第四十四話 山の冒険
「それでどうするの? 今日も少しは進むんでしょう?」
そういうミレーヌ。
「うん。まあそうだね」
メリッサは答えた。
「40層の注意点は?」
僕は聞いた。
「んー、特には無いね。優しい階層だし。と言っても、敵は弱くはないし、できれば状態異常が欲しいね」
そういうメリッサ。
「ん? と言うと?」
そう聞くシビラ。
「このあたりの階層の敵は、能力は高いけど状態異常が効く相手が多いんだよ。だから『ネクロマンサー』が欲しい所だね。まあ黒プリンセスでも良いんだけど……」
メリッサはそう言った。
「あら、そうしたら私の出番でしょうか~?」
そう言って、イリーナがやってきた。
「やあ、来てくれたか」
シビラは言った。
「私も来たよ~」
そう言ってグレースもやってきた。魔術師コンビの二人。ローブを着て、いかにも魔術師っぽい感じになっている。
「私も来ましたよ。黒プリンセスの出番と聞いて!」
そういうレナータさん。
「私もお役に立てるでしょうか?」
そう言ってアメリーさんも来た。
「集まってきたね。とりあえず、どんなパーティーにしようかな?」
悩むメリッサ。
「敵はどんな感じなの? ていうかどういう所?」
そう聞くミレーヌ。
「んー、まあゴブリンみたいな人型の敵が多いんだよね。あとは鳥かな。ちなみに山だよ。山登りは好き?」
そういうメリッサ。
「山かあ。島だとあんまり山とか無いから、新鮮だね」
そういうミレーヌ。
「ゴブリンみたいのが居るなら、前衛は私達三人で固めようか。後衛にはアメリーさんとイリーナ、後一人はどうしようかな」
そういうシビラ。
「それなら是非私を!」
ここぞとばかりにアピールするレナータさん。
「んー、まあそれで良いか。お願いしますよ、レナータさん」
シビラはそう言った。
「やったあ! 私の力、お見せします!」
喜ぶレナータさん。
「あー、一応忠告しておきますと、黒魔法はほどほどにしてくださいね。黒魔法使って死ぬプリンセスって結構メジャーなんで」
忠告するメリッサ。
「わかってますって」
そういうレナータさん。
「本当に分かってんのかな……」
不安そうなおねえちゃん。
まあそういうわけで、僕、ミレーヌ、シビラが前衛。後衛はアメリーさん、レナータさん、イリーナだ。
僕達は教室からワープし、40階へ。そして階段を登り、41階へと辿り着いた。
そこはまさに断崖絶壁。山だ。
ドンドドンドドン、と勇壮な太鼓の音が鳴り響く。
「この音楽、まさに男! って感じだね」
僕は言った。
「あーそうだよね。魔法少女関係ないと思うんだけど……」
そういうミレーヌ。
「まあこのゲーム、あんまり魔法少女関係ないよな」
そういうシビラ。
まず現れた敵は三体の人形だ。大した相手ではないだろう。
「軽く腕慣らしといこうか」
そう言ってシビラが突撃。一体を攻撃する。ミレーヌも前進し、攻撃した。斬撃が決まり、人形が斬られて消滅する。
もう一体には僕が攻撃する。敵の攻撃をかわし、回し蹴りを放った。人形は首が吹っ飛び、消滅した。最後の一体もミレーヌが攻撃し、倒した。
戦闘に勝利しました!
「さすがにレベルは上がらなかったみたいだね」
僕は言った。
『まあこの階層は経験値の多い敵が多いから、すぐレベル上がるよ』
そういうメリッサ。
「ちなみに、ボスは倒さないんだよな?」
そう聞くシビラ。
『当然だよ。ここで稼がないと』
そういうメリッサ。
「レベル貯めかあ。めんどくさいなあ」
そういうミレーヌ。
「まあ、平和で良いじゃん」
僕はそう言った。
42階へ。山の中は、緑にあふれているようだ。
どうやら、ゴブリン一体のようだ。棍棒を持っている小鬼だ。
「こりゃまた弱そうだね」
僕は言った。
『実際かなり弱いよ。でも経験値は多い、美味しい相手だよ』
そういうメリッサ。
「ありがたいね。んじゃ倒そうか」
そう言ってミレーヌは進む。
ゴブリンの攻撃を軽く回避するミレーヌ。そして斬撃を加える。
「《剣技:流麗なる一撃『菊花』》!」
左から右へ、横なぎの一撃が決まった。あえなくゴブリンは死に、消滅した。
戦闘に勝利しました!
