美咲の悩み
「美咲、最近元気ない?」
「えっ?」
休み時間、明音が美咲に突然そんなことを言った。
「なんか悩み事でもあるの?」
「うーん……別に……って言ったら嘘になるかなー……。一年生に島風秋葉って子がいるんだけど、風峰と秋葉ちゃんが最近変な感じがするんだよね……」
美咲は、風峰に聞かれないように自分の悩みを話すことにした。
「喧嘩してるわけではないと思うんだけど……二人が顔を合わせるといつもと違う表情になるというか……」
「うーん……喧嘩してないんだよね……?もしかして、浮気したとか……?」
「えっ⁉︎」
美咲は、明音の言葉を聞いて驚いた。
「……いやいや、風峰が浮気するわけないでしょー」
「いや、わからないよ。風峰は実はいい女の子を見つけたら昔の彼女は捨てて新しい彼女を作るような人かもしれないし……。もしこれが本当だったら、島原カップル終了じゃん!いや、でもその秋葉って子も島原だから……」
と、明音は一人でぶつぶつと言い続ける。
「絶対に違うってー」
「じゃあさ、帰りに風峰にバレないように追いかけてみようよ!」
「え、でもそれってストーカー行為……」
「まあ、大丈夫でしょ!それじゃ、今日の帰りに実行ね!」
明音がそう言うと、休み時間終了のチャイムが鳴った。
「ごめん、今日用事があるから先に帰ってて」
美咲がそう言うと、風峰は先に帰った。
そして美咲たちは、風峰にバレないように教室から出た。
風峰は途中までいつも通りの帰り道を通ったが、帰りにいつも分かれるところで、違う方向に曲がった。
美咲は、なんで自分の家に向かわないのだろうと思いながら尾行を続けた。
しばらくつけていると、春花と秋葉の家に向かっているのではないかと予想した。
風峰は、春花と秋葉の家のインターホンを鳴らす。
美咲と明音は、風峰にバレないように隠れながら風峰を見張る。
ドアが開く。
中からは、秋葉ちゃんが飛び出してきた。
そして、風峰に抱きついた。
秋葉は、とても嬉しそうだ。
風峰は秋葉に離れてもらうと、中に入っていった。
「ほら!やっぱり浮気だよ!」
明音が言う。
「秋葉ちゃん……あんなに甘えん坊だったっけ……?あれ……?」
「ちょっ……美咲大丈夫?とりあえず、家まで送るよ」
美咲は、明音に自分の家まで送ってもらった。
美咲は家に帰ると、ベッドに横になる。
「風峰が浮気……。いや、風峰が浮気するはずない……」
美咲は思った、絶対に浮気はしていないと。
風峰を信じているから。
「ねぇ、風峰」
登校して席に座ると、美咲は突然俺に顔を近づけてきた。
「な、なんだ……?」
「私は、風峰の彼女だよね?」
「ああ、そうだが。……急にどうしたんだ?」
俺が答えると、美咲は顔を離す。
本当にどうしたのだろうか。
「いや、なんでもないよ!」
そう言うと、美咲は自分の席に戻っていった。
俺が美咲のことを見ていると、肩を叩かれる。
「風峰、里奈っていう三年生の人が呼んでるよ」
肩を叩いたのは、明音だった。
俺は、教室のドアの方を見る。
教室の外には里奈先輩がいた。
「わかった。ありがとう、明音」
俺は明音に礼を言うと、里奈先輩の元へ向かった。
「風峰くん。浮気してないよね?」
里奈先輩が、いきなりそんなことを聞いてきた。
「浮気?してないですよ?」
「昨日、美咲ちゃんが秋葉ちゃんが風峰くんに抱きついてるのを見たらしくて……あ、私がこのことを風峰くんに話してるって美咲ちゃんには言わないでね?」
美咲は、昨日は用事があると言って学校に残っていたはず。
なぜ、俺が秋葉に抱きつかれたことを見たのか。
「まあ、浮気はしてないんだよね?それじゃあ、なんで抱きつかれてたのかな?」
甘えられて、とは言いづらい。
「秋葉が転んで、それで俺に……」
「でも、笑顔だったって……」
「気、気のせいですよ!」
俺は否定した。
「とにかく、浮気なんかしていません!」
実際、浮気はしていない。
俺は本当のことを言っている。
「ふーん……。とりあえず、美咲ちゃんを悲しませるようなことはしちゃダメだよ?」
里奈先輩は、自分の教室に戻っていった。




