第三十五話 灼熱の暇つぶし
僕達は、またゲーム内にやってきた。
今日はおねえちゃんは部活で来ていない。秋奈ちゃんと一緒だ。
「カフェに行こうよ、おにいちゃん」
「そうだね」
僕と秋奈ちゃんは、カフェに行くことにした。
カフェには色んな料理が並んでいる。スイーツもあるし、ドリンクもある。
「秋奈ちゃん、何が食べたいの?」
僕はそう聞いた。
「んーとね、辛い物!」
そういう秋奈ちゃん。
「そうなんだ……。僕はあんまり辛い物は好きじゃないんだけど」
予防線を張る僕。
「そうだよねー、おにいちゃんお子様だしね」
馬鹿にする秋奈ちゃん。悔しい……!
そう言いつつ、中華料理の×四川風麻婆豆腐なるものを2つ持ってきた。
ぐつぐつとヤバい赤色になっている。
「ちょっと秋奈ちゃん!? だから辛い物は苦手なんだって!」
叫ぶ僕。
「いいじゃん。大丈夫大丈夫。どうせゲームだしさ」
そんなことをいう秋奈ちゃん。まあそりゃそうだけど!?
「ま、いいか……。それじゃいただきます」
そう言って僕は食べた。
「ん? 美味しいね」
僕は言った。
「そうでしょ? ほらどんどん食べて!」
そういう秋奈ちゃん。僕はどんどん食べた。
が、
「ぎゃあああああああああああああああああああ!」
凄まじい後から来る辛さがあああああああ!
「水! 水ううううううう!」
僕は水を取りに行き、がぶ飲みした。
「はあ、はあ……」
何とか九死に一生を得た僕。
「大袈裟だなあ、おにいちゃんは」
そう言って平然と食べる秋奈ちゃん。どんな舌してるんだ!?
「ヤバいってこれ。見た目じゃわからないぐらい辛いよ」
僕はそう言った。
「大した事無いよ。もっと辛いのもあるんだよ」
恐ろしいことをいう秋奈ちゃん。
「何で!? 殺人的すぎる! 女の子向けのゲームなんでしょ!?」
叫ぶ僕。
「まったく、何を大騒ぎしてるんだ?」
注目を集めてしまったようだ。オリアーヌさんがやってきた。
「あ、どうもオリアーヌさん。メリッサがありえないぐらい辛いのを食べてるんですよ……」
僕は言った。
「ああ、こいつ辛いの大好きなんですよ。以前は××死神麻婆豆腐にチャレンジしてましたしね」
そういうオリアーヌ。名前からしてヤバすぎる。
「さすがにアレは無理だったけどね。人類に食べられるものじゃないよ」
そういうメリッサ。何のために置いてあるんだよ!
「どうも~、うわあ、またおぞましいビジュアルのものを食べてますね」
レナータさんもやってきた。まったくもって、レナータさんの言う通りだ。机の上が赤すぎる。
「とても食べられないですよ。まあゲームだから、捨てても問題はないでしょうけど……」
そういう僕。
「あはは、そうですよね。私も以前、××地獄鶏煮物にチャレンジしましたけど、一口で気絶しそうになりましたし。やはり×が二つ付いてるのはヤバいですね」
そういうレナータさん。ますます何のためのものか不明すぎる。
「ふう……。ごちそうさまでした」
そう言って見事、×四川風麻婆豆腐を完食するメリッサ。
「お見事だったね、秋奈ちゃん。でももう辛いのはやだ……」
そういう僕。
「あはは、ごめんねおにいちゃん。おにいちゃんが驚くところを見たかったからさ」
そういう秋奈ちゃん。まあそうかもしれないけど……。
「まだプレイヤーは集まってないね。おにいちゃん、せっかくだし、ゲームセンターにでも行こうよ」
また意味不明な事を言うメリッサ。
「いやいや。ここゲームの中だよね!? ゲームの中でゲームするわけ!?」
混乱する僕。
「ああ、ここには結構いいゲーセンあるんですよ。面白いですよ?」
そういうオリアーヌさん。そうなのか……。
「しかもタダだしね。暇なら良いかもね」
そういうレナータさん。
「まあそういうことなら構わないけど……」
一応納得する僕。
「やった! 行こうよ、おにいちゃん!」
そう言って手を引く秋奈ちゃん。秋奈ちゃんも、子供だよね。
ゲームセンターに行くと、まずはクレーンゲームがたくさんある。
「おにいちゃん、あれ取って~」
そういう秋奈ちゃん。
「やってみるか……!」
そうしてクレーンを動かす。見事人形を掴んだが、ポロリと落としてしまう。
「くう……!」
これは悔しい。もう一度やるが、駄目だった。
「ヘタクソだね」
そういうオリアーヌさん。だよね……。
「まあ結構難しいしね、これ」
そういうレナータさん。
上に上がると、テレビゲームもある。格闘ゲームや、音ゲーもあるようだ。本当のゲームセンターみたいだな……。
「おにいちゃん、ここは格闘ゲームで勝負しようよ!」
そういう秋奈ちゃん。
「良いよ。これは負けられないな!」
格闘で負けるわけにはいかない!
「これは見ものだね」
そういうオリアーヌさん。
「多分結果は見えてるけどね……」
不穏な事を言うレナータさん。
僕は格闘家を、秋奈ちゃんは女の子を選んだ。
僕も負けるわけにはいかない!
そして戦いが始まった。
『ハイ! ハイ!』
バシバシ、と攻撃をかけてくる女の子。当然のように宙に吹っ飛ぶ格闘家。
「ええい、この!」
何とか態勢を立て直そうとするが、連続コンボを食らって抜けられない。
「駄目だよ、おにいちゃん!」
そう言って猛攻を加える秋奈ちゃん。しかし僕の反撃も決まった。
『ハア! ハイ!』
バシバシ、と攻撃を加える格闘家。相手のライフが大きく減る。
「へえ、やるじゃん」
そういうオリアーヌさん。
「やるねえ。実はやりこんでるとか?」
そう聞くレナータさん。
「むう、油断したよ。でもこれから!」
そういう秋奈ちゃん。
「負けないよ、秋奈ちゃん!」
僕も全力で攻勢をかける。バシバシ、と連続攻撃が決まり、見事格闘家の勝ちとなった。
「ふう、僕の勝ちだね」
そういう僕。
「えー、嘘! 強いねおにいちゃん!」
そういう秋奈ちゃん。
「大したものだね。メリッサが負けたの、初めて見たよ」
そういうオリアーヌさん。
「よくわからないけど、強いですね、カオリさん」
そういうレナータさん。
「さて、まだ遊ぶの? そろそろ戻った方がよくないかな」
僕は言った。
「そうだね。教室にでも戻ってみようか」
そういう秋奈ちゃん。僕達は、教室へと帰った。