12 続き
咲希ちゃんの涙を見たその日から、私と友佳ちゃんとの溝は深まっていった(もちろんそれは演技)。教室で会っても、廊下で会っても、購買で会っても、つまり学校にいる大抵の時間は、私と友佳ちゃんの不仲を演出するために使われた。
そんな私たちを見て咲希ちゃんは、私が心に傷を受けていないかと、優しく丁寧に気遣ってくれた。私は彼女の新たな一面を知った。これまでは何も考えずにポケポケと生きているだけだと思っていた。もちろんそんな咲希ちゃんも魅力的だ。しかし今の彼女は、私を元気づけるために色々と考えてくれている。試行錯誤してくれている。そのことがなによりも嬉しかった。咲希ちゃんの思考は私に独占されていた!
友佳ちゃんと協力して行っている咲希ちゃんを手に入れるための作戦、そこから派生した咲希ちゃんと協力して行っている友佳ちゃんとの仲直り作戦、双方とも大きな動きはなかった。仲直り作戦が進展しなければ、咲希ちゃんを手に入れる作戦が先に進むことはない。仲直り作戦は手に入れる作戦の内にあるものだから。
焦って変な出方をしてはいけない。友佳ちゃんと仲直りする方法を咲希ちゃんが考えてくれているのだから、今は大人しく待つべきだ。こちらから手出しをしてはいけない。
しかし限度というものがある。もし咲希ちゃんがいい案を思いつかないまま一ヶ月、二ヶ月が過ぎるようであれば、こちらもまた新たな手を打たなければならない。そんな永い間、友佳ちゃんと仲違いをしているのは望ましくない。友佳ちゃんと話をしないのが普通になり、二人の仲は本当に裂かれてしまいそうだから。そんなの嫌だ。友佳ちゃんとは永遠に友達でいたい。永遠とはいかなくとも、自分から離れていくようなことはしたくない。流れに抗えなくなるなり翻弄されるなんて惨めではないか。