第七話 朝市
次の日の朝。
チュンチュン…… と鳥の声が響く。僕は大分早くに起きたようだ。まだ6時ぐらいだ。
「うーん……」
体を伸ばす。調子は良さそうだ。
「散歩でも行くかな」
春風家のみんなはまだ寝ているだろう。僕は靴を履き、外へ出た。
爽やかな涼しさが広がる。夏でも島の朝は涼しい。
こうやって朝の散歩をするのは好きだった。のんびりとした時間が流れる。まるでこの世界に自分だけが住んでいるようだ。
「ふわあ……」
欠伸をして、街の中心部へ向かった。
大した島ではないが、まあ一通りのものは揃っている。スーパーに診療所、銀行とか。
中央の広場ではたまに朝市が開かれている。僕はそこへと向かった。
するとそこには、準備をしている女の子が居た。あれは、桃花だ。
とても綺麗になっていたので、びっくりしてしまった。
「おはよう」
僕は声をかけた。
「ん? ああ、薫? 久しぶり……あ、でも昨日ゲームで会ったよね」
笑う桃花。とても可愛い。髪型もお洒落だ。
「そういえばそうだね。考えてみりゃ、ゲームではいつでも会えるよね」
僕はそう言った。
「冗談じゃないよ。実際に会わなきゃ意味無いじゃん」
桃花はそう言った。
桃花は、炭火を準備していた。何か焼くようだ。
「手伝おうか?」
僕は聞いた。
「ありがたいね。じゃ、あそこの荷物を持ってきてよ」
桃花はそう言った。
僕は仕事を手伝う。桃花の家は両親揃って漁師だ。子供が多く、生活は楽ではないはずだ。みんなどうしてるかな。
「みんな元気にしてる?」
僕は聞いた。
「もちろん。また遊びに来なよ。みんな喜ぶからさ」
桃花はそう言った。
準備はできたようだ。桃花は炭火に火をつけた。
「何か焼くの?」
僕は聞いた。
「ご馳走してやるよ。あ、でもお金は払えよ!」
そういう桃花。ちゃっかりしてるな。
桃花は適当に網に貝を並べる。ツブ貝やカキ、アワビも焼いている。
「豪華じゃん」
僕は言った。
「へへ、そりゃもう。最高においしいよ」
桃花は言った。
良い感じに焼けたので、食べ始めた。実際最高に美味しい。
「おいしい! こりゃ最高だわ」
僕はそう言った。
「そりゃそうだろ」
桃花はそう言って食べていた。
僕はお金を払おうとしたが、匂いにつられたのか、横から女の子たちが寄ってきた。
「桃花、何焼いてるの? 私も頂戴」
「……わたしも~ おいしそう~」
頭の良さそうな女の子と不思議な女の子。いつも桃花の側に居る、向日葵さんとほたるさんだ。
「やあ、久しぶりだね」
僕はあいさつした。
「あ、薫じゃん。島に帰ってたの?」
「あ~、薫くんだ~。久しぶり~~」
やたらのんびりしゃべるほたるさん。眠くなりそうだ。
「あんたらも来てたのか。食べても良いけど、ちゃんとお金を払ってね」
そういう桃花。
「桃花ったら厳しいんだから……。薫君と食事出来て嬉しいんじゃないの?」
向日葵さんはそう言った。
「は、はあ!? そ、そんなことはないし!」
慌てる桃花。
「え~嘘~。桃花ちゃん薫くんと仲良いじゃん~」
そういうほたるさん。
「そ、そんなのは昔の事だし……。ああ、そういえばこいつ、『マジックガールズ』をやってたぞ」
そういう桃花。
「え!? そうなんだ。薫くん、そんな趣味が……!」
そういう向日葵さん。
「いや、そんな趣味は無いから。春風の二人がやれって言うからさ」
僕は言った。
「あはは~、そうなんだ~。てっきり薫くんが変態になったかと~」
さらっと酷いことを言うほたるさん。
「賞金も出るみたいだし、やっても良いけどね。そういえば二人はやってるの?」
そう聞く僕。
「もちろんだよ。『ソニックレイジ』は私達のチームだしね」
向日葵さんは言った。
「薫くんが入ってくれるなら心強いね~。私達弱小チームだからさ~」
そういうほたるさん。
「あたしたちはこの島のゲーセンでやってるんだよ。VRゲームの機器は高いからな。春風家の連中は持ってるんだろうけどさ」
そういう桃花。
「なるほどね。懐かしいな、行ってみようかな」
僕は言った。
「良いんじゃないか? ま、大したゲームは無いけどな」
桃花は言った。
「古いゲームばっかりだよね。寂れまくってるし……」
向日葵さんは言った。
「だよね~。まあVRゲームの機器があればネットで色々できるけどね~」
ほたるさんはそう言った。
僕はお金を桃花に払った。
「それじゃあ、僕はそろそろ帰るよ。ありがとうね」
僕はそう言った。
「じゃあな」「さよなら」「さよなら~」
三人に言われて、僕はそこを去って行った。