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マジックガールズ・センテナリーフェスタ  作者: 秀一
第四章 砂漠の階層 31~40階 新たなる旅路へ
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第三十四話 画家


「あーーーーづーーーーいーーーー」


 その日もまた、絶望的に暑かった。

 基本的にこの島は涼しいのだ。雨はあんまり降らないけど。

 が、そのようなことは完全に無視し、破滅的な直射日光が世界の全てを焼き尽くしていく。

 

 とはいえ、僕は走らなければならない。体を鍛え続けなければならないのだ。つらい。

 

 ミカン畑を越え、砂浜に入った。あまりの暑さに、泳いでいる人すらほとんどいない。

 しかし、奇妙な人が居た。

 

「ん?」


 その人は、ベレー帽をかぶって、椅子に座り、ぼけーっとしているようだ。白いキャンバスが置いてある。絵を描くのだろうか?

 

「こんにちは」

 僕は話しかけてみた。その人は振り返った。

「やあ、こんにちは」

 女性のようだ。僕よりはかなり年上だろう。服も靴も、庶民が着るようなものではなさそうなお洒落さだ。どう考えても、この島には不似合いだ。

 

「何をなさっているんです?」

 僕は聞いた。

「んー、そうだね。何だろうね……」

 いきなり意味不明なことをいう女性。大丈夫な人なんだろうか……?

 

「絵を描かれているんですか?」

 僕はそう聞いた。

「まあね。絵描きだね」

 彼女はそう言った。

 

「しかしまだ何も描かれていないようですね」

「そうなんだよね……」


 真っ白なキャンバス。

 

「何か描いてみたら?」

 僕はそう言った。

「何が良いと思う?」

 逆に聞く女性。

 

「んー、何でも良いのでは? ほら、ここには青い空と美しい海があるじゃないですか」

 僕はそう言った。

「ん! そうだね。そういう気持ちが大事なのかもしれないね。いや、ついつい難しい物を描こうとしてしまう性格でさ」

 何かに気付いたように、彼女はそう言った。

 

「そういうものですか」

「そういうものなんだよ。君は無い? そういう経験」

「確かにそうかもしれませんね。僕もつい、難しい事をやろうとして失敗することはよくありますよ」

「あはは、そうだよね」

 彼女はそう言って、絵を描き始めた。

 


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