第九十四話 朝の読書
その日も僕は、朝早くにゲーム内に入った。
いよいよラスボス戦だ。長くなりそうだ。しかしまあ、今日でこのゲームも終わりだろう。そう考えると寂しくもある。
僕は適当に城内をほっつき歩いていた。何となく大学へ行き、図書館に行った。
漫画でも読もうかな、と思っていたのだが、本を読んでいるアメリーさんを見つけた。
「おはようございます、アメリーさん。早いですね」
僕は言った。
「あら、カオリ様。おはようございます」
優雅に言うアメリーさん。気品があるな。
「何を読んでおられるのですか?」
僕は聞いてみた。
「コミュニケーションの本ですわ。私人と仲良くなるのが得意では無いので」
意外な事を言うアメリーさん。
「そんなことは無いと思いますが……」
正直に言う僕。
「そうでしょうか? でも色んな人と仲良くなりたいと思いましてね」
アメリーさんはそう言った。
「おはようございます~」
のんびりした調子で挨拶してくれるイリーナ。
「おはよう。イリーナも読書?」
僕は聞いた。
「ええ。アメリーさんとよく本を読んでるんですよ~」
そういうイリーナ。意外だな。
「割と良い本が多いんですよね。まあ、ダウンロードするとお金がかかる本もあるので、ここで読むのが一番なんですけど」
アメリーさんはそう言った。
「そうなんだ……。知らなかったな」
読書とは縁が遠い僕。
「カオリちゃんも何か読んでみたらどうですか~? おすすめは中国の古典とかですかね~?」
渋い選択をするイリーナ。
「そんなヘビーなのはちょっと……。ライトノベルとか無いの?」
そう聞く僕。
「ありますよー。漫画とかもありますし」
そういうアメリーさん。
「そりゃいいや。せっかくだし、読んでこようかな」
僕はそう言った。
「もう、お子様ですねカオリちゃんは~」
そういうイリーナ。