第七十二話 桃花と一美
二学期が始まった。
夏休みは終わってしまった……。あいつは帰ってきたけど、また去ってしまった。結局、私はどうしたかったんだろう? 自分は臆病者かもしれない。
「やあ、桃花」
一美が話しかけてきた。
「やあ、一美。そういやバレーボールの試合だったんだっけ? どうだったの?」
私は聞いてみた。
「そういや言ってなかったっけ。インターハイ出場したよ」
そういう一美。
「マジ!? 凄いじゃん!」
驚く私。
「ふふん、凄いでしょ。まあ一回戦負けだったけどね……」
そういう一美。
「それでも大したものだよ。選手としてやっていけるんじゃ?」
私は聞いた。
「んー、どうかな。それで食べて行くのは難しいと思うけどね……。まあ、楽しかったよ」
一美はそう言った。
「そっか。充実した夏だったんだな」
私はそう言った。
「桃花は何かなかったの? 薫くんとも遊んでたみたいだけどさ」
そういう一美。
「何も無いよ。大体この島じゃ、あんまりイベントとかないだろ」
私は言った。
「あはは、そうだよね。私も島を出て行くべきかなあ」
そんなことを言う一美。
「一美の家はお金持ちなんだし、それも良いんじゃ? 薫にだって会いたいだろ」
私はそう言った。
「そりゃあね。でも桃花だって、薫くんには会いたいんじゃ?」
そういう一美。
確かにそうかもしれない。……。
「私には家族も居るし、貧乏だしな。そもそも漁師だし……。引っ越すにしても海沿いでないと無理だぞ」
私は言った。
「そっか。まあうちも漁師だけどね。秋奈が本土に行くなら、私は残らないといけないかもね」
一美はそう言った。
「薫、どうしてるかな? まあゲームだと会えるんだけどさ」
私は言った。
「そうだね。でもゲームだと、あまりリアルの話はできないよね」
一美は言った。
「そうだな。……、また、遠くなってしまったな」
私はそう言った。




