第四話 始まりの街
穏やかな音楽が流れる。
日が注ぎ、緑があふれる。噴水の広場では、女の子二人がだべっていた。
「へえ、ここが……」
僕はそうつぶやいた。横には赤い髪の女性と、黄色い髪の少女。お姉ちゃんと秋奈ちゃんのようだ。
「ようこそ、薫くん……。じゃなくて、カオリちゃんだね」
お姉ちゃんはそう言って笑った。あまり現実と変わらないようだ。
「ようこそ、おにいちゃん」
秋奈ちゃんはそう言った。
「そういえば、二人はなんて呼べばいいの?」
僕はそう聞いた。
「ああ、私はミレーヌ、秋奈はメリッサだっけか。まあ、何て呼んでも良いけどね」
お姉ちゃんはそう言った。
二人は地面を滑るように移動する。足に何か機械が付いているようだ。
「それは?」
僕は聞いた。
「『スライダー』だね。カオリにも付いてるから、すぐに滑れるよ」
お姉ちゃんは言った。
「へえ、そうなんだ」
僕も何となく地面を滑ってみた。できるようだ。
「とりあえず、カフェにでも行こうよ」
秋奈ちゃんは、そう言った。
カフェに入ると、穏やかなジャズが流れる。とってもおしゃれな雰囲気だ。全体的にお洒落な感じのゲームっぽい。
「よくできてるね、このゲーム。ていうか何のゲームなの?」
僕は聞いた。
「一応RPGだよ。MMORPGだね。あの塔のてっぺんに居る悪い奴を倒せばクリアなんだよ」
お姉ちゃんはそう言った。
「へえ、そうなのか」
僕はそう答えた。
「いらっしゃいませー」
カフェに入ると、可愛いメイドさんが迎えてくれた。カウンターが大量にある。
「なんだこれ、何が食べられるの?」
僕は聞いた。
「何でも食べられるよ」
秋奈ちゃんはそう言った。
「……は? いや、無理でしょ」
僕は言った。
「あながち嘘でも無いよ。世界中のあらゆる料理が網羅されてるからね」
信じ難い事を言うお姉ちゃん。
「マジか……。そりゃ凄いな」
僕は素直に驚いた。
実際、あらゆる料理が用意されているようだ。カウンターは国ごとになっており、日本料理はもちろん、中華料理やフランス料理、アフリカもアメリカも、何でもありのようだ。
「まあ料理はいいや。ちょっとコーヒーでも飲もうかな。カフェだし」
僕はそう言った。
「そうだね。じゃ、カプチーノ3つでも取って来るよ」
秋奈ちゃんはそう言って、走って行った。
僕はお姉ちゃんと一緒に座った。秋奈ちゃんを待つ。
「ふふ、こうしてるとデートみたいだね」
笑うお姉ちゃん。
「僕が女の子になってるんだけど……」
苦笑する僕。
その時、何かヤンキーっぽい女性が話しかけてきた。
「よ、ミレーヌ。久しぶりじゃん」
長い真紅の髪。大きな槍を背中に担いでいる。
「ああ、『シビラ』か。確かに、ここでは久しぶりだね」
ミレーヌはそう言った。
「はは、そうだね。ところで、こいつは? 見ない顔だけど」
シビラはそう聞いた。
「ぶっちゃけ薫くんだよ。知ってるでしょ?」
リアルバレするお姉ちゃん。
「ええ!? そうなのか。ていうか、何でこんなゲームやってんだよ!」
怒るシビラ。
「ていうか誰? そんなリアル個人情報をばらされると僕も困るんだけど……」
混乱する僕。
「ああ、桃花だよ。知ってるでしょ?」
お姉ちゃんはそう言った。
長嶋桃花。幼馴染というか、腐れ縁というか、まあ近所にいる悪ガキ的な女の子だ。確かによく知っている。ていうか、よく男の子とつるんでた気もするし。
「なんだ桃花か。そんな可愛い顔してるとわからないじゃん」
僕は言った。
「なんだそりゃ。まるで私が可愛くないみたいじゃないか! クソ、従妹が可愛いからって調子に乗りやがって……。島の男たちに言いつけてやるからな!」
怒る桃花。まあ冗談で言ってるんだろうけど。
「桃花もこのゲームやってたのか。そんなに面白いゲームなの?」
僕は聞いた。
「シビラと呼べよ。まあ、面白いゲームではあるよ。でも今はクリアすると100万円が貰えるんだぞ! 当然ガチでやるに決まってるだろ。お前もそのつもりじゃないの?」
シビラはそう言った。
「そういやそんなこと言ってたね。それってどういう……」
僕はそう言い終わる前に、秋奈ちゃんが戻ってきた。
「はいカプチーノ3つ。あれ? 桃花おねえちゃんも居たんだね」
秋奈ちゃんはそう言った。
「秋奈か。お前は結構良い所まで行ったんだって?」
そう聞く桃花。
「まあ、ラスボスとは戦ったからね。あと少しだったんだけど……」
そういう秋奈ちゃん。コーヒーをもらう。
「へえ? じゃあ百万円まであと少しだったわけ?」
僕はそう聞いた。
「いや、あれはまだプレイベントで、賞金は出なかったけどね。あの『スカイスナイパーズ』は結構強力なクラスだったし」
秋奈ちゃんはそう言った。
「クラスって?」
僕は聞いた。
「このゲームでは、クラスってのを組むんだよ。まあギルドとかいうのと同じ……、学校のクラスと見ても良いな。私は『ソニックレイジ』っていうクラスを組んでるぞ」
桃花はそう言った。
「なるほどね。それじゃあ良かったら入れてくれないか」
僕はそう言った。
「良いよ。まだ三人しかいないしね。でも春風の二人はそれで良いの?」
桃花は聞いた。
「私は良いよ。秋奈は?」
お姉ちゃんはそう言った。
「まあ良いよ。あんまり弱かったら乗り換えるけどね」
秋奈ちゃんは言った。
「薄情な奴だな……。まあ、お前が入ってくれるのは心強いけど」
桃花は言った。
※クラス『ソニックレイジ』のリーダー、シビラに誘われています※
※加入しますか?※
→はい
いいえ
※カオリはソニックレイジに加入しました※
※ミレーヌはソニックレイジに加入しました※
※メリッサはソニックレイジに加入しました※
「ようこそ、ソニックレイジへ。まあ、他の仲間はいずれ紹介するよ」
シビラはそう言った。