第八話 新聞部
僕は家に帰った。少し勉強をした。
朝ごはんはちょっとだけパンを食べた。割とお腹は一杯だ。
「へえ、おにいちゃん朝市行ってたの? まだちょっと早いと思うけど」
秋奈ちゃんはそう言った。
「まあね。ちょっと手伝いをしてきたよ」
僕はそう言った。
「私は学校の部活があるから、もう行くね」
おねえちゃんはそう言って、出かけて行った。
「行ってらっしゃい」
僕はそう言った。
「お兄ちゃんはどうする?」
聞く秋奈ちゃん。
「んー、トレーニングでもしようかな。何か買っておくものとかある?」
僕は聞いた。
「そうね。チーズでも買っておいてもらおうかしら」
おかあさんが言った。
「んじゃさ、アイス買っといてよ。ついでにジュースも!」
そんなことを言う秋奈ちゃん。
「はいはい。チーズにアイス、ジュースね」
僕はメモって、出かけることにした。
僕は外を走る。ひとまずのランニング。
海が見える。キラキラと朝日に輝く青い美しい海だ。対岸に本土も見える。
しばらく行くと、中学校が見えた。思い出の学校だ。
「誰か居るかな」
僕は中に入ってみた。夏休みだし、誰もいないかもしれない。
この体育館にはトレーニングの施設がちょっとある。僕はそれを使っていい事になっていた。今はどうか知らんけど。
体育館に居ると、見知らぬ女の子たちが何かやっていた。小さい女の子が全力でランニングマシンを使っている。
「ほらキャプテン! 頑張ってー」
「根性! 根性ですよ!」
応援する周りの女の子たち。だが当の本人はヤバそうだ。
「うひい……、も、もうあかんわ……」
そう言って倒れ、後ろに引きずられる。落ちる!
「危ない!」
僕は叫び、彼女を後ろから抱きかかえ、支えた。
「ふう……」
大丈夫だったようだ。危ない危ない……。
「な、なんや!?」
慌てる女の子。ていうかこの子、関西弁だな。まあ僕も関西に行っているので、よく解るけど。
「キャプテン! 白馬の王子様です!」
「きゃー! もうお嫁に行くしか!」
騒ぐ二人の少女。
「いや、こんな事で人生を決められても……。ていうか、ランニングマシンは無理すると危ないよ。ああ、こんな速度にして……」
僕は速度を下げ、マシンをおとなしくさせた。
「ふう……。ありがとうございました。ていうか、どっかで見た事あるな、あんた……」
そういう関西弁の女の子。うーん、僕も見たことあるか?
「この人、秋奈のおにいさんじゃ?」
「秋奈ちゃんとこの人だね」
そういう二人。
「まあ、そうだね。今は本土に行ってるけどね。雨宮薫です。よろしく」
僕はそう言った。
「やっぱり薫おにいさんやな。浅見優奈と言います。よろしく!」
優奈ちゃんはそう言った。
「篠崎由美です!」
「坂上萌恵だよ! よろしくね、薫おにいさん!」
そういう女の子たち。
「今日は久々に昔のトレーニング場に来て見たんだけど、君たちは?」
僕は聞いた。
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました!」
何か超カッコつける優奈ちゃん。手をかざす。
「私達は新聞部! よって何か面白いネタが無いか探しとったんや!」
優奈ちゃんはそう言ってのけた。
「つまり暇だったって事? まあ良いけどさ……」
呆れる僕。
「あはは、でもネタなら見つかったじゃん。おにいさんはネタの塊っぽい気がするね」
由美ちゃんはそう言って僕を指さした。
「だよね! さあおにいさん! 面白い話をプリーズ! 記事にしてあげるよ!」
そういう萌恵ちゃん。
「いや、別にしていらんけど。ていうか、何でランニングマシンを使ってたのかも意味不明なんだけど……」
僕はそう言った。
「たまには汗を流したくなることもあるんや。この島じゃ、ネタもやることもあんまりないしな……。最近も、ニュースと言えば例の『マジックガールズ』ぐらいかな」
そういう優奈ちゃん。
「ん、そのゲームの名前が出てくるとはね。流行ってるわけ?」
僕は聞いた。
「お、おにいさん知ってるの? まさかやってるとか?」
聞く由美ちゃん。
「まあ……」
認める僕。
「うはあ! これは凄い! おにいさんは実は魔法少女好きの変態だったんだね! よし記事にしよう! いますぐに!」
宣言する萌恵ちゃん。
「いや、それはマジでやめてほしいんだけど……」
本気で嫌な僕。
「まあ、賞金も出るしな。ウチらも新聞部として賞金とネタを狙っとるんやで。せや、おにいさんも新聞部に入ってや」
そういう優奈ちゃん。
「そりゃ無理だよ。僕は『ソニックレイジ』に入ったからね」
僕はそう言った。
「ソニックレイジってあの桃花さんの?」
そう聞く由美ちゃん。
「まあそうだね」
僕は言った。
「へえ、あそこは資金不足だと思うけどなあ。まあこの島だとチーム作るのも苦労するよね」
そういう萌恵ちゃん。
「資金不足って……、お金かかるの?」
僕は聞いた。
「何や知らんのか? マジックガールズはありえないぐらい金がかかるゲームとして有名やったんやで。まあ、最近は大分ましになったらしいけどな」
そういう優奈ちゃん。
「へえ、そうなのか。そうすると百万円貰えるってのも、あながち赤字ってわけじゃないのかな」
僕はそう言った。
「女の子からお金を吸い上げまくる悪魔のゲームとも言われるからね。そりゃ今回みたいに還元もたまにはしてくれないと、割に合わないよ」
由美ちゃんはそう言った。
「そういうことならさ、私達もソニックレイジに入れてくれない? 空いてるならでいいけどさ」
萌恵ちゃんは言った。
「ん? そんなこと僕にできるの?」
聞く僕。
「人数にもよるけど、多分できるんちゃうかな。12人までは組めるからさ。まあジョブとかの兼ね合いもあるけどな。まあ、ソニックレイジやったら知ってるし私らからアプローチしてもええで」
優奈ちゃんはそう言った。
「へえ、そういうことならお願いしようかな。僕ももし桃花に会ったりしたら話しとくからさ」
僕は言った。
「オッケー! よし! 目指すは百万円! ついでにマジックガールズの記事も書いて新聞も売って儲けるで!」
そういう優奈ちゃん。
「わーい!」「金だ金だー!」
金の事ばかり考える女の子たち。
「まあほどほどにね……。僕としては、ちょっとトレーニングしていきたいんだけどいいかな?」
僕は聞いた。
「もちろんええで。よし、それも取材させてもらおうか!」
そういう優奈ちゃん。
「まあ良いけどね。んじゃ、よろしく」
僕はそう言って、トレーニングを始めた。