第七十三話 洞窟攻略
ゲーム世界。
僕達は60層へと足を踏み入れることになる。
「さて、みんな注目!」
そんなことを言うメリッサ。右手を上げた。
「何だよ? あらたまって」
そういうシビラ。
「そうだよ。どうせメリッサが色々決めるんでしょ?」
ミレーヌはそう言った。
「いや、まあそうなんだけどさ。こと60層には注意しないといけないよ。ここは洞窟の階層。暗いし、敵もめちゃくちゃ強いから、このゲーム最大の難所なんだよね」
メリッサはそう言った。
「大半のパーティーがここで挫折するからな。しっかり対策を立てないとダメだ」
オリアーヌは言った。
「そうなんだね。具体的には?」
僕は聞いた。
「んー、まあ私が感知を頑張るのと、後は魔法キャラでごり押しするしかないんだけどね……」
そういうメリッサ。
「基本ゴリ押しなんだね。それはわかったよ」
笑うグレース。
「ちなみにパーティーは?」
レナータさんが聞く。
「そうだね。私とグレースさんは確定として、イリーナさん、レナータさん、アメリーさん、おにいちゃんかな」
メリッサは言った。
「お、ついに出番が来ましたね!」
そういうレナータさん。
「がんばります~」
イリーナはそう言った。
「魔法キャラのみんなはともかく、僕も行っていいの?」
僕は聞いた。
「まあ、おにいちゃんは完全に壁要員だけどね。おねえちゃんかシビラさんでも良いけど、グラップラーが一番ヒットポイント高いし」
メリッサはそう言った。
「まあ、カオリは活躍してるし良いと思うよ。それじゃ私達はここでだべってるね」
ミレーヌは言った。
「頑張って難所を突破してくれ」
シビラはそう言った。
僕達は60層に足を踏み入れた。
暗い洞窟の中。土の壁が迫る。どんよりとした音楽が流れる。容易ではないだろう。
61階へと進む。暗い……。
「うう、怖いですね……」
そういうアメリーさん。
「気を付けてくださいね……」
僕はちょっと緊張しながらも、そう言った。
「《超能力:感知》」
メリッサが超能力を使う。蜘蛛と表示された。ガサガサ、と動いている。
「う、蜘蛛だね」
さすがにちょっと驚いたらしいメリッサ。
「ええい! 《赤魔法:火炎球》!」
ドーン、と炎の球を撃ち込むグレース。焼かれ、蜘蛛は死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル56に上がった!
「問題はなさそうだね。それにしても、毎回これだと怖いね」
僕は言った。
「そうですわね……」
怖がっているアメリーさん。
「そうですか? どうってことないですけど」
全然可愛げがないレナータさん。
62階へと進んだ。暗闇の中、水の滴る音がする。
「《超能力:感知》」
メリッサが超能力を使う。しかし敵は見つからない?
「ん、敵はいないのかな?」
僕は言った。
「そんなはずはないよ。よく目をこらして……」
辺りを見回るメリッサ。
その時突然、背後から恐ろしい顔の怪物が現れた!
「きゃーーーーーーーー!」
叫ぶイリーナ。まずい!?
「……《黒魔法:暗黒の矢》」「ぐっ!? 《超能力……》」
しかしメリッサの反応も間に合わず、イリーナは闇の光線に撃たれ、ダメージを受けた。
「ひい!? 目が見えない!」
盲目状態になってしまったらしいイリーナ。
「くっ、《白魔法:治癒Ⅱ》!」
回復するアメリーさん。しかし目は見えないままのようだ。
「リッチーか。《赤魔法:閃光》!」
バシイ、と光を生み出すレナータさん。冷静だ。あたりが明るくなった。
「てえい!」
僕も前進し、攻撃をかける。バキ、と殴った。手ごたえありだ。しかし敵は壁の中へと潜っていく。
「こいつは!?」
叫ぶ僕。
「壁に入られると攻撃できないよ。すぐに出てくるから、みんな油断せず」
メリッサは言った。
「《白魔法:盲目治癒》」
アメリーさんはイリーナの目を回復させた。
「ありがとうございます~」
感謝するイリーナ。みんな落ち着いてるな。
またもや背後から登場するリッチー。僕はすぐさま向かう。
「させないよ! 《赤魔法:火炎波》!」
焼くグレース。炎の波動が敵に襲い掛かる。
「《赤魔法:火炎嵐》!」
レナータの魔術で更に焼き尽くされる敵。
「《白魔法:浄化》!」
アメリーさんのアンデット特効魔法。リッチーは大ダメージを受け、消滅した。
戦闘に勝利しました!
