第五十九話 閑散たる海の家
夏もいよいよ終焉しようとしていた。
涼しい風も吹いて来た。ぼくの夏休みもそろそろ終わりだ。とか言いつつ、割と適当に日々を過ごしている気もするけど。
海で泳ぐ人など居ない。いたら危険である。クラゲ祭りと化している。下手すりゃ死ぬんじゃないか? まあ泳ぐのは論外だ。
それなのに何故か、海の家をやってる人が居た。馬鹿なんじゃないか?
しかしやっているのは新聞部のメンバーだった。部長の浅見優奈ちゃんと、篠崎由美ちゃん。それから坂上萌恵ちゃん。まあゲームではいつも会ってるけど。カトリーナ、ミルヤ、ガリーナの三人だ。
「何やってるの? 三人共」
僕は言った。
「お、いらっしゃいませ! 何になさいますか?」
由美ちゃんがそう言った。
「何でも良いけどさ。今海の家とかありえないでしょ。誰が来るの?」
僕はそう言ってやった。
「しゃーないやんか。バイトして儲けようと思ったんやけど、客がこーへんのや……」
そういう優奈ちゃん。
「まあ無理がありすぎだよね。今のどーでもいい時期だからこそ、私達を雇ってくれたのかもしれないけどさ」
そういう坂上さん、こと萌恵ちゃん。
「まあ労働するのは良い事かもしれんけどね。それじゃあ、ホットドッグでももらおうかな」
僕は言った。
「毎度~」
優奈ちゃんはそう言って、ホットドッグを作ってくれる。
小型のテレビが置いてあり、ドラマがやっている。よくわからない理由で人が殺される愛憎に満ちたどーでもいい刑事ものドラマだ。
「はいどうぞ。500円やで。ドリンクはサービスしたるわ」
そう言ってホットドッグとコーラを出してくれる優奈ちゃん。
「ありがとう」
それはまあ割と嬉しい。僕は冷えたシュワシュワのコーラと共にホットドッグを食べた。ウィンナーがパリッとしていて結構美味しい。
「意外と美味しいね」
正直に言う僕。
「優奈ちゃん、料理上手いんだよね。将来は良いお嫁さんになれるよ」
萌恵ちゃんはそう言った。
「ウチは世界をまたにかけるジャーナリストになるんやで。お嫁さんみたいな枠にはまった人間にはならんわ」
そういう優奈ちゃん。
「あはは、ジャーナリストか。良い夢だね」
僕はそう言った。
「新聞にはなんて書こうかな。お兄さんにセクハラされてマジで困ってます! 助けてーとでも書こうかな」
恐ろしい事を言う優奈ちゃん。
「やめてよ。殺されるから」
それはマジでまずい。
「ふふ、でもお兄さんも色んな女の子と仲良いよね」
そういう萌恵ちゃん。
「確かに……」
由美ちゃんはそう言った。