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本当のこと

「……は?」


 なぜいきなりそんなことを聞く。

 もしかしてバレてしまったのか。

 いや、バレないように気をつけていたはず。

 じゃあなぜだ。

 やはり、同じ苗字だから怪しいと思ったのか。

 とにかく、バレるわけにはいかない。


「いや、違うと思うぞ……」


 秋葉は、俺の顔を見たまま喋らない。


「やめようよ秋葉ちゃん……。多分、風峰先輩は関係ないよ……!」


 春花がオロオロしながら言う。

 しかし秋葉は、どかない。


「ちなみに、なんで俺がお前たちのお兄ちゃんだと思ったんだ?」


「日曜日に私たちの両親の家に行ったんです。そこで、写真を見ました。そして、お母さんが言ったんです。写真に写っている四人の子。左から、春花、秋葉。その隣が、風峰先輩と美咲先輩だと」


 まずい。

 どうすればいい。

 冷や汗が垂れる。

 とにかく、誤魔化さなければ。


「人違いじゃないか……?同じ名前っていうだけで、俺とは関係ないんじゃ……」


「そんなはずありません!絶対に風峰先輩と美咲先輩です!」


 秋葉は、俺の胸ぐらを掴む。

 春花はやめさせようとしたが、秋葉は離さない。


「風峰先輩お願いします……言ってください、本当のことを……!」


 春花は言う。

 しかし、言うわけにはいかない。


「だから、俺は関係ない……!」


 俺は必死に否定する。


「そうですか……じゃあ、風峰先輩の家に行って確かめてきますね。多分、昔の写真とかありますよね?」


 春花と秋葉は、俺の家を知らないはずだ。


「俺の家の場所、知らないだろ……?」


「そんなの、美咲先輩に聞きました」


 このまま家に行かせたらバレてしまう。


「家に写真なんてないぞ!」


「それじゃあ、行っても問題ないですよね?」


「いや、それは……」


「じゃあ行ってもいいですよね?春花、準備しましょう」


「ま、まて!」


 俺は、秋葉の腕を掴む。


「なんですか?」


「俺は関係ない!もし、俺が本当にお兄ちゃんだったとしても、俺は知らない!」


「だから、本当かどうかを確かめるために風峰先輩の家に行くんじゃないですか」


「そ、それはそうだが……」


「……風峰先輩。ここで本当のことを言ってくれたら、誰にも言いません」


 秋葉はそう言った。

 俺的には美咲にさえバレなければいい。

 だが、春花と秋葉が美咲に言う可能性がある。

 しかし、言わなければ確実に美咲に言われてバレる。


「どうなんですか?」


「俺は……」


 言ったら、美咲に言われる可能性がある。

 だが、そう思うということは、春花と秋葉を信じられていないということになる。

 二人の妹を信用していないことになる。

 俺は決めた。


「俺は……美咲、春花、秋葉のお兄ちゃんだ……」


 俺は、春花と秋葉を信じて、本当のことを言った。


「……やっと本当のことを言ってくれましたね……」


 秋葉の体が、俺の体の上に倒れる。


「ど、どうしたんだ、秋葉……?」


 俺は、秋葉に言う。

 その時、俺の体が抱きしめられた。


「やっと会えた……私のお兄ちゃん……!」


 秋葉は、さらに強く抱きしめる。

 今にも泣きだしそうだった。


「秋……葉……?」


 いつも強気な性格の秋葉の様子がおかしい。


「私、ずっとお兄ちゃんに甘えたかったの……」


 秋葉が顔を上げる。

 笑顔だったが、目から涙が出ていた。


「秋葉……」


「お兄ちゃん……大好き……!」


 そして再び、秋葉に抱きしめられた。

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