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オタクな僕と奇妙な猫  作者: 大原 藍
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邂逅の1

初投稿と申しましょうか。手探りで書いている節がございます。より良い書き方や見せ方の手法がございましたら是非ご教授くださいませ。感想など頂けましたら励みにもなろうというものです。

最近、文章の粗に目がいくようになりまして、読み返しては直しております。「あれ?前と違う」と思った方正解です。

 いつからだろう。燦々とした太陽を避け、月明かりの下の影だけを踏むようになったのは。

 どこからだったろう。それでいいじゃないかと、思うようになったのは。


 「正直もうどうしたらいいものやら」


 郊外の夜空は星が多く見える。都会にいたころは気づかなかったことだが、空は決して黒くもなければ濃紺でもない。紫や橙、星の瞬きによっては白色さえのぞかせる。流れ星は天空を裂いて尾を長く引き、虫の声しか響かない静寂を大きく割った。

 午前二時。

 盛夏もさすがにこの時間までは熱を残していない。日中汗が止まらず肌がべたついた記憶が頭をよぎり、不快になる。今年の夏はひときわ暑く、気温が体温を大幅に上回る日が続いていた。

 仕事を辞めて実家に戻ったのは、つい先日のことだ。

 懐事情に存分な余裕があるわけではなかったし、すぐに仕事を探すつもりだった。

 事情を話した両親も、そういうことなら、と比較的好意的に息子の帰還を受け入れてくれた。自分自身、取りきれず残っていた有給休暇を消化している間に次の職くらい簡単に見つかると思っていた。

 しかし、半月が過ぎても格好の仕事はいっこうに見つかる気配はなかった。

 さほど高望みをしなければどうにかなるだろうなどと括っていた「たか」は大きく外れた。目の前の不況の波は僕の想像など遥かに超えていたのだ。

 「まさか最低限の文化的生活を送ることがこうも困難な道のりだとは」

 『早まった感』の鋭い切っ先が喉元にちらつく。

 当初受け入れに好意的だった両親も、僕が居着いて二週間を過ぎた頃から、行動のそこかしこに隠し針を仕込むようになってきていた。

 「何故、父の食卓にのみウニがあるのか」


 母は黙して語らない。


 働かざるものは食うべからず。

 あるいは食費も高額納税者優先ということか。

 いや、両親の高齢を考えれば、このまま一人息子が無職とあっては、死んでも死にきれないと考えている、のかもしれない。

 「愛の鞭とは思えど……世知辛い話だ」再びぼやく。しかし、そんな言葉は雲が散り霧が消えるように風の中へ溶けていく。

 気がつけば日中は部屋に籠り、両親が寝静まった深夜にコンビニへ出かける生活スタイルが板につきはじめていた。田舎のコンビニは遠いが、仕方がなかった。何をしていなくても生きている限り、腹は減る。深夜に台所の棚を漁る鼠のような真似だけは、まだしたくなかった。

 コンビニで買い込んだ売れ残りのようなものをぶら下げて帰る道すがら。

 並ぶ街灯のなかで明滅するひと区画に、それは、居た。

 「かような夜遅く、いかに男子おのことはいえ。感心できるものではないな」

 普段ならそんな讒言に一瞥もせず「言わせておけ」と吐き捨て、足早に立ち去るシチュエーションだ。

 しかしそれはあくまでも、相手が夜闇と青みを帯びた白色灯の下にスラリと佇む猫でさえなかったならば、の話だ。


 

自身初投稿作品になります。文章から離れて時間がたっておりますのでお見苦しい点もあるかと存じますが、仕方ないな、と思ってくだされば嬉しいです。

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