全員レベル58に上がった!
「ふう。まさか壁の中から襲ってくるとは、予想外だったよ」
僕は言った。
「あいつは特に危険なモンスターだからね。キャンプ」
メリッサは宣言。青い光でみんな回復する。
「結構スリルが出てきたね。ホラーゲームじゃん」
そういうグレース。
「びびっちゃって死んじゃう人も居たんだろうなあ」
レナータさんはそう言った。
「考えてみれば、そういう意味でも難しい階層なんだろうね」
僕はそう言った。
63階へと進む。みんな慎重になってきた。
「《超能力:感知》」
すぐさま辺りを調べるメリッサ。しかしやはり敵は見つからない。
「感知しても見つからない事はあるんだね」
僕は言った。
「厄介だね。あらゆる方向に気を付けて」
メリッサは忠告する。
警戒する6人。しかしどの方向にも敵は居ない。
「特に何も……わあ!?」
突然足を取られ、地面に埋まるレナータ。
「! レナータ!」
僕はその手を掴んだ。下に引きずり込まれる!
「くっ! 《超能力:精神波動》!」
メリッサの超能力が発動する。ガガガ、と決まり、敵が姿を現す。どうやら巨大なモグラのようだ。
「あら可愛い。《白魔法:治癒Ⅱ》」
そう言ってレナータを回復するアメリーさん。
「そんなに可愛くはないと思うけど……。《赤魔法:紅蓮劫火》!」
凄まじい灼熱の炎で焼き尽くすグレース。モグラは超高温で焼かれ、死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル59に上がった!
「ふう……。キャンプ」
僕は宣言した。ゆっくり休む。
「60まであとわずか。もう一階層は進みたいね」
メリッサは言った。
「難所ですが、進めていますね~」
そういうイリーナ。
そして64階へ。メリッサが感知能力を使う。
敵はゴブリン2体のようだ。
「癒しですね~。《黒魔法:毒霧》!」
毒の霧を生み出しゴブリンに食らわすイリーナ。ゴブリン2体はダメージを受け続ける。右往左往するゴブリンたち。
「《超能力:精神波動》!」
メリッサの超能力を食らい、ゴブリンは死んだ。
戦闘に勝利しました!
65階へと進んだ。更に辺りは暗くなり、ダンジョンも所々石造りになる。人の手が入っているのだろうか? まあここは塔の中だった気もするけど。
いつも通りメリッサが超能力を使うが、敵は見つからない。棺桶が一つ置いてある。
「なんだありゃ」
僕は言った。
「多分、あれの中に敵が居るという感じだね」
メリッサは言った。
果たして敵はそこから出てきた。壮年の男と言う感じの吸血鬼、ヴァンパイアだ。スーツを着ている。
「あら、お洒落な方ですわね」
そんなことを言うアメリーさん。
「油断しちゃだめだよ。強力なアンデッドだから」
そういうメリッサ。
「よし! 行くぞ!」
僕は突撃する。敵は魔術を唱える。
「……《黒魔法:毒霧》!」「《超能力:否定》!」ガキン キュウン
敵の魔術はメリッサがキャンセルした。
「とりゃあ!」
攻撃をかける僕。しかしヴァンパイアは空を飛び、逃げてしまう。これではどうしようもない。
「残念でしたね、カオリさん。《赤魔法:火炎球》!」
レナータの攻撃魔術。炎の球が命中し、敵を焼く。
「《赤魔法:火炎嵐》!」
グレースの猛烈な炎が焼く。敵は火傷を負い、ふらふらと地上に降りた。
「もらった! てえい!」
僕はジャンプして蹴りを食らわした。ヴァンパイアはダメージを受け、更に後退する。
「《超能力:精神破壊》!」
メリッサの超能力が決まり、ヴァンパイアは倒れた。
戦闘に勝利しました!
全員レベル60に上がった!
《第四の切り札》を習得した!
