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マジックガールズ・センテナリーフェスタ  作者: 秀一
第五章 山の階層 41階~49階 欲望渦巻く採掘場
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第四十六話 アイスコーヒー


 その日も僕はまた、外を走っていた。

 

 暑さもわずかにマシになってきたが、大した違いはない。灼熱地獄の中、僕は走り続けた。

 

「ふう……」

 タオルで体の汗を拭う。

 

 師匠に動きを習って以来、動きは多少良くなった気もする。敏捷性の訓練も積んでいる。そして、あの『マジックガールズ』の影響もあって、防御も改善してきた気がする。そう考えるとあのゲームも役に立っているのかもしれない。

 

 ここに居られるのもあと僅か。……何か大事な事を忘れていないかと不安になるけど、まあ仕方ないか。ある種のホームシックみたいなものだろうか。

 

 僕にとっては、この島こそ家だ。でもいずれは出て行かなければならない。

 

 それにしても喉が渇いた。何かアイスコーヒーでも飲みたいな……。

 

 僕はそう思って、カフェに入った。

 

 初めて入る店だ。多分あんまり期待できない気もするけど……。レトロな感じで、大きな扇風機みたいのが中にあった。

 

「いらっしゃい。好きな所に座ってね」

 おばちゃんがそう言ってくれた。僕は窓際に座る。

 

 見ると、窓から外を眺める女性が居た。

 

 思えば、以前会ったことのある画家らしき人だ。絵は描けたのだろうか?

 

「こんにちは。絵は描けましたか?」

 僕は聞いてみた。

「ん? ああ、あの時の。今日もランニング?」

 女性は言った。

「まあそうですね。このカフェに入ったのは初めてですけど」

 僕は言った。

 

「そっか。ここは中々いい店だよ。私が保証するよ」

 そういう女性。何者なんだろうか。

 

「絵はどんな感じに?」

 僕は聞いた。

「ん? 見るかい? 何か恥ずかしいね」

 そう言いつつも、見せてくれた。

 

 青い空。青い海。白い砂浜。そして走る一人の少年。

 

 とても綺麗だ。信じられない程美しい絵だった。

 

「凄いですね。天才ですか?」

 僕は言った。

「あはは、ありがと。でも私は、天才なんてものは無いと思うけどね」

 そういう女性。

「そうでしょうか?」

 僕は聞いた。

 

「そうだよ。何事も、好きこそものの上手なれさ。誰でもやり続ければ上手くなるし、そうでないと下手になるんだよ」

 女性はそう言った。

「わかります。僕も空手が好きで、ずっとやってますしね」

 そういう僕。

「ふうん? そうなんだ。私は肉体労働は苦手だけどね」

 女性はそう言った。

 

「私は飯塚って言うんだ。あなたは?」

 飯塚さんは言った。

「雨宮です」

 僕は言った。

「よろしくね、雨宮君。良かったらそこ、座りなよ」

 そういう飯塚さん。

「ありがとうございます」

 僕は飯塚さんと相席して、アイスコーヒーを飲んだ。

 


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