第六十七話 最後の決闘 スカイスナイパーズ VS ソニックレイジ
その日も僕は、ゲーム世界に潜った。
「や、カオリか」
城に行くと、グレースが居た。相変わらず、魔術師っぽい服装をしている。
「どうも。スカイスナイパーズは?」
僕は聞いた。
「決闘を挑んできたよ。今日の昼に戦うんだって」
グレースは言った。
「そっか。まあ、そうなるよね」
僕は天を仰いだ。
「カオリは怖くないの?」
グレースは聞いた。
「ん? 何が?」
僕は聞き返した。
「戦うことだよ。誰かを傷つけるかもしれないじゃん。それって、良くない事だと思わない?」
そう聞くグレース。
「そうだね。でも、黙っていたらもっと傷つく人もいるかもしれない。誰かを守るための力こそ正しい力だと思うよ」
僕はそう言った。
「正しい力、か……。そうかもね。薫は優しいね」
グレースはそう言った。
「向日葵さんだって、優しいからそんなことを言うんですよ」
僕はそう言った。
「こんにちは~、カオリさん」「やあ、おにいちゃん」「どうも、カオリ」
イリーナ、メリッサ、ミレーヌが挨拶してくれた。
「どうも。決闘の時刻は?」
僕は聞いた。
「確か2時だよね」
おねえちゃんはそう言った。
「そうそう。結局どういう風に戦うんだっけ?」
グレースは聞いた。
「んー、難しい所だね。あのガンナー相手に小手先の技が通用するとは思えないよ」
メリッサは言った。
「正々堂々、正面から戦うしかないだろうな」
僕はそう言った。
「そうだね。私も頑張るよ」
ミレーヌはそう言った。
「あれ、カオリもミレーヌもここに居たの? シビラは訓練場に居るよ」
そういうガリーナ。僕達は訓練場に向かった。
「たあ!」
ドスドス、とサンドバッグに槍を突き出すシビラ。
「シビラ、精が出るね」
僕はそう言った。
「ああ、カオリか。いやいや、これからいよいよスカイスナイパーズとの戦いが始まるんだよ」
そういうシビラ。
「そうだね。私も訓練しようかな」
ミレーヌは言った。
「ただちょっと気になってさ。今回、私達『ガンナー』と戦うじゃないか。しかも超強いみたいじゃん」
そういうシビラ。
「そうだね。それが?」
メリッサは聞いた。
「いや、どう戦えばいいかと思ってさ。どう考えても、銃で滅多撃ちにされて負けるイメージしかわかないんだけど」
そういうシビラ。
「確かにそうだよね。どうするの?」
僕も聞いた。
「んー、私が前進するという手もあるけど、多分殴られて死ぬし……。やはり『防御技』で防ぐしかないね」
メリッサは言った。
「いやいや、無理でしょ。相手は銃なんだよ!」
叫ぶミレーヌ。
「現実では無理だけど、このゲームだと不可能ではないよ。ちょうどいいじゃん、ガリーナ、適当に撃ってみてよ。この三人を」
恐ろしい事を言うメリッサ。
「良いけど、良いの?」
拳銃を構えるガリーナ。
「ここだと安全だよ。訓練場だしね。タイミングを合わせる練習をしといた方が良いよ。グラップラー、ソードマスター、ランサーはそれぞれ防御技が使えるしね。まあ総合的に見ると、グラップラーが防御技は一番充実してるんだけどさ」
メリッサは言った。
「銃弾を防ぐ防御技か……。現実では絶対に無理だね」
僕は構えた。
「とりゃー!」
ガキュンキュン! と撃つガリーナ。
僕は防ごうとするが、全然遅かった。銃弾を食らう。
「うぐ……」
ダメージは受けたが、すぐに回復する。ここだと問題ないようだ。
「もう一度お願い」
僕は言った。
「オッケー。たあ!」
バキューン! と撃ってきた。
「てえい!」
ガキン、と腕で弾き、銃弾を防いだ。
「ナイスだね、カオリ。んじゃ私にも撃ってきてよ」
そういうミレーヌ。
「良いよ。んじゃ三人に適当に撃つからさ、頑張って防いでよ」
そういうガリーナ。
「分かった。頼むぞガリーナ」
シビラはそう言った。
ダダダダ、と連射するガリーナ。ミレーヌは防ぎそこねたが、シビラと僕は上手く防いだ。
「あう、難しいね」
ミレーヌはそう言った。
「練習すれば何とかなりそうだけどな」
シビラは言った。
「実戦まであと少ししかないし、この感覚には慣れておきたいね」
僕は言った。
※決闘30分前になりました。控室へ移動します※
僕達は控室へワープした。
「ふう、もう訓練はできないね」
僕は言った。
「そうだね。後は戦術の確認か……」
そういうメリッサ。
「いかがなさるので?」
アメリーさんが聞いた。
「まあ何とも言えないね。難敵だしさ。ブリュンヒルデを序盤で仕留めれば勝てるだろうけど、さすがにそれは欲張り過ぎだと思うし」