全員レベル37に上がった!
「良い感じだね。これなら楽に稼げそう」
そういうメリッサ。
「これまでかなりキツイ相手も多かったから、ありがたいな」
そういうシビラ。
43階へと進む。
現れたのは小さい黒いドラゴンだ。僕よりもちょっと小さい。
『ベビーブラックドラゴンだね。ブレスを吐くから気を付けて』
そういうメリッサ。
「いよいよドラゴンの登場か。冒険って感じだね」
そういうミレーヌ。
「油断は禁物だな。全力で行こう」
そういうシビラ。
「んでは、私も頑張ります! 《赤魔法:火炎球》!」
ドーン、と炎の球がレナータさんから放たれ、ドラゴンに命中した。
激怒するドラゴン。すぐさま、こちらに向かってくる。
「それでは私も~ 《黒魔法:眠りの雲》!」
イリーナの黒魔術が発動。白い雲が発生し、ドラゴンは眠りに落ちた。
とても気持ちよさそうに寝るドラゴン。ちょっと可愛い。
「えーと、どうすれば?」
聞くミレーヌ。
『当然寝込みを襲うんだよ、おねえちゃん!』
忠告するメリッサ。
「えー、ちょっと可哀想……」
躊躇するおねえちゃん。
「しゃーねーだろ。寝る方が悪いし……」
そう言って槍を構えるシビラ。
「んー、まあそうだね」
そういうミレーヌ。
シビラは槍を思い切り頭にぶっ刺し、ドラゴンは叫び飛び起きた。僕はドラゴンを殴り、ミレーヌも切り裂いたところでドラゴンは死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル38に上がった!
「キャンプ」
レナータさんが宣言し、回復する。イリーナが黒魔術を使ったので、少しダメージがあるだろう。
「ふう、躊躇しちゃいられないね」
そういうミレーヌ。
「まあ、敵は倒さないといけないゲームだろうしね」
僕は言った。
「眠りが効く相手なら戦いやすいけどな」
シビラはそう言った。
回復したので44階へ。
今度はオーク2体のようだ。こいつらも棍棒を持っている。
「それじゃあ、行こうか」
僕は言った。
「ああ、ちょっと待ってください~」
そういうイリーナ。
「ん? どうしたの?」
僕は聞いた。
「まあ、見ていてください。《黒魔法:混乱》!」
イリーナが魔術を使った。見ると、オーク2体は混乱し、同士討ちを始めた。
殴り合いの末、2体は仲良く死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル39に上がった!
「キャンプ」
僕は宣言した。回復する。
「へえ、そんなやり方もあるんだね。頭良いね、イリーナ」
そういうミレーヌ。
「えへへ~、そうでしょう?」
そういうイリーナ。
『良くある戦法ではあるね。ネクロマンサーの混乱成功率は高いから、人型の頭の悪い相手には必勝法だよ』
そういうメリッサ。
「ちょっと卑怯な気もするけど、まあ安全に戦えるね」
僕は言った。
「戦いに卑怯も何もないしな」
シビラは言った。
僕達は45階へと進んだ。そこは雪山だ。
びゅうびゅうと吹雪が吹いている。
「うわ寒い……、ってことも無いね」
おねえちゃんが言った。
「まあゲームだし……」
僕は言った。
見ると、氷でできたゴーレムが一体、こちらを睨んでいる。
『アイスゴーレムだね。炎がよく効くよ』
メリッサは言った。
「よし。《赤魔法:火炎球》!」
レナータは魔術を放ち、アイスゴーレムに命中。ゴーレムは激怒し、こちらに向かってくる。ぶん、と拳を振り回す。僕はその攻撃を食らい、ダメージを受けた。
「くっ……」
僕はそのまま前に向かい、拳で攻撃をかけた。さらに蹴りを放つ。
「大丈夫ですか? 《赤魔法:火炎嵐》!」
レナータの魔術で炎の嵐が巻き起こり、アイスゴーレムは溶け、死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル40に上がった!
