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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
10/100

猫の恋、の2

 「助けが要る」

 猫が神妙顔で僕にそんなふうにヘルプを求めてきた事は、正直驚いたし、耳を疑った。

 「え?」と、素で訊き直したほどに。

 素性のしれない猫と奇妙な同居関係になって一週間。大抵のことでは驚かない自信があった。

 「今、助けてくれ、と言ったか?」

 「ああ」

 「僕に?」自分の顔を指差す。静かに猫が嘆息したのがわかった。

 猫の表情から、苦渋の決断をしている雰囲気が読み取れた。ほんにんは気づいていないのかもしれないが、自分に不本意なことをしなければならない状況に陥った時、コイツは人と目を合わせることを一切しない。そういうところについて、この猫と自分は、とてもよく似ていた。

 必要以上に相手に干渉しない。この一週間、僕と猫はそうしてきた。その距離感が心地良かったし、勝手にではあるが、その状態がこれからもしばらくは続いていくものと思っていた。

 思い込みの信頼感が砂の城であることくらい理解はしていた。落胆のするしないについてはこっちの勝手な都合でしかない。

 どんな顔をしていたのか。猫がこちらの表情を垣間見て再び静かに息をいた。

 「私が言った事は忘れてくれ、と言えたなら楽なのだが、そういうわけにもいかん」と猫が掠れ声を出した。頼み事をすること自体、本当は喉がかすれるほどに嫌なのかもしれない。

 この国では、素直に言った方が伝わる。かつて吐いたも自身の言葉が、じわりと首回りに貼りつく。

 わかった、と頷く。

 プライドの高そうなこいつが引かずにとどまっている以上、文字通り『ぼくの手も借りたい』状況ということなのだろう。

 「本屋の裏口を見張るくらいの事なら、協力してもいい」

 「感謝する。『風に吹かれて』を歌い終えるごとに扉を蹴ってほしいなどとは言わん」

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