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マジックガールズ・センテナリーフェスタ  作者: 秀一
第二章 森の階層 11階~20階 潜む悪意
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第二十九話 草抜き


 その日もまた、ありえない暑さだった。

 

 この島は結構涼しいはずなのだが、太陽が容赦なさすぎる。連日連夜、危険な暑さのオンパレードが続く。この国は、どうなってしまったのか……。

 

 しかし怠けているわけにはいかない。僕はきちんと訓練を積んでおかなければならない。本土に帰って、なまっているわけにはいかないのだ。

 

「行ってきます」


 僕は走る。とにかく走ろうと決めていた。暑いけど。

 

 灼熱地獄の中、生命の姿はあまり見えない。蝉は鳴きまくってるけど。まあ蝉は良く死んでいるので、どっこいどっこいだろう。

 

 島の外周を走っていると、人の姿を見つけた。この地獄の中、農作業をしているようだ。大丈夫か?

 

「どうも、こんにちはー」

 僕は声をかけた。

「ん? ああ、薫くんじゃん」

 虚ろな目で声を返してくれたのは、向日葵さんだ。

 

「大丈夫? 今日は暑いですよ」

 僕は言った。

「いつもだしね。たまには草取りぐらいはしないと」

 そう言って水を飲む向日葵さん。

 

「良かったら手伝いましょうか」

 僕は言った。

「良いの? 悪いと思うんだけど」

 恐縮する向日葵さん。

「構いませんよ。訓練になりますしね」

 僕はそう言った。

「じゃあお願いしようかな。蜂や蛇には気を付けてね」

 向日葵さんはそう言った。軍手を借りた。

 

 そんなわけで、草取りを始めた。根っこからちゃんと取るのは難しい。僕は下手糞だ。

 でもまあ、気にせずにブチブチと雑草を抹殺していく。

 

「あはは、豪快だね、薫くん」

 笑う向日葵さん。

「すいませんね」

 僕は謝った。

「良いんだよ。その調子でヨロシク」

 向日葵さんは言った。

 

 僕はひたすら草を抜いていく。草抜きマシーンと化し、草と同化するのだ。そうすると死ぬけど。まあそれはともかく、ひたすらに草を抜いた。

 

 ゴミ袋に詰めていく。あっという間にゴミ袋が溜まっていく。

 

「それじゃ、このへんにしようか」

 向日葵さんは言った。

「良いんですか?」

 僕は聞いた。

「十分だよ。あんまり君に迷惑かけるのもね」

 向日葵さんはそう言った。

 

 結構ゴミ袋はたまった。5袋ぐらいはある。

 

「君のお陰で凄くはかどったよ。ありがとうね」

 向日葵さんは言った。

「いえ、僕も訓練になりましたから。それじゃあ」

 僕は去ろうとしたが

「ああ、待って。スイカでも切るからさ、食べて行きなよ」

 彼女はそう言った。

「良いんですか? 何か悪いような」

 僕はそう言った。

「悪くなんてないさ。代金だと思ってね」

 向日葵さんはそう言って、小屋に入った。そこは電気が通っていて、スイカもあるみたいだ。まな板も。

 

 適当にスイカをぶった切り、塩をかけて渡してくれた。

 

「どうぞどうぞ」

「それじゃあいただきます」

 僕はそう言って食べた。甘い!

 

「おいしいです!」

 僕は叫んだ。

「あはは、ありがとう。こんなのでよければいくらでもあげるからさ」

 向日葵さんはそう言った。

「ありがとうございます」

 僕は感謝した。

 

「薫くんはさ、将来はどうするの?」

 向日葵さんはそう聞いた。

「ん、そうですね。まあ、普通に就職してってなると思いますが」

 僕は言った。

「そっか。そうだよね。私は多分農家だしさ」

 向日葵さんはそう言った。

 

「農家も悪くはないと思いますけどね。農地は増えてるでしょうし」

 僕は言った。

「担い手が減りまくってるからね。私も何やかんや色んな所を扱ってるよ。忙しいんだよ」

 そういう向日葵さん。

「大変なんですね……」

 僕は言った。

「薫くんが手伝ってくれても良いんだよ」

 そういう向日葵さん。

「いつもというわけにはいかないですね」

 僕はそう言った。

「そっか……」

 向日葵さんはそう言って、夏の空を眺めていた。

 


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