体を温める
「はぁー、疲れた……」
美咲に追いかけられて、なんとか逃げ切れたが、疲れてしまったのでプールサイドで座って休んでいる。
美咲はまだプールに入ったままで、二人と遊んでいる。
俺はそれを眺めていた。
俺がプールから出てから十分後。
春花が、こちらに向かってきた。
顔が少し白くなっている。
「おい、どうした春花」
「体……冷えちゃった……」
春花はプールから出る。
「待ってろ!今、タオル持ってくる!」
俺は、更衣室に戻り、ロッカーを開ける。
タオルを取り出すと、走らないように、急いで春花の元に戻った。
「春花!」
秋葉と美咲もプールから出て、春花のことを心配していた。
俺は、春花にタオルを渡す。
春花は俺からタオルを受け取り、かぶった。
しかし、タオルだけでは体はすぐに温かくはならないだろう。
「美咲先輩!体が温まるいい案はないですか⁉︎」
「うーん……あ、いいこと思いついた!風峰が温めればいいんだよ!」
「俺が?」
「うん!風峰、プールで休んでたでしょ?だから、体が温かいと思うんだ」
このプールは室内で、暖房で温かい。
だから、美咲の言う通り、俺の体は温かいが、だからなんなんだと思った。
「風峰が、春花ちゃんをぎゅーって、抱きしめてあげればいいんだよ!」
「えっ⁉︎」
俺が、春花を抱きしめる。
美咲は今、そう言った。
「……本気で言ってんのか?」
「だって、それしかないじゃん!春花ちゃんのためだと思って!それに、私は別に風峰が春花ちゃんを抱きしめても気にしないから!」
「そう言っても、春花が……」
俺は、春花の方を見る。
「……します」
「え?」
「私は大丈夫です……だから、お願いします……」
「お、おう……」
俺は座る。
春花が、こちらに近づいてくる。
「なあ美咲、後ろから抱きしめるのか?それとも前から……」
「どっちでもいいから早く春花ちゃんを温めてあげて!」
「風峰先輩!早く!」
「わ、わかったよ……」
俺は、春花のことを前から抱きしめた。
春花の体は冷たかった。
「温かい……」
春花は、さらに俺の体に密着してきた。
「まて、春花!これ以上密着するな!」
「え……?」
これ以上密着されたら、春花の胸が押し付けられることになる。
だから、これ以上密着されないように言ったのだ。
「風峰!」
突然、美咲が後ろから俺に抱きついてきた。
「いきなりなんだよ」
「なんか、春花ちゃん見てたら……」
美咲は、俺のことを強く抱きしめる。
「離れろ!」
「嫌だよー」
俺は美咲をどうにかしたかったが、春花を抱いているので抵抗できない。
そして、その様子を見ていた秋葉が一言。
「……抱きしめなくても、温かい飲み物を飲ませればよかったんじゃ……」
「……確かに。よし、秋葉!温かい飲み物を買ってきてくれ!」
「わ、わかりました!」
秋葉は、飲み物を買いに、更衣室の方へ向かう。
俺は、春花を抱きしめるのをやめる。
そして、美咲をどうにかしようとした。
「離れろ!」
「なんでー?」
「恥ずかしいだろ!」
「春花ちゃんに抱きつくのはいいのに、私に抱きつかれるのはダメなの?」
「さっきは仕方なくだ!」
「じゃあ、私と仕方なくだよー。風峰ー、温めてー」
結局、美咲は離れてくれず、秋葉が戻ってくるまで、俺は美咲に抱きつかれたままだった。