第二話 春風家の食卓
「ただいまー」
お姉ちゃんはそう言った。
「おかえり、二人とも。薫くんもおかえりなさい」
おかあさんがそう言う。まあ、本当のお母さんでは無いけど。
「ただいま、おかあさん」
僕はそう言った。
春風家はこの島にあるごくごく普通の家庭だ。おとうさんは漁に出ている。僕は両親が離婚して以来、この家にお世話になることが多かった。今は島を出て本土の高校に行っている。夏休みなので、帰ってきたのだ。
「薫くんも大きくなったわね」
おかあさんはそう言った。
「そうでしょうか? でもお姉ちゃんと秋奈ちゃんも大きくなったかと」
僕はそう言った。
「ふふふ、そうね。秋奈なんて、すごく楽しみにしてたのよ、薫くんと会うの」
おかあさんはそう言った。
「ちょ、ちょっと! お母さん!? そんなに楽しみになんてしてないし!」
照れる秋奈ちゃん。
「秋奈ったら嘘ばっかり。超楽しみにしてたじゃん」
お姉ちゃんは言った。
「うう、お姉ちゃんまで! もう!」
だだだ、と秋奈ちゃんは自室へと逃亡していった。
「あらあら」
おかあさんは呆れて、夕食の準備に取り掛かっている。
お姉ちゃんと二人、和室でテレビを見ることになった。どうでもいいテレビ番組が色々と放送されている。
「学校はどう? 薫くん」
お姉ちゃんは聞いた。
「楽しいよ。みんな優しくしてくれるしね。でも、頑張らないといけないな、とも思うんだ」
僕はそう言った。色んな人にお世話になって良い学校に行かせてもらっているのだ。怠けるわけにはいかない。
「そっか、大変だね。秋奈も、本土の高校に行くんだって頑張ってるよ」
お姉ちゃんは言った。
「へえ、そうなのか。お姉ちゃんは?」
僕は聞いた。
「私はもうこの島に住むよ。今更だしね」
お姉ちゃんはそう言った。
この島も基本的には過疎化が進んでいるが、近年では移住してくる人もいなくはない。そんなに不便というわけでもない。色々揃っては居るし、本土にも近く住みづらい島ではない。インターネットというものもあるしね。
「ごはんよ~」
おかあさんの声が聞こえた。
だだだ、と走る3人。僕が一番に席に着いた。
「おお、これは……」
回鍋肉だった。豚肉とキャベツ炒めに黒い味噌がかかる。
「薫くんってば、急に帰ってくるんだもん。言っておいてくれたら、もっと良い物を用意したんだけど……」
そんなことを言うおかあさん。
「いやいや。凄くおいしそう!」
僕はそう言った。お姉ちゃんと秋奈ちゃんも席に着く。
「いただきまーす!」
お姉ちゃんがそう言って食べ始めた。
「いただきます」
秋奈ちゃんも手を合わせて、食べ始めた。
「では、いただきます」
僕も食べ始めた。
「おいしい!」
僕は素直にそう言った。ご飯が進む。
「当然よ。ママは世界一料理が上手いんだから」
お姉ちゃんが言った。
「ふふ、そう言ってくれるのは嬉しいわね」
おかあさんはそう言った。でも本当におかあさんは料理が上手い。絶対に店とかも出せそうだ。まあそのつもりはないらしいけど。




