映画の中の彼女と
映画の中の彼女と
昔、学生時代俺、雨宮和人あまみやかずとはサークルで映画の撮影を行っていた。
「和人、こんど行く海岸での撮影のことなんだけど神社のおみくじでお互いが思う方向を見失わなければ永遠に結ばれるっておみくじに出ていたのよ」
「麗華。 お前本当に占いとかおみくじとか好きだよな」
「でもおみくじより和人の方が好きだけどね」
永井麗華ながいれいかは俺と付き合っている恋人で二人でサークル活動をしている女の子だった。
他のサークルの友人にも協力してもらい、恋愛映画の撮影もクライマックスを迎えていた。
ラストシーンでお金持ちの主人公と貧乏なヒロインが駆け落ちして海の上の崖で、結ばれない愛ならば飛び降りて永遠に一緒になるシーンを撮りに行ったときに、誤って麗華は崖から落ちて帰らぬ人となってしまったのだ。
彼女との最後の思い出として『映画の中の彼女と』というタイトルをつけたのだ。
20年の月日が経ち、俺は別の女性と結ばれささやかな家庭を築くことができた。
ある日家の片づけをしていて『映画の中の彼女と』のフイルムを見つけたのだ。
妻にこのフイルムは何?と聞かれて正直に答えたところ
「悲しい話ね。 でも思い出なら見てみない?」と言われ
家のテレビで鑑賞することになったのだ。
そして、忘れもしないラストシーンに映像が乱れ、 飛び降りるシーンの時にテレビから映画の中の麗華の手が俺に伸びてきて俺は飛び降りるシーンの映画中に引き込まれたのだ。
飛び降りるとき確かに聞こえたのだ麗華の声が
「カズトクンコレデ、エイエンニイッショダネ。 オミクジノウラナイアタッタネ」