《第三の切り札》を習得しました!
「お、ついに第三の切り札を覚えたみたいだね」
僕は言った。
「私もそこまで覚えるのは初めてだな」
シビラはそう言った。
『第三の切り札は相当強力だよ。特におにいちゃんのやつは強いね。プリンセスのも強いけどね』
そういうメリッサ。
「へえ、そうなんですか」
知らなかったらしいレナータさん。
「ふうん、どうやって見るんだっけ?」
僕は聞いた。
『《切り札の確認》と言えば良いよ』
そういうメリッサ。
「よし。《切り札の確認》」
僕は言った。
あなたは グラップラー です
《第一の切り札:正拳突き》(強攻撃)
《第二の切り札:二段蹴り》(強二連攻撃)
《第三の切り札:発勁》(透過攻撃)
「透過攻撃って?」
僕は聞いた。
『あらゆる防御とかを無視して確実に入るダメージだね。このゲームでは最強の攻撃だよ』
そういうメリッサ。
「へえ、そうなのか。ありがたいね」
僕は言った。
僕達は更に進む。46階へ。
※銀鉱山を発見しました!※
「ん? これは?」
僕は聞いた。
『おめでとう! 銀鉱山だね。それなりにお金が手に入るよ。まあゲーム内通貨だけど』
そういうメリッサ。
「へえ、そんなのもあるんだね」
僕はそう言った。
僕達は鉱山に入った。キラキラと銀色の石が光る。
僕は一つを拾った。
※2ジェニー を手に入れました!※
「へえ、こんな感じか」
僕は言った。
『そういえば、つるはしとかスコップを持っていけば良かったね。まあ素手でも多少は手に入るから、頑張って銀を集めてね』
そういうメリッサ。
「よっと」
おねえちゃんが銀を拾う。
※3ジェニーを手に入れました!※
「ちょっとだけだね。まあ良いか」
そう言ってシビラも拾う。
※価値が無い鉱石みたいだ……※
「なんだそりゃ!」
捨てるシビラ。
『とにかく拾いまくって。制限時間があるから』
そういうメリッサ。
「忙しいゲームだね。仕方ないか……」
僕は拾いまくった。
※価値が無い鉱石みたいだ……※
※20ジェニーを手に入れました!※
※45ジェニーを手に入れました!※
良い感じになってきた感。ひたすら拾いまくる。
※300ジェニーを手に入れました!※
※48ジェニーを手に入れました!※
※150ジェニーを手に入れました!※
そして僕達は、不思議な力で追い出された。
『とまあ、こんな感じだね。理解した?』
そういうメリッサ。
「ボーナスステージって感じだね」
僕はそう言った。
「まさにそんな感じだね。お金が手に入るのは有り難いね」
そういうおねえちゃん。
「ゲーム内通貨は増えて来たみたいだな。まあこれだと魔法カードぐらいしか買えないだろうけど……」
そういうシビラ。
「良いじゃないですか~。魔法カードはいくらあっても足りませんからね~」
そういうイリーナ。
「そうだよ。特にプリンセスは大量の魔法カードを買わないといけないしね」
レナータさんは言った。
「そういえばそうですね。そうなると、レナータさんにゲーム内通貨を渡すべきなのでしょうか?」
アメリーさんが言った。
『確かにそうだね。プリンセスは三種類の魔法が使えるから、カードも三種類買わないといけないんだよね』
メリッサはそう言った。
「そっか。レナータさん、ジェニーならあげますよ」
そういう僕。
「ありがとう! 頑張るよ私!」
元気なレナータさん。何よりだ。
僕達は更に奥へ。47階。
獰猛な虎三体が現れ、こちらを睨む。
「これは文句なしに強そうだね」
そういうミレーヌ。
「ま、虎ぐらいは倒せないと腕がなまってしまうさ」
シビラは槍を構えた。
襲い掛かる虎三体。イリーナが魔術を詠唱する。
「させません~。《黒魔法:麻痺》!」
イリーナの魔術が発動。虎一体の動きを止めた。
「やるね。《赤魔法:火炎球》!」
レナータさんは攻撃魔術を発動。火球の大爆発が起き、虎3体に大ダメージを与えた。
「つえい!」
ドス! とシビラの槍攻撃が決まる。一体を仕留めた。
「はあ!」
ミレーヌの斬撃。これも命中し、一体を仕留めた。
「可哀想だけど、仕方ないね」
僕は麻痺している虎を殴り、仕留めた。
戦闘に勝利しました!
