18 歩きながらお聞きください②
度重なる問題が、幾度も私に決断を迫る。
国王陛下が王城へと帰還された後は、社交という長く厄介な行事が始まる。その準備に追われている時だ。
今日もいつも通り、長い通路を何度も行き来している。
「エルレイ殿下、歩きながらお聞きください。
黒エルフですが、なんとリルーセに出没したそうです」
「それは既に聞いている!」
「し、失礼しました!
更に、リルーセで起きたカラ派の暴動ですが、抑えたのはボーレン・フクス様に加え、なんとリゼンベルグの公爵嬢との事です」
「それは聞いてないな……」
何と言うことだ、またリゼンベルグか……。
先日のリゼンベルグの第二王女は、非常に気味の悪い女性であった。
「わたくし、気分が高揚すると脱いでしまうのです」
そう言って、茶会の場で突然服を脱ぎだした。
そんな馬鹿な話があるか?
この女、今まで裸で茶会をしてきたのか?
というか、これが私の未来の妃か?
厄介なことに、リゼンベルグは隣国だ。このような変人でも無下には出来ぬ。そう思った矢先に、先のリルーセの報告だ。
公爵嬢はお会いしたことが無いが、ボーレンと共に礼を言わねばなるまい。
「……ボーレンと公爵嬢への勲章と、式典の準備をせよ」
「承知しました」
いかんな。面倒な話がどんどん舞い込んでいる。
これでは、グロッソの奴と同じだ。
……そうか。
グロッソを使えばいいのだ。
「特務調査隊はいつ戻る?」
「予定では、ボーレン様と共に明日王都に帰還されます」
「そうか、国王陛下の帰還には間に合うのだな?」
「えぇ、そのようです」
帰還早々に大仕事で悪いが、当事者である奴に父上への報告を丸投げしよう。
……そう思うと、少しだけ気が楽になった。
「エルレイ殿下、歩きながらお聞きください。
例の黒エルフですが……」
「やめろ! 今私に話しかけるな!」
「し、失礼しました!!」
休みが欲しい。自由になりたい。




