第三十三話 VSキングクラブ
その次の日。
僕、おねえちゃん、秋奈ちゃんの三人は、ゲーム内にやってきた。カフェで時間を潰すことにする。
「やっほー、皆さん!」
見ると、レナータさんが居た。既に多種多様なスイーツを食べ散らかした後のようだ。
「どうも、レナータさん。今日も元気そうですね」
僕はそう言った。
「もちろんです! 今日こそ活躍しますからね!」
そういうレナータさん。やる気はあるみたいだけど……。
「ていうか、活躍したいなら白魔法を覚えてくれれば良かったじゃないですか。そもそも、プリンセスはヒットポイント低いんだから、黒魔法なんか使うとすぐ死ぬと思うんですけど……」
そういうメリッサ。
「そのギリギリのところで何とかするのが楽しいんじゃないですか!」
明るい顔で言うレナータさん。
「駄目だ、この人マゾだ……」
呆れるおねえちゃん。
その時、ピアノを弾いてる女の子が居た。しかしへたくそだ。
「むう、ここは私の腕を見せねば!」
そう言ってピアノへと向かうレナータさん。
そうしてピアノを弾く。結構上手みたいだ。
「子犬のワルツだね。凄く上手いわけでは無いみたいだけど……」
そういうメリッサ。
「いや、でも相当練習しないと無理だと思うけど……」
僕は言った。
「意外な才能だね」
そういうおねえちゃん。
レナータさんが弾き終わると、軽く拍手が沸いた。調子に乗って、他にも何やかんや弾きまくるレナータさん。実は音楽家だったんだろうか? そうかも。
「おやおや、盛り上がってるね」
シビラが来たようだ。
「シビラも来たんだね。今日も行くの?」
僕は聞いた。
「向日葵が忙しくて来れないみたいだけど……」
そういうシビラ。
「そっか。でも、プリンセスなら居るみたいだけど」
僕は言った。
「あのピアニストを連れていくのか? ……まあそれも良いかもしれないけどさ……」
シビラは悩む。
「また鮫に襲われたら確実に死ぬけどね」
メリッサは言った。
「まあ、良いんじゃない? そうそう鮫も襲ってはこないでしょ」
そういうミレーヌ。
「僕としては、別に良いと思うけどね」
僕は言った。
レナータは戻ってきた。ちょっぴりおひねりを稼いだみたいだ。
「ふう……。やっぱり演奏は楽しいね」
そういうレナータ。
「上手でしたね。プロなんですか?」
僕は聞いた。
「とんでもない。アマチュアだよ」
レナータはそう言った。
「レナータさん、もし良ければ、今日のスタメンにしたいんだけど」
そういうシビラ。
「お、本当ですか!? 是非是非!」
やはりやる気満々のレナータさん。
「決まりだな。アメリーさんもお願いしますよ」
シビラは言った。
「ええ。レナータさんは優先して回復しますね」
アメリーさんはそう言った。まあ一人でも死んだら終わりだし、どう考えても優先すべきだろう。
パーティーは僕、ミレーヌ、シビラ、メリッサ、アメリー、レナータの6人となった。
27階へワープし、そこから28階へと向かう。
「《超能力:感知》」
メリッサが能力を使う。ピラニアと表示された。
「海の中に何故ピラニアが……」
僕は言った。
「2体居るみたいだね。気を付けて」
おねえちゃんが言った。
2体が向かってくる。僕はもちろん、前線に立つ。あの鮫ほどではないだろうけど、危険な相手だろう。
ピラニアが飛び掛かる。僕は腕でその攻撃をはじき返した。
相手は小さい。蹴りを入れようとするが、かわされてしまう。
「《黒魔法:鈍足の呪い》!」
レナータさんが黒魔法を使った。ピラニアの動きが遅くなる。
「はあ!」
ミレーヌが剣で突き刺し、一体を撃破した。更に、シビラも攻撃を加え、一体を倒した。
戦闘に勝利しました!
全員レベル21になった!
