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北限へ(4)

ツェトラ達は概ね無事に魔物を殲滅せんめつした。

基本的に数が多く、しかも強力な敵と戦うため、1日に2度も戦闘をこなすと、小隊の誰もが(アルト除く)疲労を隠せなくなってしまう。


アルトの魔剣技も、ハイジェの攻撃・防御魔法も、エメの格闘術も遺憾なく発揮されている。

ほぼすべての戦闘が優位戦だ。

だからと言って、全くダメージを負わずに切り抜けられるわけもない。


8カ所めの街までもまだ遠いため、今回は帝国騎士団の詰め所で休息をとらせてもらうことになった。

これまで通過した詰め所よりも広い敷地と数多い建物群。

ここを拠点に活動する精鋭部隊は50人程度で、3年ごとに勤務地が変わる。


──なんてことを説明しながら、帝国騎士団北方駐留部隊ブルー・ナイツの今の副隊長、アーヴィングが実に滑らかに説明しつつ、一通り詰め所を案内してくれた。


どっちかと言うと女の子が好き(一人は心の底から、もう一人は偏愛的に、次の一人は当然に、あとの一人はなんとなく)だと自認する少女たちは、異性に対する恋に身をいたことがない。

だからと言って別に男性を嫌っていたり父性をうとんじているわけではなく、親しさと礼儀と観察眼でもって公平に接する事ができる。


ちょっとばかり軟派な印象がある(エメ談)ものの、アーヴィングはツェトラやハイジェから見てもなかなかの美男子である。

人当たりよく、礼儀正しく、愛嬌のある人物だ。

ド貧乏(本人談)な環境から実力で部隊の副長を任されるに至った叩き上げの軍人が、その苦労や実力の片鱗も見せない温和な態度を身に着けているのだ。

端的に言って、そんなヤツがモテない理由がないわけで……。


詰め所の別棟べつむね、おしゃれなゲストハウスで1泊するかんに、彼を慕う女性たちからこっそり受けた依頼は、存分に少女達を悩ませることになった。


「むぅぅ、困りましたね……」

「魔族同士なら別に珍しい事でもないんだけどね。むしろ恋愛については魔族の方が懐が深い」


妖魔族ミスティックの習慣を例に挙げるまでもなく。

個人の愛情や恋心を優先できる制度(同性婚や一夫多妻、一妻多夫など)が充実しているのは人間族ヒューマンよりも魔族の方である。

魔族の領地では王侯貴族でなくとも多数の妻や多数の夫を自由に持つ事ができ、当人たちの間に確実で情熱的な愛情と幸福がある限り、世間も寛容だ。


2人の妻に愛される幸せな魔王に仕えていた両親を持つハイジェがアルトの意見に同意したが、しかし腕を組んで考え込んでしまう。

「うーん、いっそ魔族の領地にでも住みますかって話ですけど、軽々しく職を離れるわけにもいかない立場になっちゃってますもんね、アーヴィング殿は」


北方を管轄する任務はあと1年半ほどだと言っていたが、彼のことだ。次やそれ以降の勤務地でもモテまくるに違いない。

いまツェトラ達を悩ませているのと同じ種類の問題を、無自覚なまま抱え続けるだろう。


一夫多妻制も一妻多夫制も一般的ではない『灼土帝国』で、青年騎士アーヴィングは、なんとも幸福なことに3人もの女性から、熱烈でひそやかな好意を寄せられているのだ。

ピアもシュピラーレもアルパも魅力的な女性で、互いに仲が良い。

それぞれが今の関係を壊したくないとも言っている。ゆえに恋愛感情だけで突っ走れていない。


ギャランティを弾むから何とかして欲しい、と言われても、恋愛の問題はツェトラの管轄外で専門外。

依頼の進捗は、1泊して次の街へ進む予定だったのをとりあえず3泊に延ばして様子を見ることにした程度だ。


なんでもかんでもギルド長に頼るのはなんだかしゃくだし、彼女たちの気持ちも大いに理解できる。

ここは自分や小隊の力で依頼を達成したい。

と、思うばかりのツェトラである。提案でなく意見に終わると分かっていて、ようやく口を開いた。


「彼に対して好感を持っている人が多すぎるのが気になります。不自然と言いましょうか」

「"星"の力かも知れないね。『魅了』の力が世代を重ねるごとに弱まって彼に巡って来たか……尋常じゃない人たらしなのは確かだけど」

2021/12/13更新。

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