『猫は人間の言葉をすべて理解していながら、そのうえでこちらを優雅にあしらっているのだ』と言った研究者がいたことを思い出す。今ならば、周囲に馬鹿にされ続けて亡くなった彼の言葉の信憑性を肯定できたのに。

 猫に対しても一礼し「すまない」と仕切り直す。

 「かどわかされたと思われるのは、ミイコ(三毛♀)さんだ」

 「ミイコ、さん?」

 猫がそっぽを向いた。

 どうにも妙だ。

 「ミイコは美人か?」

 「ミイコ、さんと呼べ」

 ははあん。

 ここまでのやりとりで、さすがに鈍い僕でも、どうにか、いろいろなことを消化することができた。

 「おおかた水晶とかいう猫にミイコがお前の運命のひとだとでも言われたんだろ?」

 「そんなわけはない」

 声がうわずっているぞ。毛で見えないが、顔を真っ赤にしているんじゃないのか?

 からかっていることが楽しいわけではない。この猫にからかえる余地があることがどうにも嬉しかっただけだ。


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