第三十一話 ごみ掃除
この島は、汚れている!
主に観光客のせいなんだけど。そしてそれを掃除する活動が月に一度行われている。
が、しかし、その活動は実に寂れていた。おばちゃんとおっちゃんが二人ぐらいでやってる感じだ。まあこの暑さだし、死ぬかもしれんから仕方ないけど。
それにしても、前は草抜きで今回はゴミ掃除と言うのも、なんかボランティア活動っぽくてだるいけど、まあ訓練になるし良いか……。
「薫くん、よく来てくれたね」
いつものおばちゃんが居た。元気だ。僕はゴミ袋を受け取り、島を探索することにした。あらゆるゴミを徹底的に掃除し、島を綺麗にするのだ。
そうして僕は島に落ちているゴミを拾い始めた。お菓子の袋、水風船、よくわからないポリ箱とか空缶とか、タバコの吸い殻とか、まあ何でも落ちてはいる。
それらを排除していると、とんでもないものを見つけた。
女性が一人、寝ていた。
いや、正確には気を失っているようだ。暑いし。確実に死ぬだろう。ヤバい。
「何をしてるんだ!」
僕はひとまず起こすことにした。女性は、何とか起きた。
「あら~、お星さまが~」
ヤバい。ヤバすぎる。幻覚を見ているのだろう。
「大丈夫ですか? こんな暑い所で寝ていたら死にますよ」
僕は忠告した。
「あはは~、そうですね。水をいただけますか~?」
そんなことを言ったので、水筒の水をあげた。ごくごく、と飲む。
「ふう。助かりました……。あなたは命の恩人ですね。ありがとうございます」
そういう女性。とても美人だ。僕よりはちょっと年上だろうか。長い黒髪と白いワンピースで、お嬢様っぽい。
「いえ、当然の事をしたまでですが……、気を付けてくださいね。今年も暑いですから」
僕は言った。
「そうですね。避暑に来たのですが、ここも結構暑くて……」
彼女はそう言った。
「へえ、本土の方で? まあ僕も最近はあまりこの島には居ませんけどね」
僕は言った。
「そうでしたか~。あ、良かったら私の別荘に来ませんか? ジュースぐらいなら出しますので~」
そう彼女は言った。
「よろしいので? 何か悪いですね」
僕は言った。
「いえいえ、お礼もしたいですからね~」
彼女はそう言った。
彼女の別荘らしきところに着いた。木造であんまり大きくはないようだが、別荘という時点でお金持ちだろう。
「はい、どうぞ~」
彼女はそう言って、ぶどうジュースを出してくれた。
「ありがとうございます」
僕はそれを飲んだ。とてもおいしい。
「私は黒田静と申します。本当に、何とお礼を言っていいか……」
そういう黒田さん。
「いえ、こちらこそジュースまでいただいて……。ありがとうございます」
僕は感謝した。
「元気そうじゃな、薫」
突然横から声をかけられた。聞きなれた声だが……。
そこには見た顔が居た。僕にこの島で色々格闘術を教えてくれた師匠だ。
「師匠? 何故ここに?」
僕は聞いた。
「ここはワシの家じゃ。ちなみに静はワシの孫娘じゃ」
そういう師匠。
「そうでしたか」
僕はそう言った。
「あらあら、おじい様のお弟子さんでしたか。とてもお強いとか」
静さんはそう言った。
「ふん。大したことはないぞ。大体なまっておるんじゃないかな」
師匠は言った。
「頑張ってトレーニングはしてますが、まあ本土でのようにはいかないですね」
僕は言った。
「トレーニングすれば強くなるというものでは無いぞ。ワシが稽古をつけてやろう。こっちに来い!」
そういう師匠。
「はあ、わかりました」
僕は言った。
「頑張ってくださいね。ええと、薫さんでしたか」
静さんは言った。
「ええ、静さん。頑張りますね」
僕は言った。
そうして道場らしきところに行った。こんなところがあったとは……。
「さあかかってこい」
そういう師匠。
「はい!」
僕は突撃して攻撃した。
しかしすっとかわされ、拳の一撃を食らう。
「うぐ!」
僕は撤退する。
「まだまだ!」
そういう師匠。
「てえい!」
僕は突撃するが、またすっとかわされ、拳の攻撃を食らった。
「ぐう……」
僕は胸を抑え、うずくまった。
「全くダメじゃな。全然上達しとらんぞ」
そういう師匠。
「ううむ、何故でしょう?」
混乱する僕。
「要するに、お前はアスリートなのだ」
そういう師匠。
「? それはそうでしょうが……」
僕はそう言った。
「それでは駄目だ。武術家にならなければならん。そのためには、動きをもっと洗練させる必要がある」
師匠はそう言った。
「動き、ですか」
「うむ。もっと自然体に近い状態で構えて、回避、防御、攻撃を一度に行うのだ。『一つの動き』だな」
師匠は言った。
「そ、そんなことができるでしょうか?」
驚く僕。
「できる。みんなそうしてるものよ。アスリートになってはならん」
そういう師匠。
「はあ、そうですか……」
僕は構える。
師匠が襲い掛かる。僕は何とか動こうとするが、殴られてしまう。
「駄目じゃダメじゃ。もっとこう、体を浮き上がるように構えねば」
そういう師匠。
「浮き上がる……」
僕は何とかその言葉通りにしようとする。
師匠が攻撃する。それを回避しようとするが、師匠の攻撃の方が断然早い。
「駄目じゃダメじゃ。力を抜け!」
そういう師匠。
「はい……」
何とか無心になれないものか……。
師匠が襲い掛かる。僕は、ふっと左にかわし、右こぶしを入れた。ガードされる。
「! そうじゃ。その感覚を大事にせよ」
師匠が言った。
「なるほど、こうですか……」
僕は言った。
「まあ、実戦で使うにはまだまだじゃろうが。きちんと修行せえよ」
そういう師匠。
「ありがとうございます、師匠」
僕は感謝した。
「終わりましたか?」
静さんがやってきた。
「ええ」
僕は言った。
「お疲れさまでした。またいつでも遊びに来てくださいね」
彼女はそう言った。
「ありがとうございます」
僕はそう言った。




