表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジックガールズ・センテナリーフェスタ  作者: 秀一
第三章 海の階層 21階~30階 呪われし墓場
34/133

第三十一話 ごみ掃除


 この島は、汚れている!

 

 主に観光客のせいなんだけど。そしてそれを掃除する活動が月に一度行われている。

 

 が、しかし、その活動は実に寂れていた。おばちゃんとおっちゃんが二人ぐらいでやってる感じだ。まあこの暑さだし、死ぬかもしれんから仕方ないけど。

 

 それにしても、前は草抜きで今回はゴミ掃除と言うのも、なんかボランティア活動っぽくてだるいけど、まあ訓練になるし良いか……。

 

「薫くん、よく来てくれたね」

 いつものおばちゃんが居た。元気だ。僕はゴミ袋を受け取り、島を探索することにした。あらゆるゴミを徹底的に掃除し、島を綺麗にするのだ。

 

 そうして僕は島に落ちているゴミを拾い始めた。お菓子の袋、水風船、よくわからないポリ箱とか空缶とか、タバコの吸い殻とか、まあ何でも落ちてはいる。

 

 それらを排除していると、とんでもないものを見つけた。

 

 女性が一人、寝ていた。

 

 いや、正確には気を失っているようだ。暑いし。確実に死ぬだろう。ヤバい。

 

「何をしてるんだ!」

 僕はひとまず起こすことにした。女性は、何とか起きた。

「あら~、お星さまが~」


 ヤバい。ヤバすぎる。幻覚を見ているのだろう。

 

「大丈夫ですか? こんな暑い所で寝ていたら死にますよ」

 僕は忠告した。

「あはは~、そうですね。水をいただけますか~?」

 そんなことを言ったので、水筒の水をあげた。ごくごく、と飲む。

 

「ふう。助かりました……。あなたは命の恩人ですね。ありがとうございます」

 そういう女性。とても美人だ。僕よりはちょっと年上だろうか。長い黒髪と白いワンピースで、お嬢様っぽい。

 

「いえ、当然の事をしたまでですが……、気を付けてくださいね。今年も暑いですから」

 僕は言った。

「そうですね。避暑に来たのですが、ここも結構暑くて……」

 彼女はそう言った。

「へえ、本土の方で? まあ僕も最近はあまりこの島には居ませんけどね」

 僕は言った。

「そうでしたか~。あ、良かったら私の別荘に来ませんか? ジュースぐらいなら出しますので~」

 そう彼女は言った。

「よろしいので? 何か悪いですね」

 僕は言った。

「いえいえ、お礼もしたいですからね~」

 彼女はそう言った。

 

 彼女の別荘らしきところに着いた。木造であんまり大きくはないようだが、別荘という時点でお金持ちだろう。

「はい、どうぞ~」

 彼女はそう言って、ぶどうジュースを出してくれた。

「ありがとうございます」

 僕はそれを飲んだ。とてもおいしい。

 

「私は黒田静と申します。本当に、何とお礼を言っていいか……」

 そういう黒田さん。

「いえ、こちらこそジュースまでいただいて……。ありがとうございます」

 僕は感謝した。

 

「元気そうじゃな、薫」

 突然横から声をかけられた。聞きなれた声だが……。

 

 そこには見た顔が居た。僕にこの島で色々格闘術を教えてくれた師匠だ。

 

「師匠? 何故ここに?」

 僕は聞いた。

「ここはワシの家じゃ。ちなみに静はワシの孫娘じゃ」

 そういう師匠。

「そうでしたか」

 僕はそう言った。

 

「あらあら、おじい様のお弟子さんでしたか。とてもお強いとか」

 静さんはそう言った。

「ふん。大したことはないぞ。大体なまっておるんじゃないかな」

 師匠は言った。

「頑張ってトレーニングはしてますが、まあ本土でのようにはいかないですね」

 僕は言った。

 

「トレーニングすれば強くなるというものでは無いぞ。ワシが稽古をつけてやろう。こっちに来い!」

 そういう師匠。

「はあ、わかりました」

 僕は言った。

「頑張ってくださいね。ええと、薫さんでしたか」

 静さんは言った。

「ええ、静さん。頑張りますね」

 僕は言った。

 

 そうして道場らしきところに行った。こんなところがあったとは……。

 

「さあかかってこい」

 そういう師匠。

「はい!」

 僕は突撃して攻撃した。

 しかしすっとかわされ、拳の一撃を食らう。

「うぐ!」

 僕は撤退する。

 

「まだまだ!」

 そういう師匠。

「てえい!」

 僕は突撃するが、またすっとかわされ、拳の攻撃を食らった。

「ぐう……」

 僕は胸を抑え、うずくまった。

 

「全くダメじゃな。全然上達しとらんぞ」

 そういう師匠。

「ううむ、何故でしょう?」

 混乱する僕。

 

「要するに、お前はアスリートなのだ」

 そういう師匠。

「? それはそうでしょうが……」

 僕はそう言った。

 

「それでは駄目だ。武術家にならなければならん。そのためには、動きをもっと洗練させる必要がある」

 師匠はそう言った。

「動き、ですか」


「うむ。もっと自然体に近い状態で構えて、回避、防御、攻撃を一度に行うのだ。『一つの動き』だな」

 師匠は言った。

「そ、そんなことができるでしょうか?」

 驚く僕。

「できる。みんなそうしてるものよ。アスリートになってはならん」

 そういう師匠。

「はあ、そうですか……」

 僕は構える。

 

 師匠が襲い掛かる。僕は何とか動こうとするが、殴られてしまう。

「駄目じゃダメじゃ。もっとこう、体を浮き上がるように構えねば」

 そういう師匠。

「浮き上がる……」

 僕は何とかその言葉通りにしようとする。

 

 師匠が攻撃する。それを回避しようとするが、師匠の攻撃の方が断然早い。

「駄目じゃダメじゃ。力を抜け!」

 そういう師匠。

「はい……」

 何とか無心になれないものか……。

 

 師匠が襲い掛かる。僕は、ふっと左にかわし、右こぶしを入れた。ガードされる。

「! そうじゃ。その感覚を大事にせよ」

 師匠が言った。

「なるほど、こうですか……」

 僕は言った。

 

「まあ、実戦で使うにはまだまだじゃろうが。きちんと修行せえよ」

 そういう師匠。

「ありがとうございます、師匠」

 僕は感謝した。

 

「終わりましたか?」

 静さんがやってきた。

「ええ」

 僕は言った。

 

「お疲れさまでした。またいつでも遊びに来てくださいね」

 彼女はそう言った。

「ありがとうございます」

 僕はそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