第四十三話 ヴォルテックス
その日もまた、ゲーム内に潜った。
考えてみれば、本土に戻ると、ゲーム内に潜るのは難しくなるかもしれない。ゲーセンとかでもやれるだろうし、基本的には無料のゲームではあるけれど、やる暇があまりないだろうし。そう考えると、できれば早く終わらせたいけど、でも100階層もあるみたいだし無理そうだな……。
僕とメリッサ、ミレーヌの三人がカフェに入ると、シビラが誰かと談笑していた。
一人は大きな槍を背に担いだ人。もう一人はおとなしそうなシスターと言う感じだろうか?
「やあシビラ。その人は?」
僕は聞いた。
「ああ、カオリか。いや、この人はヴォルテックスのリーダー、ファイナさんだ」
そういうシビラ。
「はじめまして。ファイナです。よろしくね、カオリちゃん」
ペコリと頭を下げるファイナさん。僕も頭を下げた。
「あなたがトップチームのリーダーですか」
僕はそう言った。
「トップチームと言っても、現時点だけどね。こんな所でトップになっても良い事無いし。どっちにせよ、40層は稼げる層だからみんな48階で溜まるんだよね」
そういうファイナさん。
「大体この辺でみんなぞろぞろと順番待ちになるんですよ。最初に50階を越えたチームはみんなに袋叩きにされますからね」
そういうメリッサ。
「そ……そうなんだ。大変だね、このゲーム」
そういうミレーヌ。
「ちなみに私はクリスティーナと言います。よろしくね、カオリさん」
そういうシスターっぽい人。
「よろしく、クリスティーナさん」
私はそう答えた。
「それにしても、シビラがクラスを作るとはね。私達と一緒にやってた頃はモロ初心者だったじゃん」
そういうファイナさん。
「まあ今も十分初心者ですけどね。熟練者も何人か居るので、助けられてますよ」
シビラは言った。
「へえ、そうなんだ。まあ私もラスボス戦まで行ったことはないし、熟練者が居るなら話を聞きたいぐらいだけどねえ」
そういうファイナさん。
「同盟でも結んでもらえるなら、教えても良いですよ」
そういうメリッサ。
「同盟か。んー、悪いけど、私達も同盟相手はこれ以上増やす気は無いんだ」
そういうファイナさん。
「そうなんですか。そりゃ残念」
シビラは言った。
「良かったら情報を売ってくれないか。ジェニーで良いなら払うよ」
そういうファイナさん。
「料金によっては構いませんよ。良いですよね? シビラさん」
そういうメリッサ。
「もちろん」
シビラは言った。
「それじゃあせっかくだし、49階のボスについて教えて欲しいんだけど」
そういうファイナさん。
「え? 49階のボスについて知らないんですか?」
驚くメリッサ。
「知らないわけじゃないけどさ。勝ったことはないんだよね。結構強いと思うんだけど」
そういうファイナさん。
「まあそれは僕も聞きたいけどね。どんな奴なの?」
僕は聞いた。
「んー、そうですね。まあ傲慢なるフェニックスってやつなんですけど。でかい燃えてる鳥で、こっちは龍の背中に乗って戦いますね」
そういうメリッサ。
「あーそうだよな。ていうか、教えてもらっていいの?」
ファイナさんは聞いた。
「それぐらいはタダで教えますよ。まあ常識的に考えて、『ガンナー』か『アーチャー』が必須だと思いますね。ランサーやグラップラー、ソードマスターで倒すのは至難の業ですよ」
メリッサは言った。
「そうなんだ。そりゃありがたい情報だなあ」
そういうファイナさん。
「ありがとうございます。お優しいんですね。えっと、あなたは?」
クリスティーナさんは聞いた。
「メリッサと言います」
そういうメリッサ。
「ん? もしかしてあなたは、かの『白雪の超能力者』では」
そういうファイナ。
「まあ、『スカイスナイパーズ』に居た頃はそう呼ばれたこともありますけど……」
そういうメリッサ。
「そ、そうなんだ!? 凄い人が居るじゃん! 凄いなシビラ!」
そういうファイナさん。
「お前有名プレイヤーだったのかよ。廃人じゃないか」
驚くシビラ。
「やっぱりこのゲームやり過ぎだと思うんだけど、秋奈……」
そういうおねえちゃん。
「あはは、照れるなあ」
照れているメリッサ。あんまり褒めてるようには思えないけど。
「そういうことなら、このチームも強そうだな。まあ正々堂々、後で戦って勝者を決めようじゃないか。それじゃあ、そろそろ失礼しますよ」
ファイナさんはそう言って、席を立った。
「お疲れ様です。またいつでも話をしましょう」
そういうシビラ。
「うん。それじゃあね」「またねー」
ファイナさんとクリスティーナさんはそう言って、去って行った。




