転校生も妹
だが、俺は美咲にはお前が俺の妹だということを言っていない。
お前は俺の妹だなんて言ったら、多分別れようと言われるからだ。
兄と妹が付き合ってるなんておかしいし、周りから変な目で見られる。
美咲だって変な目で見られるのは嫌なはずだ。
だから、俺は言わないで黙っている。
俺たちは教室に着くと、教室がいつもより騒がしいことに気がつく。
「なになにどーしたのー?」
美咲が数人で話していた女子に話しかける。
「なんか騒がしいね」
明音も会話に参加する。
「今日一年生の転校生が来るんだって。しかも二人」
「へー。風峰ー、転校生だってー」
「一年の転校生?だからこんなに騒がしいのか」
このクラス、二年一組は転校生に興味がある人が多い。
だから、転校生が違う学年だろうと話題になるのだ。
「どんな子なんだろうねー」
俺と美咲が話していると、担任がやってきた。
俺は席に座ろうとしたが、明音に呼び止められる。
「ねえ!後でその転校生に会いに行ってみない?」
「行こうよ!風峰!」
二人にそう言われ、俺は昼休みに転校生の教室へ行くことにした。
時刻は一時、俺たちは昼ご飯を食べて、転校生のある教室に向かった。
「すみませーん、転校生ってどの子?」
明音が教室を覗き込んで大声で言う。
すると、人に囲まれていた二人の女の子がこちらに来た。
「あの……何か用ですか……?」
身長が低く、長い髪の毛がサラサラしていて可愛らしい。
「私たちに何の用ですか?」
こちらも身長が低い。
だが、こちらは髪の毛がそこまで長くなく、大人しそうなもう一人と違って活発そうな子だ。
「転校生が来たから挨拶しようかなーって!」
「そうなんですか?それじゃあ、えっと、私の名前は、島原春花です……」
「私の名前は島原秋葉!よろしくお願いします!」
「ん……?」
俺は、島原という名字に反応した。
「風峰ー、この二人、私たちと同じ島原の名字だよー!すごくなーい」
「えっ⁉︎」
転校生、島原秋葉は驚く。
「あの……お二人に聞きたいことがあるんですが……」
「な、なんだ?」
もしかして、と思いながら返事をする。
いやまさかと思っているが、春花の次の言葉で俺は確信した。
「もしかして、お二人は私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんですか……?」
この二人も俺の妹だと。
「……いやいや、違うよー絶対。私たち、偶然同じ名字なだけだし」
美咲は春花の言葉を否定する。
「でも、この辺に私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんが住んでるって聞いたんだけどな……」
「いやいや、そんなことないと思うよ!ははは!」
「そうですか……私たち、二人だけで暮らしているので、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいれば頼れるかなって思ってたので……」
春花はしょぼんとしてしまう。
「だったら、お兄ちゃんとお姉ちゃんの代わりに、二人を頼れば?」
明音が提案する。
「そうだよ!先輩の私たちを頼っていいよ!ね、風峰?」
「本当⁉︎」
「本当ですか……?」
美咲は俺の方を見て言う。
手伝いくらいなら別にいいかと思ったので、
「ああ、いいぞ」
そう答えた。
そして、休み時間が終わりそうなことに気がつく。
「そろそろ戻ろー、次の授業の準備しないと」
美咲が俺の腕を引っ張る。
「ああ、そうだな。それじゃ」
俺は二人に手を振る。
美咲と明音もじゃあねと挨拶をして、俺たちは教室へ戻った。
「父さん!俺の妹は一人だけじゃないのか⁉︎」
俺は家に帰ってきた父さんに向かって大声で言う。
「なんだよ急に大声出して……」
「いいから教えてくれ!」
父さんは頭を掻きながら面倒くさそうに言う。
「お前と一緒に生まれた美咲と、お前の一個下の春花と秋葉、この三人だけだ。美咲はこの辺りに住んでるらしいが、春花と秋葉は今どうしてるかわからないな……」
父さんから二人の名前が出てきた。
つまり、転校生の島原春花と島原秋葉も美咲と同じ、俺の妹ということだ。