「やったね!」
僕は言った。
「これで大分楽になるよ。みんな、自分のスペードを確認しておいてね」
メリッサは言った。
「スペードか。何となく、切り札! って感じがするね」
僕はそう言った。
「実際そんな感じだと思うよ。80になれば最後の切り札、つまりジョーカーを覚えるけど、それは本当に最後の切り札だからね。スペードの方が、便利なのが多いんだよ」
メリッサは言った。
「へえ、そうか。《ヘルプ:スペードの確認》」
僕は宣言してみた。
あなたは グラップラー です
《第四の切り札:気の爆発》(自身強化)
「強化技か。僕もアーチャーみたいになれるかな」
僕は言った。
「さすがにあそこまでは強くならないけどね。ていうか、アーチャーは第四の切り札を覚えることでついに最終形態になるから。ボス戦ではありえないぐらい強いよ」
そういうメリッサ。
「そうなんだ? じゃあここのボスもミルヤに倒してもらうわけ?」
僕は聞いた。
「残念だけど、69階のボスは物理攻撃があまり効かないんだよね。しかも時間制限があって、一定の時間に倒せないとみんなぺしゃんこにされて死ぬよ」
そういうメリッサ。
「ひどっ。最悪じゃん!」
グレースはそう言った。
「『魔法少女絶望の壁』とか言われるこのゲーム最悪の罠の一つだね。私もそこを越えたことはないよ」
そういうレナータ。
「やっぱり魔法少女あんまり関係ないと思うんだけどなあ」
僕は言った。
66階へと進む。考えてみれば、その恐ろしい壁へももう少しだ。
「《超能力:感知》」
メリッサが感知を使う。すると、物陰から巨大なゴリラが現れた。でかい。
「《赤魔法:火炎弾》!」
魔術をぶつけるグレース。だがダメージはわずかだ。襲い掛かるゴリラ。
その拳を受け、カウンターで一撃を食らわした。
「GUUUUUUUUU……」
怒るゴリラ。
「《赤魔法:電撃》!」
バシイ、と電撃を放つレナータ。ゴリラの動きが止まる。
「《赤魔法:電撃嵐》!」
凄まじい電撃の嵐を放つグレース。ゴリラは完全に行動不能になった。
「とりゃあ!」
バキバキバキ、と容赦のない攻撃を加える僕。ぶっ倒れ、ゴリラは死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル61に上がった!
「《キャンプ》」
イリーナさんがキャンプを開いた。みんな回復する。
「順調だね。このままボス戦にまで行けるかな」
メリッサは言った。
「ええ~? しかし危険では~?」
そう聞くイリーナ。
「このパーティーで駄目ならどうやっても駄目だよ。心配しなくても、私はクリアしたことあるから大丈夫」
そういうメリッサ。
「心強いね。この先ももちろん知ってるんだよね?」
そう聞く僕。
「70層以降の事? もちろんだよ。私が倒した事無いのはラスボス最終形態だけだしね」
そういうメリッサ。
「そういえばそれも疑問なんですが~、どうして最終形態は倒せなかったんですか~?」
そう聞くイリーナ。
「ああ、まあ色々トラブルもあったけど、あいつは物理攻撃が効かないんだよね……。その事前情報が無かったから、大変無駄な戦いをしてしまったね」
そういうメリッサ。
「そうなんだ。じゃあ僕もそこでは役に立てないかな」
僕は言った。
「いやいや。グラップラーは最後まで役に立つよ。まあ壁としてだけど……。ジョーカーが凄いからね。スカイスナイパーズの時は、グラップラーが居なかったのが敗因だったかもしれないぐらいだし」
そういうメリッサ。
「そうなんだ?」
僕はそう言った。
「うん。おにいちゃんが居てくれたら、きっと大丈夫だよ」
そういうメリッサ。僕を信頼してくれているようだ。
67階へ。確実に進んでいく。
メリッサが感知を打つと、『ウォールモンスター』という敵が現れた。
「う、ついに来たか。んー、撤退しようか」
そういうメリッサ。
「どうしたの? 突然弱気になったじゃん」
そういうグレース。
「そりゃ弱気にもなるよ。この階層最悪のモンスターだしね。めちゃくちゃ硬いから、消耗が激しいんだよ。倒しても何も良い事はないし。ここは撤退すべきだと思うね」
メリッサは言った。
「まあメリッサがそういうなら~」
イリーナは同意した。
「私もそれで良いと思いますが」
同意するアメリーさん。
「メリッサに反対する気は無いよ。グレースとレナータもそれでいい?」
僕は聞いた。
「ま、そういうことなら仕方ないね。私も強力な魔法は残しておきたいしさ」
そういうグレース。
「無理は禁物というわけですね。実際悪名高いモンスターですしね、こいつ」
レナータはそう言った。
「それじゃあ、《超能力:帰還》」
メリッサが超能力を使い、僕達は街へ帰還した。