条件
数分後、秋葉は落ち着いた。
そして、俺は話した。
隠していた理由を。
「美咲先輩にフラれたくないから黙ってた……そんな理由ですか⁉︎」
「悪いかよ……」
「悪いですよ!黙っていなければ、もう少し早く甘えることができたのに!」
秋葉は、俺の体を手でバンバン叩く。
「痛い痛い痛い!やめてくれ!」
俺は、叩かれた部分を手で撫でる。
「でも、よかったね秋葉ちゃん……。お兄ちゃんが見つかって……」
「まあ、それもそうね……」
「それより、さっきのことは本当なんだろうな?このことは秘密にするって……」
俺は、秋葉に言う。
「もちろんです!ただし、条件があります」
「条件……?」
「一週間に二回以上、ここに来てください。そして、その時は私たちのお兄ちゃんです」
「つまり、普段は今まで通りだが、美咲がいない時にここに来たら俺は二人のお兄ちゃん……ということか?」
「そうです!」
それくらいなら別にいいかと思った俺は、秋葉の条件を受け入れることにした。
「それじゃあ、今からお兄ちゃんですね!よろしく、風峰先輩……じゃないか。風峰お兄ちゃん!」
「風峰お兄ちゃん……よろしく……!」
「あ、ああ……」
春花には何度か言われたことがあるから別に違和感がないが、秋葉に言われるのは変な感じがする。
まあ、そのうち慣れるだろう。
「さて、話も終わったし、帰るぞ。そこどいてくれ」
しかし、秋葉はどいてくれない。
「なんでよ!もう少しここにいて!」
「ダメだ」
俺は秋葉を抱き上げて立ち上がる。
「ち、ちょっと!何抱き上げて……」
秋葉は足と腕をジタバタさせている。
足が俺の足に当たって痛い。
「やめろ、暴れるな!」
俺は、秋葉をソファに座らせる。
秋葉は諦めたのか、帰ろうとしている俺を引き止めなかった。
「風峰お兄ちゃん、ちゃんとまた来てくれる……?」
秋葉が聞いてきた。
「ああ、ちゃんと来るから安心しろ」
そう言うと、秋葉はこちらに走ってきて、俺に抱きついた。
それに続いて、春花も抱きつく。
俺は、二人の頭を撫でてあげた。
「それじゃ、またな」
俺は、玄関まで見送ってくれた二人に手を振り、ドアを閉めた。




