第二十三話 撤退
ゲーム内。
僕達は、いよいよ11階に踏み込むことになる。準備は一応、万端だ。
「さあ進むぞ! 進むぞ! 進むぞ!!」
大事な事なので三回言ったらしいシビラ。
「それは良いけど。どういうパーティーで? あ、私は当然連れて行ってよね」
そういうメリッサ。
「当然だな。とはいえ、後は割と自由なんだよな。誰かやりたい人~」
割と適当なシビラ。
「それやったらウチを連れて行ってや。何か全然活躍できてないし」
そういうカトリーナ。
「そういやアルケミストだっけ? 何色なの?」
オリアーヌが聞いた。
「赤やで」
そういうカトリーナ。
「やっぱり脳筋じゃないか! 何だこのパーティーは! 脳筋しかいないのか!」
叫ぶオリアーヌ。
「ヤバいね……。脳筋ウィルスに侵されてるよこのチーム」
メリッサも警鐘を鳴らす。
「ちなみに赤のアルケミストっては何ができるの?」
僕は聞いた。
「よくぞ聞いてくれました! パーティーの攻撃力をガンガン上げる事ができるんやで!」
叫ぶカトリーナ。
「なるほど……。どう考えても脳筋だね」
納得する僕。
「まあ脳筋でも何でも良いけどさ。他にやりたい奴は?」
シビラは聞いた。
「私としては、弓を試したいけどね」
そういうミルヤ。
「そうすると後衛ばっかりになってしまうね。前衛は私とカオリちゃん、シビラで行こうか」
そういうミレーヌ。
「前衛って大体そんな感じになるんだね」
僕は言った。
「まあこのゲームの前衛ってその三人だけだしな。あとはみんな後衛だし……」
シビラは言った。
そんなわけで、
前衛:僕、ミレーヌ、シビラ
後衛:ミルヤ、メリッサ、カトリーナ
というパーティーができた。
ワープ装置を使い、10階へ。そこから、11階へと進む。
そこは、日の光が差し込む森だった。
「おお、何とも爽やかな森だね。何で塔の中に森があるのか謎だけど」
僕は言った。
「細かい事はええやん。ささ、先に進もうや」
カトリーナはそう言った。
11階。
エルフの剣士が相手のようだ。三人いる。
「初っ端にしてはハードだね。どう戦う?」
おねえちゃんが聞いた。
「任せとき。《赤錬金:攻撃のカード》!」
キュイーン、と全員の攻撃力が大幅にアップした。
「へえ、全員に効果があるのか。これは凄いね」
僕は言った。
「せやろ? あくまで補助魔法やけど、そういう意味ではアルケミストは強力なんやで」
カトリーナは言った。
「んじゃ早速試し撃ちと行こうか」
そう言って、ミルヤが弓矢を構え、射撃した。
一体のエルフに命中し、凄いエフェクトが発生して即死した。
「何か派手だね」
僕は言った。
「アーチャーは凄いクリティカルが出るんだよ。きっとありえないダメージが出たね」
ミルヤは言った。
エルフ二体が襲ってくる。一体はミレーヌ、一体はシビラへ。
「はあ!」
ドスドス、と槍のリーチを生かして戦うシビラ。しかしミレーヌは敵の攻撃をまともに食らってしまう。
「くっ!」
ダメージを受け、下がるミレーヌ。すぐさま僕が割って入った。
「やらせない!」
右拳を食らわす。ズガン! と命中し、のけぞった。
「それ!」
ミルヤが射撃、命中する。またも強烈なエフェクトが発生し、即死するエルフ。
「てえい!」
更にミルヤは射撃。シビラと戦っていたエルフも一撃を受け、即死した。
戦闘に勝利しました! 経験値45とジェニー45を得ました。
「凄いね。アーチャー滅茶苦茶強くない?」
僕は聞いた。
「まあね。強力な武器も入ったし、活躍して見せるよ」
ミルヤは言った。
「アーチャーは昔から強いんだよねこのゲーム。まあ、矢のお金がかかるという弱点はあるけど……」
メリッサが言った。
しばらくキャンプして回復し、進む。12階へ。
ラビット二体だ。
「あれ、ここにも兎出てくるんだね」
僕は言った。
「たまにはね。まあ一階のよりはちょっと強いけど、まあ弱いよ」
おねえちゃんは言った。
向かってくる兎。ちょっと可愛い。
容赦なく叩きのめし、撃破した。
13階へ。今度は大きなカエルのようだ。
「こいつは?」
僕は聞いた。
「見ての通りのカエルだね。結構強いよ。打撃は効きにくいしね」
メリッサが教えてくれる。
「その代わり弓矢は効きやすいんだよね。仕留めるよ」
そう言ってミルヤが射撃。命中する。
向かってくるが、シビラが槍で突きさし、倒した。
戦闘に勝利しました!
全員レベル12になった!
14階へと進む。順調だが。
巨大なクワガタが相手のようだ。
「なかなか大きいね。売れば儲かりそう」
僕は言った。
「残念だけど、売るのは無理だろうな」
シビラは言った。まあゲームだしね。
襲い掛かるクワガタ。殴るが、ダメージは乏しい。シビラが槍で突き刺すと、大ダメージが入った。
さらにミルヤの射撃が決まり、クワガタは死んだ。
戦闘に勝利しました! 経験値19とジェニー25を手に入れた。
「打撃が効かなかったね。槍は効いたみたいだけど」
僕は言った。
「ここから徐々にそういう敵も出てくるよ。力を合わせないと進めないのさ」
シビラは言った。
15階へと進んだ。突然暗くなり、周りが見づらくなる。音楽も変わり、それまでの楽しそうな音楽から、ジャングルの恐怖を引き起こすような変な鳥の鳴き声とかに変わった。
「うう、やっぱりこのゲーム、ホラーだと思うんだけど」
僕は言った。
「怖いの?」
笑うおねえちゃん。
「こ、怖くないよ!」
強がる僕。
と、突然炎の球が飛んできた。危ない!
バシン! ドーン! とダメージを受ける。
「な、何だ!?」
混乱する僕。
「しまった! 《超能力:感知》!」
メリッサがすぐさま超能力を使った。すると、木の上の方に『エルフの魔術師』と表示された。しかも3人居るようだ。
「厄介だね。てえい!」
ミルヤが矢を放つ。しかし外れる。
「むう、《赤錬金:命中のカード》!」
カトリーナの能力で命中率が上がる。
しかし地の利は敵にある。しかも奇襲攻撃だ。これはまずい!
「これは無理だね。撤退を!」
メリッサが言った。
「て、撤退って!?」
僕は聞いた。
「逃げるの! 早く!」
メリッサはそう言った。
すぐさま、僕達は距離を取る。敵の射程から離れた。
「ふう、ここまで来れば安心かな」
シビラは言った。
「ごめんね。油断してたよ」
メリッサが謝罪した。
「気にしなくていいよ。こういうこともあるしさ」
ミレーヌは言った。
「とりあえず、今日はここまでにしようか」
僕は言った。
「そうだね。あそこは通れないだろうし……。《超能力:帰還》」
メリッサが超能力を使い、街へと帰還した。