そういうメリッサ。
「とはいえ、ガンナーはそんなにヒットポイント高くないから、上手く行けば仕留めることはできるはずだけどね」
グレースは言った。
「敵もそれは許してはくれないだろうけどな。ただこちらは前衛三人いるわけだし、何とかガンナーを仕留めたいな。ただあいつ、格闘戦も強いみたいなんだよな……」
そういうシビラ。
「僕としても、戦ってみたい相手ではあるけどね。何とか倒したいよ」
僕は言った。
「いずれにせよ、カオリでないと勝てないかもね。私達は敵の前衛を抑えるか、もしくは敵の後衛に飛び込むか、かな」
ミレーヌは言った。
「何とか敵の後衛を仕留められれば勝ちパターンだけどね。ただそれはかなり危険かな。逆のパターンもありえるから」
メリッサは言った。
「結局、敵の前衛を何とかしないと勝てない。そしてあのガンナーをどうするか、か」
シビラは言った。
「話が戻っちゃったね。まあ、それだけあのガンナーがこの戦いでは重要、ってことだね」
僕はそう言った。
※決闘5分前になりました。決闘場にワープします※
時間は過ぎて行く。決闘の時間が近づく。
最後の決闘だ。手に汗握る。
スカイスナイパーズ
ヒーラー、メイガス、テレパス
グラップラー、ソードマスター、ガンナー
ソニックレイジ
グラップラー、ソードマスター、ランサー
テレパス、ヒーラー、メイガス
メンバーが発表された。もう逃げ場はない。ほぼ同じようなメンバーだ。
「決着の時だな。楽しみにしてたよ」
ブリュンヒルデはそう言った。
「正々堂々、決着を付けよう」
僕は言った。
「もちろんだ」
ブリュンヒルデはそう言った。
「まさかあなたと戦うことになるとは、思ってませんでしたけどね」
メリッサは言った。
「そうだな。まあ、こういうこともあるさ」
ブリュンヒルデはそう言った。
構えるスカイスナイパーズの6人。みんな本気モードだ。手加減は無いだろう。
こちらも構える。
あくまでゲームだけど、この戦いは真剣だ。まあお金がかかってるのもあるけど……。でもそういう事じゃなくて、本気で、全力を尽くして戦う。その価値はきっと、お金では測れないだろう。
「みんな、油断するなよ」
ブリュンヒルデはそう言った。
「はい、リーダー」「もちろんです」
答えるスカイスナイパーズのメンバーたち。
「私も何かかっこいいこと言った方が良いかな」
そんなことを言うシビラ。
「いやいや。そこは真面目にしなよ」
文句を言うミレーヌ。
「まあ、シビラらしいかもね」
僕は言った。
※戦闘5秒前です※
※4※
※3※
※2※
※1※
※はじめ!※
ついに最後の決闘が始まった。泣いても笑っても決勝戦だ。
「前進します!」
敵のグラップラーが突撃する。ソードマスターが続く。ブリュンヒルデは銃を構えた。
ガキューン、とこちらに撃ってくる。
「くっ!」
防ごうとしたが、間に合わない。僕はダメージを受ける。
「《白魔法:治癒》!」
回復してくれるアメリーさん。
「たああ!」
攻撃する敵グラップラー。その攻撃を防ぎ、顔面に拳の一撃を加えた。
「うあ!」
後退するグラップラー。そこにミレーヌが襲い掛かる。
「《剣技:豪壮なる刺突『蘭』》!」
凄まじい刺突が決まり、のけぞるグラップラー。
「《剣技:痛みを知れ『薔薇』》!」「くう」
グラップラーはその三連刺突攻撃をかわし、逃亡する。
「《白魔法:治癒》」
回復する敵ヒーラー。グラップラーは回復した。
睨み合う12人。お互い様子見だ。妨害魔法も使っていない。その隙を突かれる可能性があるからだ。
「ふう……」
僕はため息をついた。敵も息を上げている。
「前進する! 行くぞ!」
シビラは前進した。敵ガンナー、ブリュンヒルデへと向かう。
「上等! 食らえ!」
ダキューン! とスナイパーライフルを放つブリュンヒルデ。だがシビラは槍を回し、その攻撃を弾いた。
「何!?」
驚くブリュンヒルデ。そこにシビラは襲い掛かる。
「たあ! 《槍技:流星槍》!」
突撃するシビラ。ブリュンヒルデは避け損ない、その攻撃を食らった。
「ぐあっ……」
撤退するブリュンヒルデ。
「《白魔法:治癒Ⅲ》」「《超能力:否定》!」「《超能力:否定》!」「《青魔法:魔法解除》」「《青魔法:魔法除去》!」ガキン キュウンキュウンキュウンキュウン
回復魔法は成功し、ブリュンヒルデは回復した。
「すまない」
謝るブリュンヒルデ。
「リーダー。頑張ってください!」
応援するヒーラー。
「大した連携だね。これは勝つの難しいよ」