全員レベル41に上がった!
「大分戦い慣れてきたね。余裕余裕!」
そういうおねえちゃん。
『おねえちゃん、油断は駄目だよ。慣れてきたころが一番危ないからね』
そういうメリッサ。
「むう、メリッサは弱気すぎ! 大丈夫だって!」
膨れるおねえちゃん。
「まあ警戒はするに越したことはないさ。進もう」
シビラは進む。
『一応忠告しておくけど、絶対49階には踏み込まないでよ』
そういうメリッサ。
「わかってるって。ここで力を蓄えるんでしょ?」
不満そうに言うミレーヌ。
48階へ。
※ドワーフ窟を発見しました!※
『うわあああ! きたあああああ!』
叫ぶメリッサ。
「な、何だ!? 何事だよ!?」
驚くシビラ。
「そうだよ、何事なの?」
ミレーヌも聞いた。
『ど、ドワーフだよ! 捕まえないと! 捕まえると超強い武器を作ってくれるんだよ!』
そういうメリッサ。
「へえ、そうなんだ。でも平和に暮らしてるのを捕まえるのは悪いような……」
僕はそう言った。
『何言ってるのおにいちゃん! ドワーフの武器は超優秀なんだよ! リアルマネー何万円もする武器も何千円かで作ってくれるんだよ!』
そういうメリッサ。
「どっちにせよお金かかるんじゃん……。はああ。まあ、捕まえれば良いんだよね?」
そういうおねえちゃん。
「対人戦を勝ち抜くなら、是非とも欲しい所ではあるね」
レナータさんはそう言った。
「んじゃまあ、とりあえず入ろうか」
僕は言った。
『気を付けてね。いきなり襲ってくることもあるから』
そういうメリッサ。
僕達はドワーフ窟に侵入した。
※ドワーフたちは友好的なようだ※
※「こんにちは! 人間さん、何の御用ですか?」※
『お、これはまた超ラッキーだね。交渉すれば仲間を派遣してくれるよ』
そういうメリッサ。
「へえ、良い所あるじゃん」
そういうミレーヌ。
※君たちはドワーフの王に謁見した。※
「よく来たな、人間たちよ。ワシに何か用か?」
そういう王。
「どうも。力を貸していただけませんか?」
僕はそう言った。
「よかろう。では3000円頂こうか」
そういう王。
「お金取るんかい!」
ツッコむミレーヌ。
『あー、仕方ないよ。ここは払わないと……』
そういうメリッサ。
「リアルマネーだよな? あたしは無理だぞ!」
リアルマネー拠出恐怖症と化したシビラ。
「なんなら、わたくしが支払いましょうか?」
そういうアメリーさん。
「いや、良いよ。アメリーさんにそんなことしてもらうのもね。私が出すから」
そういうミレーヌ。
「良いの? おねえちゃん」
僕は言った。
「ウチは結構お金持ちだしね。ま、大丈夫でしょ」
そういうおねえちゃん。まあそりゃ大丈夫だろうけど。
そんなわけで電子マネーを支払うおねえちゃん。電子マネーだとついつい払っちゃうよね。
「素晴らしい! では、選りすぐりの職人を遣わそう」
王はそう言った。
「そりゃどうも……」
一応感謝するおねえちゃん。
「せっかくだ。この ★ドワーフの槍 をやろう」
そう言って青い立派な槍をくれる王。
「うはあ! ありがとうございます!」
超感謝するシビラ。
「まったくもう、大事に使ってよね……」
そういうおねえちゃん。
「では今日はここまでにしようか。下がるがよい」
王はそう言って、僕らは追い出された。
「実り多い冒険だったね。今日はここまでだよね?」
僕は言った。
「だな。それじゃあ帰ろうか」
シビラはそう言って、帰還の石を使った。空間が歪み、僕達は街へと帰還した。