お泊り
「やべっ、もうこんな時間か!」
俺と春花は目が覚めた後、時間を確認した。
時刻は十時だった。
俺は急いでこたつから出た。
「あの……よかったら泊まっていきませんか……?」
突然、春花がそんなことを言った。
「明日は土曜日なので、泊まっても問題ないと思いますが……」
「……いいのか?」
「はい……」
泊めてもらえるなら嬉しいが、本当に大丈夫なのだろうか。
俺は秋葉の肩をゆすり、秋葉を起こした。
「んぁ……?なんですか先輩……?私まだ眠りので眠らせてください……」
「もう十時だぞ、起きろ」
「えぇ……?そんなわけ……」
秋葉は時計を見て時間を確認すると、少し開いていた目が大きく開いた。
「わあああ!私たち、そんなに寝てたんですか⁉︎」
「それで、春花が泊まっていかないかって言ってるんだが、お前はいいのか?」
「え?まあ、別に大丈夫ですよ」
秋葉はあっさりオーケーする。
俺は父さんに今日は泊まると連絡をした。
そして、美咲と、こたつの中で美咲の足を抱いて寝ている里奈先輩を起こした。
「んー……?なぁにぃ、風峰ぇ……」
「もう少し寝かせてぇ……」
「時計を見てくれ」
「んんぅ……?……嘘⁉︎風峰、里奈先輩!早く帰ろ!」
「美咲先輩、もう夜なのでここに泊まっていかないかって話を今していたんですけど、美咲先輩はどうですか?」
「んー、泊めてもらえるなら嬉しいけど、本当にいいの?」
「大丈夫です……」
「それじゃ、泊まっちゃおうかな」
「わかりました!それで、里奈先輩は……」
秋葉は里奈先輩にも聞こうとしたが、里奈先輩はこたつの中に戻って寝ていた。
俺は里奈先輩の足を掴み、こたつから引きずり出した。
里奈先輩に聞いたら泊まりたいと言ったので、俺たちは春花と秋葉の家に泊まることになった。
俺と美咲は今、背中を合わせいる。
なぜかというと、お互いを見ないようにするためだ。
俺と美咲は一切喋らず、会話がない時間が続く。
なぜこうなったのかというと、晩御飯とお風呂はどうするかと話していた時に、里奈先輩が言ったのだ。
「ご飯を用意するチームと先にお風呂入るチームに分けようよ。じゃ、風峰くんと美咲ちゃん先にお風呂ね。あ、早く済ませるために二人で一緒に入っちゃって。付き合ってるんだから、別に大丈夫でしょ」
「えっ⁉︎ちょっと、何行ってるんですか里奈先輩!」
「そうですよ!風峰とお風呂なんて恥ずかしいです!」
「いいからいいからー。早く入ってー」
俺と美咲は反対したが、里奈先輩に無理やり脱衣所に連れていかれた。
俺は美咲とお風呂に入っている途中、二人同時だと余計に遅くなることに気がついた。
多分、里奈先輩がふざけて提案したのだろう。
そして、俺たちはお互いを見ないように体を洗い、湯船に浸かっている。
「か……風峰……もうそろそろでない……?私、恥ずかしくておかしくなりそう……」
「あ、ああ。そうだな……じゃあ、俺が先に出るから目を閉じていてくれ」
「うん……」
美咲にそう言い、俺は湯船から出る。
タオルを取って体を拭き、着替えようとした。
しかし、そこにあったのは、女性のパンツとスカート、引きこもり最高と書かれた半袖のシャツだった。
「里奈先輩……!」
こんなことをするのは里奈先輩しかいない。
俺は、里奈先輩のところへ向かって怒りたかった。
だが、俺は今服を着ていない。
あるのは腰に巻いているタオルだけだ。
このままではあの三人のところへ行けない。
「風峰ー……まだ着替え終わらないの……?」
「あー、もう少し待ってくれ……」
美咲にそう言い、俺は脱衣所のドアを少し開ける。
「春花ー!別の着替えってないのかー⁉︎」
「え……?私、風峰先輩が着ても大丈夫そうな服を選んだんですけど……別のがいいですか……?」
「多分、里奈先輩に服をすり替えられた。だから頼む」
「わかりました……」
そして、俺はドアを閉めて春花を待つことにした。
しばらくした後、足音が聞こえた。
春花がこちらに着替えを持って着てくれるのだろう。
しかし、そこで里奈先輩が邪魔をする。
「待って春花ちゃん!風峰くんに襲われちゃうよ!」
「誰が襲うか!」
「あ……えっと……」
「戻ってきて、春花ちゃん!」
「着替えを持ってきてくれ!」
「あああ……」
おそらく、春花はどうすればいいのかわからなくなっているだろう。
「春花!頼む!」
「春花ちゃん!ダメ!」
「ああ、もう!春花、ドアの前に着替えを投げろ!」
「は、はい……!」
俺はドアを少し開けて、着替えを回収する。
着替えは長袖シャツと薄い半ズボン、長いズボンだった。
半ズボンは、パンツがわりに使えということなのだろう。
俺は着替えて、美咲を呼ぶ。
「美咲ー、いいぞー」
「遅いよー……」
「すまない、文句は里奈先輩に言ってくれ」
俺は美咲にそう言い、脱衣所から出た。