僕は言った。
「妨害魔法の数も拮抗してるしね。逆に言えば、ヒーラーの回復は通るだろうけど……」
そういうメリッサ。
「でも魔力はいずれ尽きます。ここは長期戦も覚悟しましょう」
アメリーさんは言った。
「そうだね。無理は禁物だよ」
グレースは言った。
陣形を整える両チーム。前衛と後衛が分かれる。ブリュンヒルデは中間点に立つ。
「《赤魔法:火炎球》!」「! 《超能力:否定》!」ガキン キュウン
グレースの魔術はキャンセルされた。
「《超能力:精神波動》!」「《超能力:忘却》!」ガキン キュウン
敵のテレパスの超能力はメリッサにキャンセルされた。
「魔術はほぼ通用しないですね」
アメリーさんが言った。
「そうだね。やるしかないか……!」
僕は前進した。
「なめるな!」
ダキューン! と撃ってくるブリュンヒルデ。僕は受けようとするが、失敗する。ダメージを受けた。
「《白魔法:治癒》」「《超能力:否定》!」ガキン キュウン
回復魔法は妨害された。
「もらった! 食らえ!」
攻勢をかけてくる敵のソードマスター。
「《剣技:一刀両断『桜』》!」「くっ」
凄まじい斬撃。僕はダメージを受けた。
「もらった! 《剣技:一刀両断『桜』》!」
更に斬撃。僕のヒットポイントが危険水域に達する。
「終わりだ! 《剣技:一刀両断『桜』》!」
凄まじい斬撃。だが僕はそれをかわした。
「はああ!」
そこから、後ろ回し蹴りを放つ。胸に命中し、吹っ飛ぶ相手。更に蹴りを加える。
「うへえ」
混乱する相手。逃亡した。
「《白魔法:治癒Ⅲ》」「《青魔法:魔法解除》!」ガキン キュウン
敵ヒーラーの回復魔法はグレースがキャンセルした。
もう回復は許されそうにない。僕は限界が近い。相手のソードマスターもだ。危うい状態になった。
「《赤魔法:雷撃》!」「《超能力:否定》!」「《超能力:別れ》!」「《青魔法:魔法消去》!」ガキン キュウンキュウンキュウン
敵メイガスの魔術は何とか味方がキャンセルしてくれた。
「《白魔法:治癒Ⅲ》!」
アメリーさんの回復魔法が発動する。僕は回復し、持ち直した。
「よし! 突撃!」
ミレーヌが突撃する。守る敵のソードマスター。
「《剣技:流麗なる一撃『菊花』》!」「うっ」
ズバ! と横なぎ斬撃が決まる。
「もらった! 《剣技:黄泉の旅路へ『彼岸花』》!」
横に回転しての横斬撃。命中し、ソードマスターはついに倒れた。
「ちっ! よくも!」
ライフルを捨て、拳銃で撃つブリュンヒルデ。しかしおねえちゃんはその攻撃を剣で弾く。
「《赤魔法:天罰》!」「《超能力:否定》!」ガキン キュウン
グレースの強力な魔術はキャンセルされた。
「《白魔法:月光弾》!」
敵ヒーラーの攻撃魔術。アメリーさんに命中する。
「《白魔法:治癒》」
自分を回復するアメリーさん。問題ない。
「くらえ!」
ブリュンヒルデに接近するミレーヌ。ブリュンヒルデは銃を捨て、剣を手に取った。
「《剣技:華麗なる一撃『撫子』》!」「《剣技:雨に濡れよ『菖蒲』》!」
ガキイン、と二つの剣がぶつかる。火花が散る。
「《剣技:一刀両断『桜』》!」「《剣技:一刀両断『桜』》!」
お互いに上段からの一撃。しかし、ソードマスターの剣攻撃は通常の2倍の威力。ここでジョブの差が出て、ブリュンヒルデは剣を砕かれ、斬撃を食らった。
「ぐわっ!? くそう……」
大ダメージを受け、下がるブリュンヒルデ。ミレーヌを妨害するように、敵のグラップラーが間に入る。
「《白魔法:治癒Ⅲ》!」「《超能力:否定》!」「《超能力:否定》!」ガキン キュウンキュウン
ブリュンヒルデは回復した。
まだ戦いは、分からない。ブリュンヒルデは更に拳銃を取り出し、撃つ。狙いはシビラ。しかしシビラはそれを槍で弾く。
「くそ、こいつら銃対策を立てて来たか……」
後退するブリュンヒルデ。
「《白魔法:星光波》!」
強力な攻撃魔術を放つアメリーさん。
「くっ……。《超能力:否定》!」ガキン キュウン
アメリーさんの魔術はキャンセルされた。
「《超能力:精神波動》!」「《青魔法:対抗魔術》」ガキン キュウン
メリッサの超能力はキャンセルされた。
「《赤魔法:超新星爆発》!」
最強魔術を詠唱するグレース。
「《超能力:否定》!」「《超能力:否定》」「くっ……《青魔法:魔法消」ガキン キュウンキュウン
敵魔術師はキャンセル魔法を詠唱したが、一歩遅れた。
ドーン、と大爆発が起き、スカイスナイパーズは壊滅した。
決闘は、ソニックレイジの勝利になった。