第四十七話 先行者
この日もまた、ゲーム世界に入った。
城の食堂に行くと、グレースが居た。ローブを着て、いかにも魔術師と言う感じ。正統派魔法少女だ。まあ正当も何も、現実にそんなものは存在しないかもしれないけど。
「やあカオリ、メリッサ。ミレーヌは?」
そう聞くグレース。
「部活だよ」
僕は言った。
「そっか。実はちょっと変わったことが起こってさ」
そういうグレース。
「何かあったんですか?」
そう聞くメリッサ。
「実は50階層に到達したクラスが現れたんだ」
そういうグレース。
「! そうですか。ヴォルテックス? それともスカイスナイパーズ?」
メリッサは聞く。
「いやそれがさあ。聞いたことも無いチームだったんだよね」
そういうグレース。
「そうなんだ? 盗賊ギルドに行ってみる?」
僕は聞いた。
「そうだね。それが良いよ」
グレースは言った。
「賛成。見に行こうか」
メリッサも同意した。
僕達は盗賊ギルドへ向かった。城の裏手からも行ける。
盗賊ギルドに入ると、オリアーヌが居た。開拓者風の革の服装だ。変わってるけど、お洒落ではある。
「オリアーヌ、久しぶりだね。どうなってる?」
メリッサは聞いた。
「ん? ランキングかい? まあ百聞は一見に如かずだね」
オリアーヌは言った。
現在の ランキング です
1位 レインボースターズ 51階
2位 テクノトリッパーズ 50階
3位 ソニックレイジ 48階
3位 スカイスナイパーズ 48階
3位 ヴォルテックス 48階
「『レインボースターズ』に『テクノトリッパーズ』か。2つも50階を突破しちゃってるね」
僕は言った。
「まあそれは驚くに値しないよ。50階を超えるなら、2勢力以上でないと、『国際連合』の恩恵を受けられないからね」
そういうメリッサ。
「ん? 国際連合?」
僕は聞いた。
「50階の『荒野の街』には国際連合があって、2勢力以上なら色んな特殊施設を作れるんだよ。と言っても、全プレイヤーに良い影響があるから、それは放置しても良いけどね」
そういうオリアーヌ。
「となると、慌てる必要は無い?」
そう聞くグレース。
「いや大有りだよ。50層以降の難易度は高いけど、『運命の指輪』や『魔剣』と言った超強力なアーティファクトが手に入るからね。ほっとくと手に負えなくなるよ」
そういうメリッサ。
「なるほど。以前メリッサが、50階以降に進むと袋叩きにされるって言ってたけど、そういう意味だったんだね」
僕は言った。
「もう稼いでる暇はないね。追わなきゃ……」
そういうオリアーヌ。
「だね。ブラックゴーストに連絡しないと」
そういうメリッサ。
「その心配はありませんよ。ブラックゴーストから連絡が来ています。カフェですぐに会いたいと」
そういう盗賊の女性。
「会わなきゃならないね。シビラはまだ来てないのかな?」
そういう僕。
「対人戦に関しては私に任せると言ってくれてたし、交渉は私達で行おう。放置するのは失礼だよ」
メリッサは言った。
「シビラには申し訳ないけど、それが良いだろうね」
オリアーヌは言った。
僕達は城を出て、街のカフェへと向かった。カフェは巨大で、たくさんの植物で飾られている。
中を探していると、目立つ格好の女の子たちが手を振った。カリナちゃんとエイラちゃんだ。
「どうも、お久しぶりです」
カリナちゃんは言った。
「こんにちは」
僕はあいさつした。
「飲み物でも頼まれては?」
エイラちゃんが言った。
「そうしようか。私はアイスティーで良いよ」
そういうメリッサ。
僕達は思い思いのドリンクを取り、席に座った。大きなテーブルだ。
「さて、本題に入りましょうか。50階越えちゃうクラスが現れましたね」
カリナちゃんは言った。
「そうだね。正直驚いたよ。速すぎると思うんだけど……」
メリッサは言った。
「私達もちょっと準備不足でしたね。とはいえ、こうなった以上は追わざるをえないと思うんですが」
エイラちゃんが言った。
「難しい所だけどね。ヴォルテックスやスカイスナイパーズはすぐに追うだろうから、それを眺めるという手もあるし」
オリアーヌは言った。
「しかしそれはあまりに弱気。先にそれらの勢力に先行勢力が潰されてしまえば、私達の勝ち目も下がってしまいます」
カリナちゃんは言った。
「まあそうだね。あくまでも先手を取る。戦いの基本だよ」
僕はそう言った。師匠がいつも言っていた事だ。
「そういえば、そちらのリーダーは?」
エイラちゃんが聞いた。
「今は居ませんね。と言っても、私達の意見は聞いてくれると思いますけど」
メリッサは言った。
「そうですか。まあ私達はもう50階に行きますよ。あなたたちも付いてきてくれるとありがたいんですけど」
カリナちゃんは言った。
「こうなった以上、ここでグダグダしてるわけにはいかないしね。私達もすぐに50階に行くことになるね」
オリアーヌは言った。
「それなら問題ありませんね。私達としても、黙って50階に行くのは失礼かな、と思っただけですので」
エイラちゃんがそう言った。
「つまりブラックゴーストは50階へ行く。僕達もなるべく急いで50階へ行く。と言う感じで良いかな?」
僕は聞いた。
「ええ。それで結構です」
カリナちゃんは言った。
「それじゃあせっかくだし何か食べませんか? 私ここの餃子好きなんですよね」
エイラちゃんが言った。
「おいしいよね、餃子」
メリッサが言った。
僕達は一緒に餃子をいっぱい食べて盛り上がった。




