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詩集「月面戦争」  作者: 維酉
月面戦争
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月面戦争

 スリッパだって、食べてしまえばおいしいかもしれない。スリッパだって、話しかければ機嫌よくこたえるかもしれない。スリッパだって、夢をもってて、それはたとえば仏像になることで、そうだよわたしを拝み倒す人間が見たいのさ、もしなるとして、そのときには金属の配合はこうこうでなんて、希望というこだわりがあるかもしれない……


 母の日に、わたしは母に電話しないで、自分用にケーキを買ってアパートに帰った。だれもとやかくいわないし、こういうときだけ孤独かもなんていう。だれかに否定されることで生きているわけではないし、だれかを否定することで生かしてあげるわけでもない。殺してあげるだけの言葉ではないし、救ってあげるだけの言葉でもない。よくないハザマでゆらゆらしてる。


 孤独。そんなむつかしい言葉で語りたくないよ皐月のことは。夜におんぶされて詩のことを忘れて、あぁわたしはなにになりたかったんだっけ。健康は万病の友だから、たばこふかしてベランダの月をみあげて、あぁわたしはなにになりたかったんだ。黒い空気に紫煙は溶けていく。


 たまに、玄関をあけたときの暗さが、いとしくなるのは、なぜだろう。


 宇宙のB面で戦争するみたいな毎日を、月面のうら側の温度で凍らせながら、きっといきものすべてに哀しみをいだいて愛するようなしあわせ。おだやかな生活にいのちの浄化を見いだすのはそう長くかからないだろう。ケーキは腐らせないように、冷蔵庫にいれて、それから生きる支度をするんだよ皐月なのだから。

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