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マジックガールズ・センテナリーフェスタ  作者: 秀一
第四章 砂漠の階層 31~40階 新たなる旅路へ
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第三十七話 釣り

 その日は少しだけ、暑さがマシだった。

 

 僕はその日も走っていた。僕がここに居られるのもあと少しだ。夏休みはそんなに長くないし、また本土に戻らなければならない。

 

「おーい!」

 大きな声が聞こえた。振り向くと、桃花が居た。長くなった髪を揺らして、手を振っている。

 

「やあ、桃花」

 僕は答えて、走っていった。

 

「薫、今暇?」

 そう聞く桃花。

「暇では無いよ。トレーニングしてるからね」

 僕は言った。

「ふうん。まあそれはどうでもいいんだ。釣りにいくからさ、付き合ってよ」

 そういう桃花。

「どうでもよくはないと思うんだけど……」

 まあ、桃花に付き合う分にはいいんだけど。

 

 僕達は海へと向かった。船が一隻とまっている。

 

「んじゃ行こうか」

 そう言ってエンジンをかける桃花。

「はあ……。まあ良いけどさ」

 諦める僕。

 

 船は水平線を駆けていく。沖へと出て行った。

 何も無い海。桃花は釣り糸を垂らした。

 僕も予備の竿で準備する。まあ、大したものが釣れるとは思えないけど。

 

「薫も大きくなったよね。前は私よりずっとちっちゃかったのにさ」

 そういう桃花。

「いつの事だよ? まあ、僕もそんなに大きいわけじゃないと思うけどね」

 僕はそう言った。

 

 時間が流れる。釣れそうにはない。

 

「例のゲームで、賞金取ったら薫、どうするの?」

 そう聞く桃花。

「うーん、まあ貯金かな」

 そういう僕。

「えー、つまんない。夢が無いじゃん」

 そういう桃花。

 

「桃花はどうするの?」

 僕はそう聞いた。

「当然、美味しい物でも食べるよ。弟たちも一緒にね」

 そういう桃花。

「あはは、良いね、それ」

 僕は笑った。

 

 時間が流れる。やっぱり、釣れそうにはない。桃花も飽きてきたようだ。

 

「ふわあ、もう帰ろうか……」

 そういう桃花。

「それで良いと思うけど。訓練しないと……」

 そういう僕。

「もっと強くなりたいの? 薫」

 そう聞く桃花。

「うん」

 僕はそう言った。

「どうして?」

 そう聞いてくる桃花。

 

「んー、どうしてかな。でも、僕もできるだけ強くなりたいとは思っているさ。それで有名になりたいとか、そういうのじゃなくて、純粋にね」

 僕はそう言った。

「そういうものか。薫は偉いな……」

 そういう桃花。

「偉くなんて無いよ。僕のわがままさ。でも、途中で諦めたくはないんだ」

 そういう僕。

「そっか」

 桃花は、笑った。

「頑張ってね」

 そう言ってくれた。

「うん」

 僕はそう答えた。

 


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