墜落男のエピローグ
黒い空、黒い雲、そして月。眼下にはビルの灯り、人の営みの灯り、美しい夜景。
男がいるのはビルの屋上、人の足跡や会話の声、喧騒が届かないほどの高さがあるビル屋上の縁の上、男がここに立っている理由を語る必要もないだろう。わかる人間には解るし、わからない人間には解るはずもない。
今まさにここで、この場所で終わることを始めようとする男は何の躊躇もなく何もない場所に一歩を踏み出す。
景色が反転する、地面が徐々に近づいている、ゆっくりと感じるこの感覚はよく言われるもののそれなのだろうか。しかし、変わらない男の結末は決まっている。地面がもう眼前に迫った時、声がした。
「おっと、それは赦されない」しっかりと女の声が。
はっと気づいた時、男はまだ屋上の縁の上に立っていた。夢、白昼夢、よりにもよってこの場所、このタイミングで?男が答えの出ない思考をしていると、後ろに気配を感じ振り返る。
夜には必要のないキャップをかぶり、その身長にはあっていないぶかぶかの上下の服を着崩した、どこか不気味で不可思議な印象を受けるそんな女が立っていた。
その女が男に語りかける「本当にそこから一歩踏み出すつもりかい?その一歩は君にとってとても覚悟のいる重大な一歩かも知れないけど、他人にとっては明日の新聞の一文でしかないんだよ。」
男はまだ困惑していた直前に起こったことに加え直後突然現れた女に対して。しかし、本来の目的を思い出し男は答える。そのつもりだと、たとえ一文にしかならなくとも一歩を踏み出すと。
「そうかい、そうかい。ただ私が君の前に、いや正確には後ろなのだけれど、現れたということは君にその一歩を踏み出すことは赦されないんだよ。」男は意味がわからないというような顔をする。「意味なんて、理由なんてないさ、君は選ばれた。不幸にも私という存在にね。ただ勘違いしないでしないでくれよ、私は神様でもなければ天使でもない。君に超能力やハーレム属性をあたえることなんてできないし、できたとしてもしてやらない。そんな甘ったれた事も赦されない。」では何をしてくれるというんだろうか。
「私は何も与えないよ、君が私に与えるんだ。翁 与人君。」
今まさに終わろうとしたいた男、翁与人がこの不気味で不可思議な女、九頭竜 広枝と出合った夏の夜、世界は何も変化しなかったが、翁与人の運命は大きく確実に変化した。
拙い文章読んでいただきありがとうございました超ショートストーリーです。
続き物風に書かれてますが続くかはわかりません。
続くかどうかはあなたの評価とブックマークしだい笑
よろしければ評価、ブックマークおねがいします。
他にも小説など書いていますよければそちらも。