衝突
「やばい!遅刻だ!」
寝坊をしてしまった俺は、急いで家を出る。
学校まで走るのは辛いが、遅刻しない為には休まず走るしかないのだ。
「ハァ……ハァ……っ痛あ!」
「きゃっ!」
急いでいた俺は、目の前にいた人とぶつかる。
家が建っていて、その人の姿が見えなかったのだ。
その人が見えた頃には遅かった。
俺とその人は尻餅をついた。
「だ、大丈夫ですか⁉︎」
俺はその人に声をかける。
その人は、俺の学校と同じ制服だった。
そして、俺は見てしまった。
ピンク色のパンツを。
「大丈夫じゃないわよ!痛い……じゃない……」
その人は、自分がパンツを見られたということに気がつく。
「きゃあああ!」
女子生徒は俺の胸ぐらを掴み、体を揺する。
「見たわね⁉︎私のパンツを!」
「わざと見たわけじゃない!落ち着いてくれ!」
「パンツを見られて落ち着いてられる女の子がいると思うの⁉︎」
揺する強さは段々増していった。
だが、突然揺するのを止める。
「そうだ、こんなことしてる場合じゃない!あんた、同じ学校よね⁉︎クラスは⁉︎」
「二年二組です……」
「あんたにパンツを見られたこと、忘れないから!」
そして、学校の方へ走って行った。
「ふう……酷い目にあったな……って、俺も急がねーと!」
俺は、再び走り始めた。
昼休み、俺は美咲と弁当を食べていた。
「そういえば、風峰が寝坊って珍しいよね」
「ああ、そうだな……」
「家に行ってドア叩いても起きないし、電話もしたけど出ないし……」
「昨日出た数学の課題あるだろ?あれやるの忘れてて気が付いた時には十二時で……」
「あー、あれ結構量あったもんねー……」
弁当を食べながら美咲と話をしていると、教室のドアが開いた。
俺の席はドアのすぐ近くで、ドアが開いたとすぐにわかるのだ。
ドアが開いたことを気にしなかったが、突然肩を掴まれた。
俺は、肩を掴んだ人を見る。
「あんた、私が来るって行ったのに呑気にお弁当なんか食べて……!」
俺の肩を掴んだ人は、朝ぶつかった女子生徒だった。
肩を握る力が段々強くなり、肩が痛い。
ぶつかった後、学校に間に合うことだけを考えてたので、すっかり忘れていた。
「あんた、私のこと忘れてたでしょ?」
「は、はい……」
「こ、このおぉ!」
俺の肩をさらに強く握る。
「痛い痛い!」
「風峰、この人誰……?なんか、怒ってるみたいだけど……」
「朝この人とぶつかって、まあ、色々あったんだ……痛い!」
「まあまあ落ち着いて、美奈江ちゃん」
俺の教室にやってきた里奈先輩は、美奈江と呼ばれた女子生徒の腕を掴み、俺の方から離す。
「里奈先輩⁉︎この人と知り合いなんですか⁉︎」
「うん。同じクラスの美奈江ちゃん。私の友達だよ」
まさか、この女子生徒が里奈先輩の友達だとは思わなかった。
だが、これは許してもらうチャンスだ。
「里奈先輩。わざとぶつかったわけじゃないのにこんなに怒って……里奈先輩も何か言ってください!」
俺は里奈先輩に助けを求めた。
だが、里奈先輩は少し考えた。
「どうしようかなー。風峰くん、私に最近冷たいし、意地悪だしなー」
里奈先輩はそう言う。
顔が少し笑っていた。
俺をいじって遊ぼうとしているのだろう。
「早く謝らないと、あんたは変態だって学校に広めるわよ!」
「なっ!」
それはまずい。
「謝ったら、変態だって広めるのはこのクラスだけにしといてあげるわ」
このクラスにだけ言っても、すぐにその情報は広まるだろう。
どうにかして先輩に助けてもらわなければ。
「里奈先輩、お願いします……」
「えー?なんで私が風峰くんを助けないといけないのかなー?」
「俺の学校生活が終わります……お願いします……」
「……しょうがないなぁ」
里奈先輩はそう言うと、美奈江と呼ばれる女子生徒の耳元で囁く。
すると、女子生徒は目を大きくした。
「ダ、ダメよ!やめて!」
「じゃあ、風峰くんを許してあげて」
里奈先輩は笑顔で言う。
「今回は許してあげる。だけど、次はないからね!」
女子生徒は仕方なく謝ると、教室から出て行った。
「ありがとうございます、里奈先輩」
「どーいたしましてー。それじゃ、私も戻るね」
里奈先輩は俺たちに手を振って、教室を出た。
「風峰、大変だったね……」
「ああ……」
女子生徒が戻ったことにより、静かな昼休みが戻ってきた。
俺と美咲は、再び弁当を食べ始めた。