「ふう。《キャンプ》」
シビラが宣言し、休息を開始した。こんな水だらけの場所じゃあんまり休憩にはならないだろうけど、ヒットポイントは回復する。
「ボス戦に挑めるね。あいつは硬いからこのパーティーで良いかは微妙だけど、どうする?」
メリッサはそう注意した。
「どんな相手なの?」
僕は聞いた。
「確かでかい蟹だったよな。そんなに強い事は無いと思うんだが」
シビラが言った。
「そうだね。魔法アタッカーは私とレナータさんの二人。前線三人にヒーラー。行けるかな……」
メリッサはそう言った。
「まあ大丈夫でしょう。何とかなりますよ!」
気楽なレナータさん。
「僕は防御に徹すれば良いかな?」
僕は聞いた。
「基本的にはそうだね。グラップラーのヒットポイントは多いから、多少ダメージを受けても大丈夫だし。逆にプリンセスが攻撃を食らうとすぐ死ぬからね」
そういうメリッサ。
「まあ、私達三人で前線を支えれば、そうは破られないだろう。いつまでも20層に居るのも危険だし、ここは進むところだな」
そういうシビラ。
「そうだね。前進しよう」
おねえちゃんもそう言った。
僕達は29階に進む。ボスが待っている。
太鼓の音が鳴る。それと共に青い光が放たれ、ボスが姿を現す。
巨大な蟹だ。高さ2メートル、横幅3メートルぐらいはある。巨大なハサミで威嚇する。
「参ります! 《赤魔法:電撃》!」
レナータがさっそく魔術を使う。ババン、と電撃が決まり、敵の動きが遅くなる。
「良いね。《超能力:精神破壊》!」
更に、メリッサの超能力、かなりのダメージが入る。
のそのそと向かってくるカニ。僕が立ち向かう。
ハサミによる攻撃。しかし遅い。僕は余裕で弾いた。
「ナイス! 《赤魔法:電撃嵐》!」
レナータの更に強力な魔術が決まった。凄まじい電撃の嵐が、蟹を焼き尽くしていく。バババ、と痺れる蟹。
「良いね。《超能力:精神波動》!」
メリッサの能力も決まる。超能力のダメージは大きくないが、確実に効いてるみたいだ。
「はあ! 《剣技:『桜』》!」
おねえちゃんが宣言すると、自動的に強烈な斬撃が入る。
「食らえ! 《槍技:二段突き》!」
シビラも技を使う。連続攻撃が決まる。
とは言え、物理攻撃のダメージは薄いようだ。レナータさんに頑張ってもらわないと……。
「レナータさん、もっと攻撃を!」
僕は言った。
「オッケー! 《赤魔法:電撃》!」
更に魔術を放つレナータ。確実にダメージは入ってるみたいだけど……。
カニは攻撃してくる。ハサミによる攻撃を今度は受け損ない、ダメージを受けた。
「く……」
僕は少し下がる。
「《白魔法:治癒Ⅱ》」
アメリーさんの回復。僕はほぼ全回復した。
敵が固く、戦いは長引きそうだ。とはいえ、仕方ないか。
「二人とも下がれ、《第一の切り札:風車》!」
シビラがトランプを使った。無敵状態になり、攻撃を反射できるらしい。
カニの攻撃を跳ね返すシビラ。僕とミレーヌは一時下がった。
「《第二の切り札:決闘》!」
更にミレーヌも切り札を使った。指定した相手への攻撃力が上がる。
「よーし、それなら! 《第二の切り札:想いの力》!」
そしてレナータの切り札で、ミレーヌの能力が飛躍的に上がった。
「つああ!」
そうして蟹を攻撃するミレーヌ。凄いパワーでダメージを与える。更に敵の攻撃は剣で弾く。
「これでも食らいなさい! 《コンボA》!」
ミレーヌが宣言する。コンボを設定しておくと、自動的に連続技を発動できる。
「《剣技:華麗なる一撃『撫子』》!」
袈裟斬りの斬撃!
「《剣技:流麗なる一撃『菊花』》!」
返しの切り上げ、そして、
「《剣技:血に染まれ『牡丹』》!」
更に薙ぎの一撃。蟹はバラバラになって死んだ。
戦闘に勝利しました!
全員レベル23になった!
宝箱を見つけました。
「お、宝箱だね!」
僕は言った。
「何が出るかな」
メリッサは開けた。
それは、★力の指輪、と表示された。
「素晴らしいね! これもおにいちゃん用だよ」
メリッサが言った。
「そうなの? 何か悪いね」
僕は言った。
「良いんだよ。ラッキーだよ、おにいちゃん」
メリッサはそう言った。
僕達は30階へと進んだ。先には、荒涼とした砂漠が見える。
「この先は砂漠なの?」
僕は聞いた。
「そうだね。まあ、海ほど危険な所では無いよ。グラップラーが居れば何とでもなるよ」
そういうメリッサ。
「私はここまで来たことはないね。楽しみ~」
そういうおねえちゃん。
「私もあんまりここまで来たことは無いな。今回は行けそうって感じがするな」
そういうシビラ。
「とりあえず今日は帰りましょう。このまま進むのは流石に危険ですし」
そういうレナータ。
「そうですね。帰還して良いですか?」
アメリーさんが言った。
「もちろんです。帰りましょうか」
シビラはそう言った。