第五話 初陣
「さて、そろそろダンジョンに行こうぜ。どうせそんなに長く遊ぶつもりは無いんだろ?」
シビラはそう言った。
「まあ僕はそれでも良いけど……。なんか準備とか必要ないの?」
僕は聞いた。
「いらねーだろ。その格好だとグラップラーなんでしょ?」
シビラは言った。
「まあ、そうだけど……」
僕は秋奈ちゃんとお姉ちゃんを見た。
「んー、まあ、要らないよね。ていうか、私達が片付ければ良いんだしさ」
おねえちゃんはそう言った。
「それにしても、4人で行くなら、まあ、4階までだね」
秋奈ちゃんはそう言った。
「……まあ、そうだな」
シビラは同意する。
「4階? 5階以降は危ないの?」
僕は聞いた。
「かなり危ないね。このゲームでは、5階以降は難度がぐっと上がるんだよ。9階にはボスが居るし……」
お姉ちゃんはそう話した。
この街の中央には、巨大な緑色の塔がそびえたっている。てっぺんは見えない。
「あの塔に登れば良いんだね」
僕はそう言った。
「あの塔の100階にラスボスが居るんだとさ。私は見た事無いけどな」
シビラはそう言って、塔へと向かった。
僕達は塔へと向かった。その入り口が大きく開いている。見ると、突入していく女の子たちはたくさんいた。
「さ、行こうか」
おねえちゃんが先導し、僕達はいよいよ、ダンジョンへと入った。
※しばらくお待ちください……※
しばらくすると、ダンジョンが姿を見せた。黒いダンジョンのようだ。とはいえ、一階はプレイヤーの女の子が多く、談笑しているようで、あまり緊張感はない。
「あんまり危険な場所って感じはしないね」
僕はそう言った。
「そりゃそうだよ、おにいちゃん。一階なんて文字通り遊び場所みたいなものだしね」
秋奈ちゃんはそう言った。
すると、兎が一匹、こちらに向かってきた。音楽が変わり、戦闘に入った。
「ちょうどいいね。カオリちゃん、その力見せる時だよ! さあ!」
そんな感じで僕を戦わせようとするおねえちゃん。
「あーうん。そうだね。殴れば良いのかな?」
僕は聞いた。
「そりゃそうだろ。お前は格闘家なんだから」
呆れたように言うシビラ。
兎はちょこちょこと歩いてくる。ぴょーんとジャンプしてきた。僕は油断していたのか、その攻撃を食らってしまう。バシン! とエフェクトが表示され、音が鳴り、ダメージを受けたようだ。
「ちょっとおにいちゃん! 何やってるの! ウサギに殴られるなんて!」
怒る秋奈ちゃん。
「ごめんごめん。何か調子狂うからさ……」
僕はそう言って、構える。
「はあっ!」
割と全力で蹴りを放った。バシン! と兎に衝撃が伝わり、即死したようだ。
戦いに勝利しました。経験値3、ジェニー3を得た。
《拳技:キック》を習得しました。
「おや、何か技を覚えたみたいだけど」
僕はそう言った。
「ああ、何か変わった動きをすると技を覚えるんだよ」
シビラは説明してくれた。
そのまま僕達は2階へと向かった。ぐっと人が少なくなる。
「ずいぶん静かになったね」
僕はそう言った。
「大抵は一階で稼いでいる場合が多いからね。安全だし……。このあたりでダメージを受けすぎると危険だからね」
秋奈ちゃんはそう言った。
今度はネズミが二体やってきた。
「よし、私に任せなよ」
「あたしが仕留めてやる」
ミレーヌ、シビラの二人が前線に立った。
「良いの? 僕のレベルが上がらないんじゃ?」
「ああ、それは問題ないよ。パーティーに居れば経験値は入るからね」
メリッサが僕の疑問に答える。
襲い掛かる2体のネズミ。しかしおねえちゃんは余裕でかわす。
「はあっ!」
ズバ! と短剣で斬られ、ネズミはすぐに絶命した。
「てい!」
ドス! と槍に突かれるネズミ。こちらもあっという間にゲージが0になり、死んだ。
戦いに勝利しました。
カオリはレベルが2になった!
「お、レベルアップしたね。何か申し訳ないなあ」
僕はそう言った。
「構わないよ。まずはレベルを上げておかないと危ないしね」
おねえちゃんは言った。
「武器を持ってないってのもあるしな。グラップラーなんて大変だと思うんだけど」
桃花はそう言う。
「攻撃速度が速いっていう利点はあるけどね。おにいちゃんは格闘技の心得もあるんだし、色々とやってみると良いよ」
秋奈ちゃんはそう言った。
「そうだね」
僕はそう言った。
3階に進む。すると、イノシシが現れた。
「む、面倒な相手だね。シビラ、ここは任せるよ」
おねえちゃんは言った。
「そうだな……」
シビラが槍を構える。
「良かったら、戦わせてくれないかな?」
僕は言った。
「危険だと思うけど……」
おねえちゃんは忠告する。
「勘を取り戻したいんだ。まあ、イノシシと戦うなんて現実じゃありえないけどね」
僕はそう言って笑った。
「薫がそれでいいなら良いんじゃないか?」
シビラはそう言って距離を取る。
「気を付けてね……」
心配そうにするおねえちゃん。
イノシシがこちらを見て威嚇。その後、突撃してきた。
ドドドドドド!
「あ、危ない!」
叫ぶ秋奈ちゃん。
「ふっ!」
僕は拳を繰り出す。しかし突撃を食らい、吹っ飛ばされた。
バキイ! と嫌な音がする。
「ぐうっ!」
かなりのダメージを受けてしまった。まずいか……!?
「やっぱり駄目だよ! 援護を!」
叫ぶおねえちゃん。しかしイノシシは容赦なく突撃してくる。
ドドドドドド!
「くう!」
何とかかわす僕。しかし態勢を崩してしまう。
「《超能力:動くな》!」
秋奈ちゃんが超能力を使った。イノシシの動きが止まる。
「はあ!」
バキイ! と僕の蹴りが決まる。更にシビラが槍を突き刺し、おねえちゃんが剣で切り裂いた。
「グルゥ……」
イノシシは死んだ。
戦いに勝利しました。
カオリはレベル5になった!
「ふう……。なかなか上手くはいかないね」
僕は素直にそう言った。
「ダメージが大きいね。撤退しようか」
おねえちゃんがそう言う。
「そうだな。さ、帰ろう」
桃花もそう言った。
「それじゃあ……。《超能力:帰還》」
秋奈ちゃんの超能力で時空が捻じ曲がり、僕達は街へと帰還した……。