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仲のいい兄妹

「えーと……あんなことをして、本当にごめんなさい」


 里奈先輩は正座をした状態で俺に謝る。


「里奈先輩は俺と美咲が晩御飯を食べ終わるまで、そこで正座しててください」


「はい……」


 俺は着替えた後里奈先輩に正座をさせ、叱っていた。

 流石に反省しただろうと思っていた。

 しかし、俺の考えは甘かった。


「じゃあ春花、私とお風呂入ろ!」


「うん……!」


 二人は脱衣所に向かう。

 そして、二人が脱衣所に入ったその時。


「私も入る!」


「あっ、ちょっと!」


 里奈先輩は急に立ち上がり、脱衣所に駆け込む。

 俺は追いかけようとしたが、このまま脱衣所の扉を開けたら見てはいけないものを見てしまうと思い、追いかけるのを諦めた。


「はあ、全く反省してないな……」


「ま、まあとりあえずご飯食べよ、風峰……」


「あ、ああ」


 俺と美咲は、春花と秋葉と里奈先輩が用意してくれた晩御飯をテーブルに置く。

 メニューは肉が少し入った野菜炒めと、お湯を入れるだけで作れる味噌汁、レンジで温めるタイプのご飯だった。

 俺たちはいただきますをして、晩御飯を食べ始める。


「美味しいな」


 俺は手を止めずにむしゃむしゃ食べていく。

 美咲もお腹が空いていたのか、どんどん口に運んでいく。


「美咲、さっきからあんまり喋んないが、どうしたんだ?」


「えっ?な、なんでもないよ!」


「悩みでもあるのか?言ってみろよ」


「悩みじゃないんだけど……その……お風呂入ってた時のことなんだけど……恥ずかしすぎて頭から離れなくて……」


 俺は里奈先輩のことで忘れていたが、言われて思い出した。

 美咲の言う通り、あれは恥ずかしかった。


「とりあえずなるべくそのことを考えないようにすればいいんじゃないか?」


「努力はしてるけど……」


 美咲は顔を赤くする。


「ああ、ダメだー……離れない……」


「……なあ、美咲。一つ聞いていいか……?」


「何……?」


「俺と風呂に入るの嫌だったか……?嫌だったなら謝る……」


 美咲は少し考える。


「……嫌ではなかった……」


「……そうか……」


 そこで、会話が途切れた。

 そして晩御飯を食べ終わり、少ししたら三人が風呂から出てきた。


「いやー、いい湯だったよー」


 俺は立ち上がり里奈先輩のところへ無言で向かう。

 里奈先輩は逃げようとしたが、俺は肩を掴んだ。



「逃がしませんよ……!」


「ひぃぃ……!」


 里奈先輩を正座させた俺は、再び叱るのだった。



 春花と秋葉が用意してくれた布団を、こたつをどかして敷いた。

 春花と秋葉も俺たちと寝たいと言い、自分の部屋から布団を持ってきた。

 端から里奈先輩、秋葉、春花、俺、美咲という順番で布団に入る。

 春花と秋葉は同じ布団で寝るらしい。


「それじゃあ、電気消しますね」


 秋葉が部屋の電気を消す。

 俺はすぐに寝ようと思い、目を閉じた。

 数分後、体が重く感じた。

 俺は目を開けた。

 暗くてよく見えないが、美咲がそこにいることはわかった。

 美咲は俺の布団に潜り込んでいたのだ。


「な、なんで俺の上に乗っかってるんだ……?」


「あれ……⁉︎起きちゃった……?」


「なんで俺の上に乗ってるんだよ」


「それは……もっと風峰とくっつきたいなって……いつもそう思ってて、腕に抱きついてたんだけど……」


 そう言って、美咲は俺の体に顔をうずめる。

 俺はそっと美咲の頭を撫でる。


「少しだけならまあ……このままでもいいぞ……」


「本当……?嫌じゃない……?」


「ああ、嫌じゃない」


 当然だ。

 だって、美咲は俺の彼女であり、血の繋がった妹だ。

 嫌なわけがない。


「ありがとう、風峰……」


 美咲の鼓動が聞こえる。

 少し速い鼓動が、俺の体に伝わってくる。

 美咲が布団に潜り込んできてから二、三分経った。

 美咲は満足したのか、自分の布団に戻る。


「風峰……ありがとう……おやすみ……」


「ああ、おやすみ……」


 美咲におやすみと言った後、俺は目を閉じた。



「んー、トイレ……」


 トイレに行きたくなった里奈は、布団から出た。

 携帯で周りを照らしながらトイレに行った。

 トイレから戻って来た時に、四人が照らされた。

 里奈は、寝ている四人を携帯で撮った。

 風峰の腕には美咲が抱きついている。

 春花は風峰の布団に体が半分ほど入っていて、秋葉も春花の体に密着して寝ている。

 その様子は、仲のいい兄妹のようだった。


「そういえば、みんな苗字同じだよね。……まさかね……」


 里奈は、実はこの四人は兄妹なんじゃないかと思ったが、そんなことないだろうと思い、今の考えを頭の中から消す。

 そして、自分の布団に戻り、寝るのだった。

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