第二十五話 デート
ゲーム内。
私とおにいちゃんは、二人でゲーム内に入った。でもソニックレイジのメンバーはまるで揃ってないみたいだ。
まあそういうこともあるんだけど……。
「すぐに攻略とはいかないみたいだね。どうする? 秋奈ちゃん」
おにいちゃんがそう言った。
「どうしようかな……。おにいちゃんに任せるよ」
私はそう言った。
「そう言われてもね……。このゲームについては、僕は全然知らないし。何かスポットとかあるの?」
おにいちゃんが聞いた。確かにそうだ。おにいちゃんはこのゲームについては初心者だし……。
「そうだね。噴水とかならあるけど」
私はそう言った。
「良いね、行こうか」
おにいちゃんはそう言ってくれた。
もちろんこのゲームについては私は詳しい。隅々まで知っていると言っても過言ではない。とはいえ、攻略はしてないし、まだ知らなかったり、色々変化してる部分もあるかもしれないけど。
でも始まりの街の東には、お洒落なスポットがたくさんある。おにいちゃんとデート、と言えるのかな。まあおにいちゃんが女の子になっちゃってるのがアレだけど……。
噴水はもちろんあった。割と複雑な噴射を見せている。現実だとちょっと無理だろう。涼しさが広がる。
「へえ、良い所だね。それにお洒落だよ」
おにいちゃんが言った。
「このあたりはお洒落スポットなんだよ、おにいちゃん」
私は言った。
「そうなんだね。秋奈ちゃん、お洒落だから」
おにいちゃんは言った。
「そ、そんなことはないよ」
慌てる私。
おにいちゃんはたまにこんなことを言う。ドキッとしてしまうけど、きっとどんな女の子にも言ってるんだ。間違いない。
それにしても、この東地区にはデートスポットになりそうな場所がたくさんある。このゲームのコンセプトが謎すぎるけど。
「おにいちゃん、どこか行きたいところある? 動物園とか図書館とか、美術館とかあるんだけど」
私は言った。
「動物園は良いかもね。あんまり行ったことはないし」
おにいちゃんが言った。ちょっとお子様っぽいところもあるよね、おにいちゃん。
動物園に入った。さっそく迎えてくれるのが、でかい象さんだ。
パオーン! と声を上げ、水をぶちまけ、草を食べている。
「おお、大きいね」
おにいちゃんが言った。実際かなり大きいけど、まあ現実で居るぐらいではあるらしい。
その先には猿山がある。ボス猿の座を狙い、日夜骨肉の争いが繰り広げられている。
「あっちにはゴリラが居るよ。こっちは熱帯の動物だね」
私は言った。
「秋奈ちゃん、詳しいんだね」
驚くおにいちゃん。
「まあ、たまに暇つぶしで来てるからね。島だとこんな動物には会えないしさ」
私は言った。
ライオンも放し飼いにされている。現実だとありえないけど、このゲームなら問題ない。攻撃力は0になっているし。
キリンの群れとフラミンゴの群れが競争していた。きっとフラミンゴが勝つだろう。
「お、パンダも居るね。割と何でもいるんだね」
おにいちゃんは言った。
「そりゃもちろん」
私は言った。
その後レストランに行った。普通のレストランだ。私とお兄ちゃんはハンバーグ定食を食べることにした。
「おいしいね、秋奈ちゃん」
「うん、おにいちゃん」
やっぱり、おにいちゃんと居るのは楽しい。できればこのまま、ずっと……。
「秋奈ちゃんは、幸せ?」
おにいちゃんが聞いた。
「うん。おにいちゃんは?」
私も聞いた。
「もちろん幸せだよ」
おにいちゃんが言った。
その言葉の意味はきっと重くて……。おにいちゃんだから、きっと。でも、私なんかでもおにいちゃんを幸せにできるなら、きっとそれは良い事だ。
「おにいちゃん」
「ん?」
「また来ようね」
「うん」