24 これからのために
咲希ちゃんとの仲直りは偽物だった!
考えれば考えるほどそう思えてくる。
咲希ちゃんの謝罪を受け入れた日の翌日から、私たちは再び会話をかわすようになった、教室で、廊下で、校舎の外でも、それこそ顔をあわせればたびたび。
しかしその会話はとても無関心なものだった。咲希ちゃんから話を振ることもあれば、私から話題を提供することもあった。咲希ちゃんの話は私の注意を引かずに、上辺をなぞるばかりであった。私の話は途中から曖昧な力加減になり、手の届かぬところへ流された。喧嘩したばかりだから関係が不安定になっていた、というのもあると思う。けれども、根本的な在り方が違っていた。私も咲希ちゃんも、互いについて関心がないのではないだろうか。その考えをなかなか払拭できないでいた。私はそれを認めることにした。そうした方が自然であると思われた。
喧嘩をしたあとより、咲希ちゃんとの距離は近づいていたが、喧嘩をする前と比べると遠く離れていた。
今の私たちは、内容のない書類で繋ぎ止められていた。
こんな中途半端な関係は嫌だった。
咲希ちゃんと私は仲直りをしたはずだ。けれども、以前のように一緒に帰り道を歩くことはなかった。その事実を受けて私は、咲希ちゃんとの関係は不確かであるという疑いを、確信的なものにしていった。疑いを確信に変えるほど、咲希ちゃんと一緒に帰った道のりは、私の中で大切な存在となっていた。咲希ちゃんは、私と一緒に学校から帰っていたということを、忘れているに違いない。
いよいよ和解は絶望的なものになったのだ。
偽られた関係がこのまま続いていくのだろうか。そうなったら、私の恋は永遠に咲かなくなる。死んでしまったほうがましだ。……そうだ、死んでしまえばいい。咲希ちゃんを殺して自分も生を絶つ。それこそが最善だ。以前、私も思い描いていたではないか。ナイフを咲希ちゃんの一部にして、自身にもそれ突き立てる。私と咲希ちゃんは共になり、ずっと離れることはない……。
そんなことできるはずがない!
咲希ちゃんには生きていて欲しかった。私が関与するようなつまらない出来事で死んで欲しくない。咲希ちゃんの身体に異物をねじ込み、ぐちゃぐちゃしてしまったら、私までぐちゃぐちゃになってしまう。
……本当の仲直りをするしかない。
私は咲希ちゃんと仲直りする方法を知っていた。咲希ちゃんがしたように、ただ仲直りしようと言うだけでは、また今のような状態になってしまうかもしれない。ならばそれ以外の方法で……。
咲希ちゃんに私の気持ちを伝えよう。好きだと言おう。友佳ちゃんから告白されたとき、私はかつてないほどの幸福を味わった。咲希ちゃんにその幸福を感じさせるのだ。そして一切のことを話そう。咲希ちゃんを騙していた理由、私の計画全てを。
咲希ちゃんを愛する私にしかできない仕事だ。咲希ちゃんへの愛が試されているのだ。ここで負けるわけにはいかない。ここで挫けるわけにはいかない。
私の全てをかけて、咲希ちゃんを愛してみせよう。




