お兄ちゃん
片付けをしている途中、秋葉が、
「先輩、トイレ行ってた時、なんで驚いたんですか?」
「え?」
トイレに行った時に驚いた。
トイレから出た後、二人の部屋のドアを開けて、下着姿で寝ている春花を見てしまい、驚いて声を出した時のことだろう。
「まさか、私たちの部屋を……春花が寝てたのに……」
「風峰ー、女の子の部屋覗くのサイテーだよー」
このままでは見たことがバレてしまう。
「いや、見てない!見てないから!」
「本当ですかー?もし嘘だったら、警察に……」
「すみません見てしまいましたぁ!」
俺は勢いよく頭を下げて謝罪した。
考える前に体が動いたのだ。
「だってー、春花。どうする?」
秋葉はニヤニヤしながら春花のことを見る。
「……一回だけ」
「ん?なに?」
「一回だけ、お兄ちゃんって呼ばせてくれたら……許します……」
この場にいた春花以外の人は理解ができなかった。
なぜ、お兄ちゃんなのか。
実際、俺の妹だが、春花には伝えてないず。
「春花……なんでお兄ちゃんなの……?」
「風峰先輩を見てたら、なんかそう呼びたくなっちゃって……」
春香は顔を赤くしながら言う。
「……だそうです」
「恥ずかしいが……春花がそう言うなら……」
「……風峰お兄ちゃん……」
春花は俺に言った。
その時の春花は、とても可愛かった。
「……恥ずかしいな……」
俺まで恥ずかしくなってきてしまった。
「……じゃあ、片付け続けよう」
美咲はそう言うと、片付けを再開した。
春花も片付けを再開した。
しかし、秋葉は片付けを再開しない。
「先輩……耳をこっちに……」
俺は言われた通り、耳を向ける。
「美咲先輩には、春花の下着姿を見たことは黙っておいてあげます」
それだけ言って、秋葉は片付けを再開した。