告白した理由
二時間後、片付けが終わった。
物が散乱していた部屋は綺麗になり、スッキリした。
片付けが終わり帰ろうとしたが、お菓子を食べてくれと言うので、ありがたくいただくことにした。
「それじゃ、お菓子と飲み物用意しますね」
秋葉は棚を開ける。
クッキーの箱と皿とコップを取り出すと、こちらに持ってきた。
クッキーの袋を開け、皿に入れる。
飲み物は、春花が冷蔵庫から牛乳を持ってきてくれた。
「先輩、どうぞ……」
春花が牛乳をコップに入れる。
俺は牛乳を半分ほど飲んだ。
「そういえば美咲先輩。風峰先輩とどんな感じで付き合うことになったんですか?」
「私も知りたいです……」
「普通に告白されただけだよー。ね、風峰?」
美咲は、俺と美咲が付き合うきっかけを言う。
「えー!風峰先輩から告白したんですか⁉︎てっきり、美咲先輩から告白したかと……風峰先輩、自分から告白とかしなさそうですし……」
「悪かったな……俺からで」
「それで、なんで美咲先輩を選んだんですか?」
「なんでって……」
優しくて、頼りになって、俺のこと気にしてくれてたから。
なんて、恥ずかしくていえない。
「私の魅力に引きつけられたんだよねー」
そう言って、腕に抱きついてくる。
「やめてくれ」
俺は腕を引っこ抜く。
しかし、美咲はまた腕に抱きつこうとした。
そしたら、美咲が俺の体に乗ってきて、押し倒されてしまった。
「大丈夫ですか……?」
春花が俺と美咲に聞く。
「ああ、大丈夫だ……って……」
美咲は、俺の上に乗ったまま倒れていた。
俺の体に抱きつくように。
「み……美咲!ど、どど、どいてくれ!」
腕に抱きつかれたことは何回もあるが、正面から抱きしめられたことは一回もない。
俺は恥ずかしくなって、美咲を起こす。
「ごめんねー風峰ー。えへへ」
美咲は笑いながら、俺に謝る。
「二人とも怪我してないですよね⁉︎」
「ああ、大丈夫だ」
「よかった……」
秋葉は安心したらしい。
「美咲先輩……これからは、気をつけてくださいね……」
「いやーごめんねー」
美咲は、春花と秋葉にも謝った。
「まったく……」
俺は、残った牛乳を飲んだ。
「それで、なんで告白したんですか?」
「優しくて、頼りになるし……」
恥ずかしかったが、俺は言った。
またあんなことにならないようにするために。
「えー?本当?実は、私の見た目だけで選んだとかじゃないのー?」
「お、俺は見た目だけじゃ選ばない!絶対だ!」
俺は断言する。
恥ずかしくて恋愛話をしたくなくなった俺は、話題を変えることにした。
「と、ところでさ。二人は、なんで転校してきたんだ?」
「お父さんの転勤でこっちにきたんだけど、二人が自立できるようにって言って、この部屋を借りてくれたんです!」
「そしたら、この辺には私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんが住んでるって、お父さんが言ってたんですが……」
二人は言う。
お兄ちゃんは俺のことで、お姉ちゃんは美咲のことだろう。
「でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんは見つかってないんだよな」
「そうなんです。頼ろうと思ったのに、見つからなくて」
実はもう見つかってるぞ、とは言わず、黙っておく。
二人に、俺は二人のお兄ちゃんだ、なんて言ったら、美咲が俺の妹だということがバレてしまう可能性がある。
二人には申し訳ないが、言わないことにした。
クッキーを食べ終わり、牛乳もみんな飲み、春花が皿とコップを洗おうとしていたので、
「手伝うよ」
と、声をかけた。
「いいんですか……?」
「ああ」
俺は、春花の手伝いを始めた。
「じゃあ、私は秋葉ちゃんのお手伝いするー」
美咲は、秋葉の手伝いをするようだ。
「それじゃあ、クッキーの箱と、洗った皿とコップを拭いて、片付けてください。私はテーブルを拭きますので」
「了解!」
美咲はそう言うと、手伝いを始めた。
俺も春花の手伝いを始めようとした時に、
「あの……風峰先輩と美咲先輩、本当に私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいですね……」
と、春花が言ってきた。
「なんでだ?」
「私たちの部屋の片付けと後片付けを手伝ってくれて、それに、優しくて……」
まあ、お兄ちゃん、お姉ちゃんみたいじゃなくて、本当のお兄ちゃん、お姉ちゃんなんだけどな、と言いたいが、言わないでおく。
片付けが終わった俺たちは、帰ることにした。
「先輩!また来てくださいね!」
「先輩……さようなら……」
二人は俺たちに手を振る。
俺と美咲も手を振って、ドアを閉めた。
「二人とも、すごい仲良しだったね!私たちも、あの二人みたいに仲良くなりたいねー」
そう言いながら、腕に抱きつく。
「……あれ?振り払わないの?」
「……俺と仲良くなりたいんだろ?だったら今だけは……まあ……」
「本当に⁉︎それじゃ、このまま帰ろ?」
「ここを出るまでだ!それ以降は恥ずかしいからダメだ」
「えー?いーじゃーん」
「ダメだ!」
そう言ったが、マンションを出ても美咲は腕を離さなかったので、仕方なく腕を抱かれたまま帰った。